きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

【ラブライブ!サンシャイン!!】第3話「ファーストステップ」 感想ひとりごと

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運命の「ラブライブ!サンシャイン!!」第3話。前作の3話が完璧だっただけに、多くの人が期待と不安を抱えて視聴したかと思います。かくいう私もその一人でした。

しかし、ラブライブ!サンシャイン!!の第3話。結論から言えば、「ラブライブ!サンシャイン!!」だから描けた事を描き切った第3話だと思いました。

前作と比較して超える超えないの話ではなく、本作の第3話としてはこれ以上ないものを描いてくれた。私はそう思いました。

それでは、個別に感想を述べていきたいと思います。

 

やっぱり凄いよ曜ちゃん

3人でダンスの練習をする場面。梨子ちゃんが加わって、いよいよ3人での練習が始まりました。

 

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録画した自分たちのダンスを見て、フォームのズレを指摘する曜ちゃん。高飛び込みで培ったフォームの確認が生きてるとのこと。衣装デザインだけでなく衣装づくり、そして運動神経抜群で、ダンスのフォーム確認もできてしまう曜ちゃんの万能っぷりは留まることを知りません。

 

梨子ちゃんもピアノ経験者というだけあって、リズムの確認が出来ていました。作詞が出来る千歌、作曲ができる梨子ちゃん、ダンス・衣装が得意な曜ちゃん。既に2年生だけでも、スクールアイドル活動に必要なスキルが備わっています。

 

新理事長はまさかのあの人

2週間ぶりに登場した鞠莉さん。ブランクを埋めるかのようにド派手にヘリコプターで登場しました。これぞ「小原鞠莉」だと言わんばかりの参上っぷりです。

 

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鞠莉が2週間ぶりに登場して会話を繰り広げたと思ったら、まさかの彼女が浦の星に理事長になるとのこと。誰が想像できたでしょうか。

 

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そして、鞠莉の代名詞ともいうべき「シャイニー!!☆」。アニメとなると入れどころが難しいと思いましたが、ダイヤの話を無視してカーテンを開けるところで使っていたところを見てそういう使い方があったかと目から鱗が落ちました。

 

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イタリア系アメリカ人の父譲りだと思われるジョークを飛ばしながらも、理事長に就任するという話は本当だという鞠莉。浦の星にスクールアイドルが誕生したという話を聞いてやって来たという話から察するに、彼女も他の3年生同様スクールアイドルに対して思いが人一倍あるようです。

 

体育館でライブをしてみないかと提案する鞠莉。千歌たちがライブをする動機が生まれました。正直、3話で千歌たちがライブをするまでの流れが想像できなかったので心配していましたが、鞠莉がライブの提案をしてくれたことで一気に話が進んだ感があります。また、3話で鞠莉が深く関わってくるとは思っていなかっただけに、この物語における彼女の存在感が一気に増したように感じました。

 

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鞠莉は条件を提示します。満員にできなければ部は解散。ライブの提案をしては厳しい条件を投げかけた鞠莉の真意とはなんだったのでしょうか。

ひとつは、単純に千歌たちへの応援と激励の気持ちがあったことでしょう。これは、鞠莉の過去とスクールアイドルへの思い入れの話に絡んできそうです。

また、もうひとつの理由として、3年生のダイヤと果南にスクールアイドルのライブを見せたかったというものを考えました。これについては、後々のシーンで言及していきます。

 

千歌・梨子・曜の関係性

バスの中のシーン。短い会話のなかにも2年生同士の間柄がよく分かるシーンで素晴らしかったので載せておきます。

 

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曜「じゃ、諦める?」

千歌「諦めない!」

梨子「なんでそんな言い方するの?」

曜「こう言ってあげた方が千歌ちゃん燃えるから。」

 

「なんでそんな言い方するの?」という梨子ちゃん。まだ、千歌たちと会って日が浅いことから、千歌の性格を把握しきれていないことや、曜ちゃんの一見すると厳しい発言に対しても疑問符が浮かんでいるようです。それに対して曜ちゃんは「こう言ってあげた方が千歌ちゃん燃えるから。」と、千歌の性格を知った上で彼女ののせ方を分かっている様子。千歌と曜ちゃんが長い時間を共にしてきたことが伺えます。

 

実は、この流れ、2話でも繰り広げられていました。ダイヤ様にμ'sの知識の浅さを指摘された千歌が曜ちゃんと一緒に防波堤に腰掛けるシーン。「前途多難すぎるよー…」という千歌に対して、「じゃあ…辞める?」と返していました。間髪入れずに「やめない!」と返す千歌に笑顔で「だよね!」と返す曜ちゃん。千歌ちゃんは厳しいことを言われると逆に燃えるという性格を、旧知の曜ちゃんはしっかりと千歌の扱い方を心得ているなと思えるシーンでした。

