言葉で振り返るμ'sのキセキ / Final LoveLive!から2年後の世界
3月某日――
私のもとに1通のメッセージが舞い込んだ。
【ブロガーの方々へ、大事なお願い】
— 生春@LLBS21 (@Time_mrsi) 2018年3月21日
ファイナルライブから2年というこのタイミングでみんなでμ'sに関する記事を書いてみませんか? pic.twitter.com/lhhXHEeckr
それは、「ラブライブ!」を通じて繋がっていた生春さんからのメッセージ。
これが、私が今回記事を書こうと思ったきっかけだ。
- 「僕」と「μ's」
- 言葉で振り返るμ'sのキセキ
- 「伝説開幕」と「有言実行」
- それぞれの分野で頑張ってきた「個性」のチーム
- 3rdライブで語られた「青春(ラブライブ!)の本質」
- SSA大きくなることへの不安
- 奇跡それは今さここなんだ
- 無敵の9人の修学旅行
- スクールアイドルの輝きを歌に込めたμ's
- μ'sが永遠になった日
- 18人の歌の女神
- 銀河に咲いた花の中心で
- μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪
- Final LoveLive!から2年後の世界で
- そして最後のページには
「僕」と「μ's」
「僕」と「μ's」。それは、切っても切れない関係。
というのも、私の半身でもある「きりんログ」誕生のきっかけ。それは、何を隠そう「μ's」だったのだ。
「きりんログ」誕生のきっかけにもなった、劇場版ラブライブ!の感想記事。作品への感謝の気持ちを伝え、自分が好きなところをひたすらに並べていくスタイルの元にもなった、自分にとって記念すべき一本目の記事。
思い返すと、私自身とμ'sの関係性については語っていなかった。この機会に「どんな人がブログを書いてるのか」ということを知ってもらうためにも、私とμ'sのこれまでについて書き留めておきたい。
まず、私が明確に「μ's」を意識し始めたのは、「Animelo Summer Live 2012 ∞INFINITY」。いわゆる「歌い逃げ」だとメンバーの中でも言われていた「夏色えがおで1,2,Jump!」1曲だけのステージだ。
「アニサマ2012」のパンフレット。自分が最初に出逢った時の思い出として、今でも大切に保管しておいている。
正直に言うと、μ'sのファーストインプレッションは「あ、なんかいいかも」くらい。
まだアニメ化もしていない作品ではあるけれど
2月に行った1stライブから
ファンの皆さんに、ラブライブのライブを
とても楽しみにしてもらっているという実感が凄くて、
今年初めてラブライブに触れる方達にも
PVとリンクしたダンスで
「お?なんかすごい!?」
って思って頂けてたら良いなぁと思いました。南條さんの当時のブログを見て、正に彼女たちが思い描いた通りの感想を私は抱いていたのだなと思い、ちょっぴり感慨深くなった。
それから先は、「『Snow halation』、いいじゃん!」「『夏色えがおで1,2,Jump!』も、いいね!」というように、μ'sの曲に緩やかにハマっていった。
その中でも、『ラブライブ! μ's Best Album Best Live! collection』は、μ's楽曲を網羅的に聞く機会で、「ラブライブ!の曲の良さ」を知る上で大きなきっかけとなった。付属のBlu-rayに収録されている『Wonderful Rush』MVの「南ことり」は容姿も声もとてもキュートで、「ラブライブ!のキャラクターの可愛さ」を認識するきっかけにもなったし、「内田彩」さんを好きになるきっかけもなった。
このμ'sベストアルバムは、今の私にとって大きな「礎」となった1枚だと言える。
ラブライブ! μ's Best Album Best Live! collection 【Blu-ray Disc付 通常盤】
- アーティスト: μ's
- 出版社/メーカー: ランティス
