【ラブライブ!サンシャイン!!】第8話「くやしくないの?」 感想ひとりごと
「ラブライブ!サンシャイン!!」第8話、「前回のラブライブ!サンシャイン!!」が無く、前回の続きから物語がスタートしました。第6話でスイッチが切り替わったように明らかに「ラブライブ!」とは違うルートを歩みだしたことを感じられましたが、本話も間違いなくサンシャイン!!でしか描けない「再起」の物語だということを強く感じました。これまでの順調な積み重ねがあっただけに、新しい場所に足を踏み入れた瞬間に全てが瓦解するような緊張感が漂う8話でした。
SELF CONTROL!!
Saint Snowのステージ、舞台袖で千歌は固唾を呑んで見つめます。
「SELF CONTROL!!」、ロック・メタルを基調としたクール系の曲。ダンスもAqoursとは対局にあるスタイリッシュなものでした。
彼女たちのダンスは我々視聴者から見ても明らかに「Aqoursより格上」と分かるレベル。その一番の要因はやはり「全て手描きだったこと」。これに尽きると思います。無印の時も、A-RISEの「Shocking Party」が全て手描きだったように、CGを無くして全て手描きにすることで、Saint Snowのパフォーマンスのレベルの高さが説得力を持って視聴者に分からせることができたのです。
彼女たちのパフォーマンスに客席からは大きな歓声・喝采が。千歌たちは、彼女たちのパフォーマンスを見せられて、あまりの凄さに動けずにいました。
気丈に振る舞う千歌
梨子「この街、1300万人も人が住んでいるのよ」
曜「やっぱり違うのかな…そういう所で暮らしていると…」
この場面は、既にAqoursの出番が終わった後。「TOKYO」という場所が、ホームの「内浦」とは異なるアウェーな場所だと痛感した曜ちゃんの心情が伺い知れます。他のメンバーも地に足が付いていないような感覚が会話の端々から感じられ、我々視聴者は彼女たちが芳しくない結果に終わったことを感じ取ります。
そんな彼女たちに対して、リーダーである千歌は気丈に振る舞います。
お待たせー!これすっごい美味しいよ!
全力で頑張ったんだよ?
私ね、今日のライブ、今まで歌ってきた中で出来は一番良かったって思った!
それに、周りは皆ラブライブ本戦に出場してるような人達でしょ?
入賞できなくて当たり前だよ…
Aqoursのライブは成功に終わりました。「自分たちは出来る限りの最善を尽くした」「猛者たちがいる中で入賞できないのは当たり前」千歌なりに前向きな言葉をメンバーにかけてあげていましたが、入賞を目指してここまで頑張って来た彼女が「入賞できなくて当たり前」と言うのは流石に苦しい言い訳です。
梨子「だけど…ラブライブ決勝に出ようと思ったら、今日出ていた人達くらい上手くないといけないってことでしょ?」
千歌「それは、そうだけど…」
後に分かりますが、千歌は「自分が落ち込んだら周りも落ち込んでしまう」と思い、気丈に振舞っていたのでした。その作られた「から元気」の千歌の心の綻びが、彼女のチグハグな言葉からは伺い知ることができました。
私ね、Saint Snowを見た時に思ったの
これがトップレベルのスクールアイドルなんだって。このくらい出来なきゃダメなんだって
なのに、入賞すらしていなかった。
あの人達のレベルでも無理なんだって…
長くスポーツを続けてきて、現在もスクールアイドル部と兼部している曜ちゃん。目指すべき自分と今の自分の差を常に意識してきたであろう彼女らしいセリフだと思いました。
今はそんなこと考えてもしょうがないよ!
それよりさ、折角の東京だし楽しもうよ!