 

伝統のビラ配り

千歌ちゃんちでライブの集客方法を考えます。トイレに行くためにしいたけを避けようとSASUKEをする梨子ちゃん。変顔もあいまって、だいぶ愛嬌のあるキャラクターになったなと。これも、第2話のシリアスを乗り越えたからでしょう。真面目な梨子が、コミカルな言動を見せる。キャラクターの魅力が倍増する仕掛けは流石です。

 

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ライブのビラ配りをする2年生組。ラブライブ!の伝統のようです。

1年生組も登場しました。沼津の都会出身の善子は現在不登校なのもあって私服で登場。彼女が2年生のライブに足を運ぶきっかけになるので、必要不可欠な登場でした。

 

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また、花丸とルビィちゃんも登場。まるちゃんは本を大量に買い込んでいましたが、こういう形で彼女の個性が出てくるのは嬉しいです。

千歌にライブに勧誘されたルビィちゃんは、自分が人見知りだということを忘れてライブの話題に飛びつきます。こういう細かいところからも彼女がスクールアイドルのことを好きなんだなという気持ちが伝わってきます。

 

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そして、「グループ名はなんて言うんですか?!」というルビィちゃんの問いかけ。引きを残して、Bパートに続きます。

 

グループ名はAqours

「スリーマーメイド」「制服少女隊」という名前が出てきた中で、千歌たちは砂浜に書かれた「Aqours」という文字を見つけます。

 

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千歌は「なんかよくない?グループ名に」と提案します。「名前決めようとしている時に、この名前に出会った。それって凄く大切なんじゃないかな!」と。その言葉を聞いて、千歌らしいなと思いました。

 

思えば、彼女がスクールアイドルに憧れを抱くようになったのは、秋葉原で偶然見つけたμ'sの映像であるわけです。それが無ければ今の千歌はありません。そして、海岸で出会った梨子ちゃんとも浦の星で再会することが出来た。彼女が「奇跡」の存在を信じられるのは当然のことであり、それゆえに偶然の出会いの大切さを一番知っている彼女だからこそ、一見突拍子もなく見える名前の決め方ができた。私はそう思いました。

 

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そんな決め方でいいの?と思う人もたくさんいるかと思いますが、今はこれでいいのだと思います。確かに、名前に対する思い入れはほとんど無いに等しいです。ですが、それはおそらく今後語られていくことでしょう。そもそも、この「Aqours」という文字を書いたのは誰なのか。3年生の中の誰かなのか。EDで登場する「Aqours」という文字との関係は。そのことも含めて今後の展開が楽しみで仕方ありません。

 

全速前進!ヨーソロー!

みなさんお待ちかね。曜ちゃんの「ヨーソロー!」が登場しました。アニメ化前はこのヨーソローのイメージが強くて個性は他に比べて弱かったなというのが正直な印象ですが、アニメになるとそのヨーソローを封印して彼女の友達思いな性格やダンスも衣装も頼れる部分も相まって魅力はかなり増したように思えます。それでも、この「ヨーソロー!」は聞きたかった台詞のひとつだったので、こういった場面で聴くことができたのは嬉しい限り。

 

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他の学校の生徒と記念撮影する曜ちゃんを見て「流石曜ちゃん、人気者。」という千歌ちゃん。まさに自分も同じ気持ちでした。2ndシングルのセンター総選挙で1位になった曜ちゃんですが、そのこととリンクさせての劇中でもあの人気っぷりなんだろうなと思いました。

 

曜ちゃんの千歌ちゃんへの想い

千歌ちゃんちで千歌と曜ちゃんが「ゴージャスぅ~!!」と言っていましたが、これは劇場版ラブライブ!でホテルのロビーを見て「ゴージャスぅ~!!」と言った穂乃果を思い出しました。スタッフさんの遊び心が感じられます。

 

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そして帰りのバスが無くなった曜ちゃんを志満姉が送っていくシーン。曜ちゃんの「飽きっぽいんじゃなくて中途半端が嫌いなんですよ。やる時はちゃんとやらないと気がすまないっていうか。」という台詞。これまで千歌が何事にも夢中になれなかったのは、本気になれるものが無かったから。第1話で千歌が梨子ちゃんに語った本気の「やりたいこと」に対する気持ちを、曜ちゃんは分かっていたようです。