- 発売日: 2013/01/09
- メディア: CD
- 購入: 5人 クリック: 47回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
そして、「僕」と「μ's」の関わり方に大きなセンセーションをもたらす「ファースト・インパクト」が2013年の春に訪れた。TVアニメ『ラブライブ!』の放送である。
第1話「叶え!私たちの夢——」、身体の内側から熱いものが込み上げてくるのが分かった。「ススメ→トゥモロウ」、急に踊り出す制服を着た3人。今はまだよく分からないけれども、とにかく追い駆けてみたい。穂乃果たちがスクールアイドルを始めた時の気持ちと、自分自身の気持ちがシンクロしていた。
そこから先は多く語らずとも、第3話「ファーストライブ」、第8話「やりたいことは」など、「ラブライブ!の物語の素晴らしさ」というラブライブシリーズにおけるブレない「軸」は、本作を推し続ける大きな要素として私の中にあり続けている。
そして、時を同じくして、私に大きなセンセーションをもたらす「セカンド・インパクト」が訪れた。μ'sキャストによる「ニコ生」や「ライブ」である。
まず、「ラブライブ!μ'sニコ生課外活動~ことほのうみ/まき~」がきっかけで「ラブライブ!のキャストの素晴らしさ」を知ることが出来た。
無茶振りコーナーをこなし、仲良くトークをする姿は、贔屓目なしで面白かったし、リリースやライブ、イベントの発表の喜びを共有できる場所としても、バラエティ番組を超えた「特別な時間」になっていた。
そして、『ラブライブ! μ's 3rd Anniversary LoveLive!』は、私が本作を推し続けるもうひとつの「ラブライブ!のライブの素晴らしさ」を初めて目の辺りにする機会となった。
『ラブライブ! μ's 3rd Anniversary LoveLive!』のTシャツとタオルとペンライト。μ'sのTシャツとタオルは、毎回色合いが同じで、ひと目で「μ'sのTシャツだ!」と分かる。この時のペンライトは、まだ凛ちゃんと言えば「イエロー」ではなく「ターコイズ」だったことも懐かしい。
TVアニメの物語を追体験する形でライブを楽しめたのは、私にとって初めてのことだったし、「僕らは今のなかで」の大合唱は、「エンターテイメントの向こう側のリアルな感情」を感じ、「僕」と「μ's」が特別な関係になる大きなきっかけになった。
そこから先は、何度もアニメやライブを経て、一緒に青春を追い駆けてきた。
そして、訪れた「サード・インパクト」。『ラブライブ!The School Idol Movie』が上映され、「きりんログ」が夜明けを迎えることになったのである。
言葉で振り返るμ'sのキセキ
ここからは、本編に入っていく。「言葉で振り返るμ'sのキセキ」。ファイナルライブから2年という節目、私はμ'sのキャストが語る「言葉」を鍵にして、思い出の扉を開けていきたいと思った。
そう思うきっかけは、Twitterで流れてきたbotのツイート。「μ's声優名言bot」と銘打って、μ'sメンバーの数々の名言をツイートし続けているbotのツイート。
辛いとき、壁に当たったときに思い出してもらえたら、それだけでこの作品の意味はあったと思う ――内田彩
— μ's声優名言bot (@LL_Ms_bot) 2018年3月22日
久々に触れたμ'sメンバーの言葉に、胸が熱くなったことを覚えている。
そして、思い返せば、「きりんログ」では、μ'sやAqoursのライブの感想を書く時、必ず彼女たちの「言葉」を引用していた。それは、彼女たちの言葉には、彼女たちの「想い」や「生き様」が乗っかっていて、そこにこそ「真実」はあると思っているからだ。
彼女たちの「言葉」に触れれば、そこから「想い」も「生き様」も「真実」も伝わってくる。私は、そう信じている。だからこそ、思い出の扉を開けてくれるのはいつでも「言葉」だと思い、その鍵を拾い集めてみようと思った。