 

曜ちゃんが「千歌はやる時にはやるけど、それまでに夢中になれることが無かった。」ということを知っていた上で、1話の「千歌ちゃんと一緒に夢中で、何かやりたいなって。」という言葉を言っていたのだなと思うと、またあのシーンが深みを増していきます。曜ちゃんは千歌が本気でやりたいことを見つけるのをずっと待っていたんですね。

 

志満「それで上手くいきそうなのライブは?」

曜「うん。いくといいけど…」

志満「満員か…」

曜「人少ないですからね、ここら辺。」

 

曜ちゃんが抱いている不安。前作でもお馴染みの信号の色が登場人物の心情を表す演出が使われていました。

 

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志満「大丈夫よ。みんな温かいから。」

 

曜ちゃんが笑顔になると同時に信号も青になりました。

 

ファーストライブ

ライブ当日。天候は最悪の雨でした。

それでも、千歌たちはライブをする決心をします。体育館裏で、手を繋ぎ合って。この場面から最後に至るまで、前作を意識した演出が続きます。

ライブ前に思わず3人で笑い合ってしまうシーン。前作では、穂乃果が運動部みたいな点呼を叫んだのがおかしくて3人で笑い合っていました。

 

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そしてファーストライブの幕が上がります。千歌が目を開けるとそこには―

 

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拍手をする数人のまばらな人。前作では0人だっただけに、こちらの方が現実的です。それだけに、私はこのシーンに不安を抱きました。それは、前作の第3話「ファーストライブ」に起因します。

 

―あの3話のシーンは胸が痛かったです。

そうですね。でも、彼女たちがかわいそうだから、ちょっと無関係なお客さん入れよう、誰も来ないと残酷だから少し行かせよう、と考え始めると本来のラインからどんどんブレていくんですよね。ふつうに考えると自然なことが、まわりの反応とか受けを考えるとブレてしまう。そういうところは常に気をつけていました。外側から"お話を作ろう"としてはいけない、と。

『電撃ラブライブ! 3学期』花田十輝インタビューより

 

観客が0人なんて、普通に考えればあり得ません。興味本位で立ち寄った学生がいても何らおかしくはないでしょう。それでも、花田さんのインタビューにある通り、あのシーンは「まわりの反応」とか「受け」といったものをすべて捨てて、あくまでも穂乃果たちがどう動くのが物語として自然かを追求した結果の展開であった訳です。重過ぎるという理由で話を変えてしまうと、当たり障りのない物語になってしまう。そのことに注意を払って、ラブライブ!は終始描かれていました。

 

それだけに、サンシャイン!!では数人でも観客が集まってしまったことで、物語にブレが生じるのではないかと思いました。しかし、あくまでもこれに続く展開が「ラブライブ!と同じだったら」の話。「完敗からのスタート」が描かれるためには観客が0人であることは必要な演出でしたが、そうでなければ話は変わります。そして、私の不安は見事杞憂に終わり、最高の形で話は進みます。(別の見方をすると鞠莉が提示したのは「満員にすること」であり、それを考えると数人いたとしても「負け」ということにはなります。)

 

それぞれに思いを抱える少女たち

そしていよいよ、千歌たち3人のファーストライブが始まります。 

 

千歌「私たちはスクールアイドル!せーの」

千歌・梨子・曜「Aqoursです!!」

梨子「私たちはその輝きと」

曜「諦めない気持ちと」

千歌「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました。目標はスクールアイドル…μ'sです!」

 

観客が少なくても一歩踏み出して思いを語る彼女たち。μ'sのファーストライブを見て、彼女たちの諦めない気持ちを知っていたからこそ出来た行動かもしれません。また、3人が順番にμ'sへの憧れを叫ぶシーンを見て、千歌の思いが他の2人にも共有されていることを知りました。そして、目標はμ'sであると宣誓する千歌。ここから彼女たちのファーストステップが始まります。

 

曲が流れだすと同時に、様々な思いを抱える少女たちの姿がありました。

花丸とルビィは、浦の星に誕生したスクールアイドルの姿を見て笑顔になります。

 

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ダイヤは、静かに目を瞑ってただ流れてくる彼女たちの曲を聞いています。

 

ヨハネは、手を強く握り締め、サングラス越しに初めてスクールアイドルを見たかのような目つきで彼女たちの姿を見つめます。

 

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鞠莉は笑顔で後ろを振り返ります。

 

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振り返った先にいた果南は、雨のなか暗い表情を浮かべていました。

 