「伝説開幕」と「有言実行」
『ラブライブ!』スタート当初。「電撃 G's magazine 2010年 08月号」の誌面を飾った時「伝説開幕」という大仰なキャッチコピーを掲げていた。今になって、ラブライブが辿ってきた軌跡を振り返るならば、それは「伝説」と呼ぶに遜色ないものだが、プロジェクトの開始当時、そんな未来が訪れることを何人の人間が想像していただろうか。「有言実行」と言えば聞こえはいいが、まさに「無謀」と呼ぶに相応しいスタートだ。
しかし、プロジェクトが開始されて間もない頃、とある一言を言い放って「有言実行」を成し遂げたメンバーがいる。
ここに来た80人が絶対自慢できるようにしてみせるからね
内田彩 2011年度ラブライ部員とμ'sの課外活動 第1回 μ'sユニット Printempsシングル発売記念 トーク&ノベルティお渡し会
一体このイベントに参加した何人の人間が、今こうしてラブライブ!を応援し続けているだろうか。それは、分からない。でも、もしこのイベントに参加して、内田さんの言葉を聞いていた人がいるとするならば、「自分は、あのイベントに参加していた」のだと。胸を張って、そう自慢することができるのではないだろうか。
「無謀な夢から始まって」。『MOMENT RING』の歌詞にも繋がるラブライブの夜明けは、振り返った時にまさに「無謀」と呼ぶに相応しい言葉から始まったのだ。
それぞれの分野で頑張ってきた「個性」のチーム
「個性豊かな無敵の9人が揃って、メンバー同士無言の連携で通じ合うみたいな」(『リスアニ!』vol.27.1)と後々のインタビューでも語っているが、ファンから見ても、彼女たちは強い個のメンバーが集まったチームであることは一目瞭然だ。
彼女たちは、「努力家」であることが関係者のインタビューから伺えるが、本業は声優であり歌手というメンバーが多い中、彼女たちが毎回「やり遂げる」ことができていたのも、そうした個性が活きたチームだったからなのだと思う。
シカちゃんみたいにグラビアをやっていた子とか、Pileちゃんみたいに歌手をやってた子とか、くっすんみたいにこれがデビュー作の子とか本当に色々な子がいて、
最初はどうなるかなっていう不安もあったけど、
ライブとかアフレコとか歌とか色々なことをやっていると、それぞれに得意な分野、リスペクトできる部分がすごく沢山あって、
私も頑張んなきゃって思える
内田彩 μ's New Year LoveLive! 2013
「切磋琢磨」、言うは易く行うは難し。ひとえに彼女たちがそれを出来たのは、努力家であると同時に、お互いの光る個性にしっかりと輝きを見出して、リスペクトし合っていたから、ではないだろうか。それこそが、真に成長できるチームなのだと思う。
「それぞれが好きなことで頑張れるなら」。彼女たちの歌の歌詞にもあるが、彼女たちが自分たちのフィールドで培ったものがあり、9人全員が集まった時に「新しい場所がゴール」になるようなチームであったことは、奇跡的な偉業を成し遂げる上で無くてはならないものだったのだろう。
3rdライブで語られた「青春(ラブライブ!)の本質」
「キャラクターとキャストの気持ちのシンクロ」「ファンとみんなで叶えるライブ」など、ファンの間でもこれまで大切にされてきた文脈がいくつも結実したライブ。それが、「ラブライブ! μ's 3rd Anniversary LoveLive!」である。μ'sの軌跡を振り返った時に、ひとつの転換点とも呼ぶべきこの3rdライブ。その中で、後の劇場版のテーマにもなる言葉が、この時密かに語られていた。
限られた時間の中で、
自分のやるべき事をしっかりとこなしてる姿はまっすぐで、がむしゃらで、精一杯で、
ステージの上みたいにキラキラした照明はないけど、
とってもまぶしくって、一生懸命で――
南條さんから見た8人の姿。当時、他の仕事も抱えるメンバーがいる中、全員がリハに参加できる訳ではなく、参加できないメンバーがいたり、ダンス経験が無いメンバーは、練習時間が限られている中でも、「アニメのストーリーに寄せつつも、昔からラブライブ!のコトを応援してくれてる皆様にも楽しんでもらえるように」という、みんなで決めたゴールを成し遂げるために、全力で頑張っていた、という。
その姿を見た南條さんは、劇場版にも繋がる言葉を紡いだ。その言葉は、偶然なのか、必然なのかは分からない。分からないが、確かに劇場版ラブライブ!におけるテーマにもなる「限られた時間の中で精一杯輝こうとする」にも繋がっており、その後の『ラブライブ!サンシャイン!!』の中でも、形を変えて表現されて来たことは事実なのである。
「感情に嘘がない」。これは、『ラブライブ!サンシャイン!!』の酒井和男監督による言葉だが、彼も京極監督のラブライブ!の本質を受け継いでいることは作品を見る限り疑いようも無い事実であり、そうであるならば、南條さんの言葉がその後の物語のコンテキストに含まれることも何ら不思議なことではないように思える。
SSA大きくなることへの不安
3rdライブのパシフィコ横浜から、大きくキャパを広げることになった4thライブ。「見て欲しい人に見て貰えない」。内田さんの口からたまに耳にすることだが、更に大きな会場SSAでライブを開催することになった折、内田さんは強い不安を口にしていた。
みんなが、チケットも取れないし物理的な距離も遠くなっちゃたし、ラブライブ!がどんどん大きくなって、遠い存在に感じるな…って感じちゃうんじゃないかなって、
そんな事ないよ、みんなで叶えてきた、みんなでラブライブ!だよって思ってもらいたい、
そう感じてもらえるライブにしたいって意気込んでいたけれど、
私自身が、どんどん規模が大きくなっていくラブライブ!に戸惑って
コンテンツが大きくなり、会場のキャパも大きくなることで、ファンとの物理的・心理的な距離が大きく開いてしまうのでは、という不安。加速度を増して人気を獲得していくμ'sの姿は、劇場版でも描かれていた通り。
そんな時、内田さんはある決意を固める。それが、自分が南ことりを全身全霊で演じること。そうすれば、広い会場でも遠くの人たちに「南ことり」を届けられる、のだと。
南ことりを、全身で、精一杯演じて、表現したかった
ラブライブ!4thライブ! | 内田彩オフィシャルブログ「うちだのたまご。」Powered by Ameba
髪を伸ばして、カラーもブリーチして頭皮をいじめ抜いた内田さんの役者魂と愛が懐かしい。
この思いは、ファイナルライブに至るまで彼女の中で貫かるものだが、彼女が壁にぶつかった時「表現者」として、南ことりを愛する1人の「人間」として、南ことりを届けることに対して逃げずに真摯に向き合ったからこそ得られた解なのではないかと思う。
奇跡それは今さここなんだ
5thライブで内田さんが大好きだと言った『KiRa-KiRA Sensation!』の歌詞。
奇跡それは今さ ここなんだ みんなの想いが導いた場所なんだ
私もこの歌詞が大好きである。物語の中で、μ'sが見つけた「奇跡」を歌った瞬間は涙が止まらなかった。そして、キャスト9人が5thライブでSSA2daysで立った時に歌った瞬間。まさに、『ラブライブ!』でしか味わえない「夢が現実に変わる中にいる感覚」が押し寄せて来たのだ。
その後も、「Mステ」や「紅白歌合戦」など夢のような時間が続いていく。
Mステでは「KiRa-KiRa Sensation!」を歌いました♪
— 内田彩 (@aya_uchida) 2015年12月4日
歌詞にある「奇跡それは 今さ ここなんだ」その奇跡のひとつがまた増えましたね*
ずっと見てきた番組のキラキラしたステージに立たせてもらえて…本当に嬉しかったです! pic.twitter.com/7LshFnSTCX
なんと
— 三森すずこ (@mimori_suzuko) 2015年11月26日
μ'sが第66回NHK紅白歌合戦に出場することになりました❤️
ほんと!信じられない!
人生にこんな夢みたいな瞬間が訪れるなんて…!!