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やはり3年生組は、大きな闇を抱えていそうです。結局、果南は親友の千歌の歌を聞いても最後まで笑顔にならなかった様子を見ると、とりわけ彼女の闇は深そうです。

 

ここでようやく、冒頭で鞠莉が千歌たちにライブを提案した理由の話に戻るのですが、鞠莉としてはダイヤと果南に、また「スクールアイドル」のライブを見て欲しかったから、千歌たちにライブをやることを提案したのではないでしょうか。今はまだダイヤと果南の過去に何があったのかはハッキリと分かりません。それでも、彼女たちがスクールアイドル絡みで暗い過去を抱えているのは事実のようです。

 

鞠莉はそんな2人を再び突き動かそうとしている。もしかしたら自分もその中にいるのかもしれません。止まっていた3年生の時間が今再び動き出そうとしている。私には鞠莉の行動の裏側にそんな意図を読み取りました。

 

千歌たちの歌が、色々な思いを抱えている少女たちの心を動かそうとしているさなか、落雷により音響・照明が滞り、ライブの継続が困難な状況を迎えます。

 

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ファーストステップ

千歌「気持ちが繋がりそうなんだ…」

曜「知らないことばかり何もかもが…」

梨子「それでも期待で足が軽いよ…」

 

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「温度差なんていつか消しちゃえってね…元気だよ…元気を出して行くよ……」

 

消えそうなくらいの、か細い千歌たちの歌声。

 

そこに差し込んできたのは、

 

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千歌たちを照らす眩しいくらいの光と、静寂をかき消す美渡姉の声でした。

 

「バカチカー!あんた開始時間、間違えたでしょっ!」

 

浦の星に押し寄せる車の渋滞、体育館の入り口に並ぶ大量の靴。

 

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気づけば会場には大勢のお客さんで満員になっていました。

 

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「ホントだ私…バカチカだ……」

 

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みんなで叶える物語

大きな拍手と共に千歌たちのファーストライブは大成功しました。

その成功の裏には、彼女たちの努力の他に、それを支える人たちの努力があったことが、ライブ中に差し込まれていた映像から分かります。

職場にビラを大量に貼ってくれた美渡姉。

沼津駅前でビラ配りをしてくれていた学校の生徒たち。

 

ラブライブ!の2期9話「心のメロディ」で描かれた、音ノ木坂のみんなで叶えた雪の日の軌跡が、別のかたちで浦の星でも描かれました。

前作では2期の終盤でようやくたどり着いた場所。本作では、3話で早くもその「みんなで叶えた」場所へとたどり着きました。

順風満帆な旅立ちを見て、そこに立ちはだかる者が現れます。

 

曜「彼女たちは言いました!」

梨子「スクールアイドルはこれからも広がっていく!どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられると!」

千歌「はーっ…」

 

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ダイヤ「これは今までの、スクールアイドルの努力と、街の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように!」

 

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千歌「分かってます!でも…でも、ただ見ているだけじゃ始まらないって!上手く言えないけど…今しかない…瞬間だから…だから!!」

 

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「輝きたい…!!!」

 

新しい青春の物語のスタート

千歌たちの決意。見事でした。

 

「スクールアイドルはこれからも広がっていく!どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられると!」

 

劇場版ラブライブ!で穂乃果がスクールアイドルたちに向けて言った言葉が、今も受け継がれているんだなと思い感動しました。

 

そんな彼女たちに立ちはだかったのは生徒会長の黒澤ダイヤ

 

「これは今までの、スクールアイドルの努力と、街の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように!」

 

この言葉には、「μ'sが高めたスクールアイドルの価値」と「街の人の暖かさ」のお陰で千歌たちが満員の会場でライブを出来ているという文字通りの意味があります。

 

そして、もう一つ。現実にAqoursが置かれている状況、ひいては「ラブライブ!サンシャイン!!」というコンテンツが置かれている状況も表した言葉なんだと思います。

 

今までのスクールアイドルの努力。これは、「現実世界でμ'sが成し遂げた功績」のこと。そして街の人たちの善意、これは「μ'sを追いかけて来たファンの人たち」のこと。その2つの功績があって初めてAqoursは、サンシャイン!!は、脚光を浴びながら活動することができている。

 

少なからずいたμ'sファンの心理をダイヤに代弁させ、沼津の人たちをファンに見立てた演出には脱帽しました。

 

前作でも重要視されていた現実世界とのシンクロですが、本作でも現実世界でAqoursが置かれている状況を上手く再現していました。それも自然な形で。ラブライブ!は嘘のないリアルな物語だと改めて思わされました。