応援してくれるたくさんのファンのみなさんのおかけです❤️
本当にありがとうございますっ pic.twitter.com/0McVAY02ga
「事実は小説より奇なり」というが、それをやってのけるのがまさに『ラブライブ!』。劇中の物語のその先へ。アニメの中のμ'sと、キャストのμ'sが追い越し追い越されながら先の物語を紡ぎ合っていく姿。それこそが、他には無い『ラブライブ!』の面白さなのである。
無敵の9人の修学旅行
私が参加したμ'sのイベントの中で特に思い出深いもの、それが「μ's Fan Meeting Tour 2015~あなたの街でラブライブ!~」。私は『ラブライブ!』のファンミが大好きである。それは、9人メンバーそれぞれの個性がいかんなく発揮される場所だからだ。
この9人が揃えば何でもできるんじゃないか
内田彩 『リスアニ!』vol.27.1
ファンミに際して内田さんは、そのように思ったという。しかも、「この人たちの本業は何だろう?」って思うくらい、喋っても面白い。思い返せば、9人の時は内田さんはメンバーの話を聞いて、終始笑顔を浮かべていた。「歌だけじゃない」ボーナスステージなイベント。それこそがファンミの醍醐味だと思う。
そして、彼女たち自身が「素敵な思い出」を現在進行系で作っていた様子を見るのも楽しかった。それは、まさに「修学旅行」さながら。何よりも彼女たちが楽しむ姿を見せてくれること。それこそが、ファンの喜びでもあるのだ。
印象に残るトークを書き残しておくくらい大好きなイベント。
スクールアイドルの輝きを歌に込めたμ's
2015年6月13日『ラブライブ!The School Idol Movie』が公開された。劇中の終盤に披露される『SUNNY DAY SONG』は、μ'sがスクールアイドルを続けるのか問われた時に出した「答え」の歌である。
『ラブライブ!』っていう大会と、その優勝者であるμ'sが、輝きとしてそこに残っていく歌
内田彩 『SUNNY DAY SONG』Cut 2015年 08 月号
『ラブライブ!サンシャイン!!』を見たファンなら、内田さんの言葉で思い浮かべたものがあるのではないだろうか。Aqoursが、廃校が決定し、ラブライブに出場する理由を喪失しかけた時に誓った決意。「Aqoursと共に浦の星女学院の名前をラブライブの歴史に永遠に残す」。まだAqoursの全ての物語が完結していない今、両者を比べるのは早計ではあるが、ここにμ'sとしてのスクールアイドルの「色」があると思っている。
μ'sは、自身の進退を問われた時、「スクールアイドルの輝きを拡めることで、自分たちがいなくなってもスクールアイドルは続いていく」と考えた。『SUNNY DAY SONG』はμ'sの歌というより「みんなの歌」という印象が強く、スクールアイドルとしての「個」より「全体」を優先したのだが、その結果として逆に彼女たちの「個」がそこで輝き始めたのだ。つまり、μ'sは後に「何もない場所を思いっきり走った」と言われるように、スクールアイドルとして、「初めてみんなの夢を叶えた」ことが、彼女たちの色となったのである。
スクールアイドルから輝きを受け取ったμ'sが、最後に輝きをスクールアイドルに還元する美しさ。輝きが憧れを生み、成長した憧れが輝きとなり、また新たな憧れを生む、という「スクールアイドルの輝きの円環構造」を作った始祖のスクールアイドル。あらためて、「μ's」というグループが無くなっても、形を変えて永遠に歌やスクールアイドルの中に生きて輝き続けるのだと思うと、彼女たちに憧憬の念を抱かざるを得ない。
μ'sが永遠になった日
2016年3月31日、東京では桜が満開を迎えた。4月1日、μ'sは今日をもって6年間の活動に区切りを付ける。ラブライブ!では幾度もの「奇跡」を目の辺りにして来た。しかし、彼女たちの旅立ちの日までそれを目の当たりにするとは。彼女たちの門出を祝福するように――始まりの1枚を思い出させる景色が街には広がっていた。
最初の出会いは確かに1枚の紙の上に描かれていたイラストだったかもしれないけど、
6年間みなさんが一生懸命応援して、大好きでいてくれた結果、
私たちが出会った9人の女の子は、同じ時間を生きる女の子として命をもらったと思っています。
今日が過ぎてもあの9人はどこかで楽しく過ごしているって、そんな気がしています。
始まりの1枚に描かれた少女たちは、南條さんの言う通り、やがて沢山の人に想われ、愛されていった。このドームに集った全ての人と世界中の人が、今彼女たちに想いを馳せている。私は、ファイナルライブのなかで、何度確信したことだろう。たとえμ'sが最期を迎えても、この世界のどこかで少女たちは自分たちの時を刻み続けていくのだと。
私が知らないところでもいろいろな人たちの宝物になっていて、誇らしい気持ちでいっぱいです
内田彩 『リスアニ!』vol.27.1
彼女たちの言葉を聞くとあらためて考えさせられる。人はいつ存在が無くなるのかと。今ならハッキリと分かる。それは、誰かに忘れられた時だと。それなら、彼女たちのことを想い続けている人がこの世界に一人でもいる限り――彼女たちはこの世界のどこかで永遠に生き続けるのだろう。
18人の歌の女神
「キャストとキャラクターのシンクロ」。『ラブライブ!』で大切にされてきたものである。キラキラと輝くステージの上で、9人のキャストがμ'sとして踊る様子。キャストがキャラクターとしてステージに立ちたい、少しでも近づきたいという思いも含めて受け取ってきた。しかし、6年を経た今、旅立ちの今日は、彼女たちは一心を同体してきた9人のμ'sであると同時に、18人のμ'sであることを深く思わされた日であった。
南條さんがファイナルライブの締め括りに放ったさり気ない言葉。それでも、そのたった一文字にどれだけの想いが込められていたか。彼女たちのこれまでを追い駆けてきた人は、その言葉から多くを悟っただろう。彼女たちは、9人であり、18人の歌の女神だったのだと。
どこからどこまでが絵里でどこまでが私かがあやふやな時期があったんですよ。
でも、ファイナルライブでは
「絢瀬絵里を精いっぱい輝かせてあげたいから、私がそのために頑張る」
というところまで考え抜くことができました。
南條愛乃 『リスアニ!』vol.27.1
確かに、彼女たちのこれまでのステージでは、キャストとして輝くことより、キャラクターとして輝くことが大切にされてきた。彼女たちの想いは、いつだって自分が向き合ってきた少女たちに向けられてきたのである。ならば、彼女たちは、ひとりの人と人同士である。南條さんの言葉を受け取った時。そして、『MOMENT RING』で、キャラクターとキャストの名前が18人分エンドロールの様に出てきた時。9人と9人がそれぞれの道を歩み出す旅立ちの決意の音が聞こえてきたのである。
銀河に咲いた花の中心で
『ラブライブ! μ's Final LoveLive!〜μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜』、彼女たちの輝きが永遠のものになる時。ついに、最期の歌が唄われた。
劇中で彼女たちが歌い踊っていた銀河。それは、彼女たちを包み込む無数の人たちによって照らされた一面に広がる9色の光。
そして、劇中でも描かれなかったその先の物語が、優しくて壮大な「声」を伴って紡がれ始めたのである。
『僕たちはひとつの光』の大合唱――
『ラブライブ!』、μ'sという世界観を作るための核として存在していたのがあの9人だったのかなあ、ということが、固いものとして輪郭を持って見えた感じがしました
南條愛乃 Cut 2016年 06 月号
私はあの瞬間、9人だけの歌が、みんなの歌に変わったのだと、そう思った。南條さんも「みんなに向けられた曲」だと言う。
しかし、同時に「でもね」と言う。
まわりでみんなが見守ってくれたからこそ、μ'sは9人でステージに立ち続けることができたし、だからこそ、いつも中心にいて歌い続けてきたのは9人であり、いつも中心にあったのは9人の歌だったのだと。