 

以前、私はAqoursは「マイナスからのスタート」と書きました。(以下、参照。)それは、「廃校が決定していること」や、「田舎の海辺の街というスクールアイドルが活動する土壌が築かれていないこと」などから、そう言いました。

 

ayarieshon.hatenablog.com

 

しかし、「マイナスからのスタート」なんてとんでもありません。いまだ「廃校が決定していること」は定かではありませんが、内浦でもスクールアイドルが活躍する余地があることが今回の話で十分に分かりました。そして、μ'sの功績により、Aqoursも最初から一定の人気を獲得できていること。むしろ「プラスからのスタート」と言った方が正しいかもしれません。

 

しかしそれだけに、そのプラスに働いている部分の多くが、実はμ'sの功績だと唱えるファンが多いのが現状です。それについては一理ありますし、否定をする余地もありません。ですが、それは制作側も折り込み済み。

 

千歌は語ります。

 

「分かってます!でも…でも、ただ見ているだけじゃ始まらないって!上手く言えないけど…今しかない…瞬間だから…だから!!」

 

彼女が語った言葉。千歌たち自身の気持ち、キャストの気持ち、そして制作陣すべての人の気持ち。その全てを背負って彼女は語っているようでした。

 

μ'sの功績の上に私たちは成り立っている。それは百も承知。だけど、ただμ'sが活躍していたことだけにすがっているようじゃ何も始まらない。夢は叶うことを信じて、仲間と夢中になれる限りあるいまこの瞬間だから、輝きたい。彼女たちに浴びせられた批判も賞賛さえも全て背負って、ただ今は歩みを進めるしかないと言い放った千歌。

 

まさにこの瞬間、彼女たちの「ファーストステップ」は始まりを告げ、ただμ'sに憧れる少女の物語ではなく本当の意味での「新しい青春の物語」が幕を開けた時でした。

 

ダイスキだったらダイジョウブ!

ラブライブ!サンシャイン!!第3話「ファーストステップ」。とてつもなく濃厚な話でした。冒頭でも述べましたが、前作の3話が完璧だっただけに、今回はどう描くのが正解なのか視聴するまでは全く想像ができませんでした。

 

しかし、蓋を開けてみれば、ラブライブ!サンシャイン!!というコンテンツが置かれている状況をシンプルに作品内に投影することで、新しい形の青春の物語のはじまりを描き出していました。

 

ハードルが高かった第3話を見事に描き切ったスタッフ陣には感謝しかありません。Aqoursに向けられた現実世界での批判を全て真っ向から受け止めて、それでも歩みを進めなくてはいけないのだ、という熱いメッセージを感じました。

 

前作の劇場版でも「μ'sには続けて欲しい。」というファンの気持ちに対して、真っ向から答えを出していました。そして、本作でもファンの気持ちに対して一つの答えを出した。ここまでファンの気持ちに対して正面からぶつかって来てくれる作品はそうそうありません。

 

ラブライブ!サンシャイン!!、ひとまずの山場は乗り越えたと言ってもいいんじゃないでしょうか。あとは、Aqoursが見たことのない夢の軌道を描くだけです。

 

最後に、今回Aqoursのはじまりの歌である「ダイスキだったらダイジョウブ!」について触れて3話の感想を終わりにしたいと思います。

 

作曲・作詞は、μ'sでいえば「きっと青春が聞こえる」「MOMENT RING」、「Step! ZERO to ONE」「元気全開DAY!DAY!DAY!」を手がけた高田暁さん・畑先生コンビです。明るい曲だけど少し切なくて泣けるはじまりの歌という印象を受けました。

 

歌詞はストレートに千歌たちの現状や気持ちを表しています。

 

スクールアイドルになりたいと思った瞬間に憧れが生まれた。ここで言っている「君」は、千歌にとっての穂乃果であり、奇跡の出会いを果たした梨子ちゃんであり、曜ちゃんであり、これを聞いている人たちであり、そして未来に加入するAqoursメンバーたち全員を含んでいるように思います。ラブライブ!では「僕」という歌詞が多様されていたことを考えると、サンシャイン!!は「君」ということで、何か両者で対になるような意味合いも込められているのかもしれません。

 

今後、この曲がスタダのように9人で歌う機会があるかは分かりませんが、その時に聞くとまた別の捉え方ができそうな歌詞だと、全体の歌詞を見て思いました。今では9人の間にある「温度差」もいつかは消えて全員が「輝きたい!!」と思える瞬間が来た時、また歌詞が深みを増しそうです。