あの大合唱によって、『僕たちはひとつの光』が「9人の曲」になってしまった。その言葉には深く共感すると同時に、あらためて深い愛情と洞察を持つ方たちによってこの作品は守られて来たのだと胸がいっぱいになったのである。
μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪
銀河に咲いた花の中心で、彼女たちは旅立ちを歌う。そして、9人ひとつの色に包まれていた衣装から、9人それぞれの色で彩られた衣装に変わった瞬間。彼女たちの音楽が永遠に人々の心のなかに宝物として残り続けると同時に、道が9つの方向に伸びてそれぞれの歩みが未来へと繋がって行く誓いが高らかに謳われたである。
今回は本当の個人カラーの衣装がなかった事、そして何より、僕光の歌詞に旅立ちと言う言葉があった事、
— Kjoko Sudoh (@Kjoooooko) 2016年4月4日
僕光の全員一緒のカラー衣装から、原点に立ち返って本来の個人カラーで飛び立って欲しい、そんな思いを込めました。
それぞれの衣装のデザインは一人一人面談をし10人で決めました。
それは、これまで「μ's」としてあり続けてきた9人へと贈られた「これまで」と「これから」への祝福。あらためて、彼女たちは9人でありながらも、その後ろでは沢山の人が見守り続けてきた「みんなで叶えてきた物語」だったのだと。
そして、それぞれの色で輝き始めること
μ'sのラストライブはゴールじゃなくて、そこを通過点にそのままの勢いで駆け上がりたい
飯田里穂 My Girl vol.8
「ラブライブ!」の活動がひと区切りする寂しさはもちろんあるんですけど、それも悲観じゃなく、新しいフィールドに向かうんだろうなっていう楽しみもあります
南條愛乃 My Girl vol.8
それこそが、『ラブライブ!』とμ'sの輝きをいっそう強くするものであり、永遠に輝かせ続けることになるのだと。そう、強く感じさせてくれたのである。
Final LoveLive!から2年後の世界で
ファイナルライブから2年後の今――μ'sの言葉を振り返るなかで、自分たちはこれからどうやって生きていけばいいのか、そんな問いに対する答えが、既に2年前に語られていた。
μ'sを経験した仲間として、前を向いて、いろんなことを頑張っていかなきゃいけない
南條愛乃 『リスアニ!』vol.27.1
私たちは、あの日、9人が旅立つ瞬間を目にした。それはただ悲しむことじゃないし、ただ彼女たちの旅立ちを見送ることじゃない。自分たち自身も、それぞれの色で羽ばたいていっている彼女たちみたいに、「自分たちだけの物語」を紡ぎ出しはじめること。
それこそが、μ'sを経験した仲間として、胸を張って生きていくことになるんじゃないかと。私は、彼女たちの言葉に触れて、あらためてそう強く感じたのである。
思い出だけじゃないからね
あたらしい夢が生まれてくると 僕たちは知ってるよ
μ's MOMENT RING
そして最後のページには
ここまでμ'sの言葉を鍵にして、いくつもの思い出の扉を開けてきた。ここでも語り切れないほどに、思い出の扉はまだまだ沢山ある。
そのどれもが自分にとってかけがえのないものであり、宝物のようにキラキラと今も輝きを放っていたこと。
あらためて、そのことを強く感じさせてくれる機会になった。
これを読んでくださった方も、卒業アルバムを見るように昔のことを懐かしみながら、そして今を生きる励みになってくれていたらと切に思う。
そして、そんな素敵な想いにさせてくれる機会を与えてくれた生春さんには、あらためて感謝を伝えたい。ありがとうございます。
そして最後のページには、次の一言を添えて終わりとさせていただきたい。
「解散」ではないってことを声を大にして言いたいです。皆さんが好きでいてくれる限りあの9人はそこにいて、その物語と出会った瞬間が『ラブライブ!』という夢の始まりなんです。
新田恵海 『リスアニ!』vol.27.1
さようならへさよなら!
それは大胆な未来の"Hello"
これからはもっとよろしくね!