千歌は周りの意見に聞く耳を”あえて”持たず、敗退したことを「そんなこと」と一言で片付けて、仲間の気持ち、話を切り替えようとします。
完全敗北の宣告
千歌たちは司会のお姉さんから大会の集計結果を受け取ります。そこには、上位入賞グループだけではなく、全出場グループのランキングと得票数が書いてありました。Saint Snowは9位。そしてAqoursは
ランキングは30組中30位、得票数は0票。
ここで、Aqoursの「完全敗北」が通告されました。
目に見える数字で自分たちが今いる位置を宣告される
【ラブライブ!サンシャイン!!】第7話「TOKYO」 感想ひとりごと - きりんログ
前回の感想で、スクールアイドルワールドの大会のシステムがその場のお客さんの投票でランキングで決まるというところから、目に見える数字で自分たちの立ち位置が分かる残酷なシステムであると言いました。その悪い予感が的中。
千歌らは、自分たちが「ただ入賞できなかった」という不明瞭な結果から、「ランキング・得票数が全出場組中で最下位の30位である」という目に見える明らかな形で、自分たちの負けを知らされたのでした。
得票数「0」で思い出されるのは、音ノ木坂学院の講堂でμ'sがかつてファーストライブを開催した時に集まった生徒の人数。この「0」という数字は、後に「1」への歩みを進めようとする上で大事な数字であると共に、実際に0票という数字が現実的ではないものの、それを情けで別の数字に変えた場合当たり障りの無い物語になってしまう。だからこそ、今回も「0」という数字に拘ったのだと思いました。
彼女たちがかわいそうだから、ちょっと無関係なお客さん入れよう、誰も来ないと残酷だから少し行かせよう、と考え始めると本来のラインからどんどんブレていくんですよね。ふつうに考えると自然なことが、まわりの反応とか受けを考えるとブレてしまう。そういうところは常に気をつけていました。外側から"お話を作ろう"としてはいけない、と。
『電撃ラブライブ! 3学期』花田十輝インタビューより
落ち込む暇も無くそこにSaint Snowの2人が現れます。
お疲れ様でした。
素敵な歌で、とても良いパフォーマンスだったと思います
…バカにしないで。
ラブライブは…遊びじゃない!
「μ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら諦めた方が良い 」「バカにしないで。ラブライブは遊びじゃない」聖良と理亜の言葉は、千歌たちに重くのしかかりました。「目に見える敗北の結果」と「他のスクールアイドルからの辛辣な言葉」のダブルパンチを浴びて、千歌たちは最悪の状態で東京を去ることになります。
ちなみにSaint Snowの2人が入賞しなかったことは驚きですが、ここで彼女たちが入賞して先に進んでしまっていたらAqoursとの差は歴然となりすぎてしまい、当初のμ'sとA-RISEと同列の関係になってしまったかと思われます。むしろ、彼女たち2人はAqoursより少し先を行っているくらいのライバル関係が新しいように感じました。
くやしくないの?
泣いてたね、あの子
きっと悔しかったんだね、入賞できなくて。
Saint Snowは自分たちより凄いパフォーマンスをして、そして9位になって。それでも泣いて。敗北と知ってただ打ちひしがれてたAqoursと、本気で泣いていた理亜との間には、スクールアイドルへの気持ちの入れ様、情熱の温度差が溝として確かにあることを感じました。
私は良かったと思うけどな。
努力して頑張って東京に呼ばれたんだよ?それだけで凄いことだと思う
でしょ?
胸張って良いと思う!
今の私達の精一杯が出来たんだから!
千歌ちゃんは…悔しくないの?
それは…ちょっとは…
でも満足だよ!皆であそこに立てて、私は嬉しかった
「自分たちが精一杯の努力をしたこと」「そしてその努力の成果をすべて出せたこと」自分たちがやってきたことに目を向けて話す千歌に対して
悔しくないの?
曜ちゃんは、これまでも千歌のやる気に火をつけるようにあえて厳しい言い方をしてきましたが、今回のそれはいつものとは違うように感じました。この言葉の真意については、後ほど曜ちゃんが思い悩む場面にて触れてみたいと思います。
μ'sの落とした光と影
沼津駅に戻ってきた千歌。クラスのみんなが出迎えてくれました。
ちゃんと歌えた?
緊張して間違ったりしなかった?
今までで一番のパフォーマンスだったねって、皆で話してたとこだったんだー
じゃあ、もしかして本気でラブライブ決勝狙えちゃうかもってこと?
…え?
あたたかく出迎えてくれたクラスの仲間たち。しかし、今の彼女たちの声は、千歌たちにとっては出来れば避けたい内容でした。見送る時も期待を込めて見送ってくれたクラスのみんな、そんな彼女たちの期待を裏切りたくない。千歌は、そういった想いがあっただけに、結果を濁して喋りました。
そこに現れたのは
妹たちの帰りを待っていたダイヤでした。
姉の顔を見た瞬間、これまで堪えてきた感情が溢れ出て来ました。
よく頑張ったわね
泣きつくルビィに対して、ダイヤはたった一言「よく頑張ったわね」と、全てを悟っていたかのような言葉を掛けてあげます。
得票、0ですか…
やっぱりそういうことになってしまったのですね
先に言っておきますけど、あなた達は決してダメだったわけではないのです
スクールアイドルとして十分練習を積み、見てくれる人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスもしている
でも、それだけではダメなのです
ダイヤは千歌たちを決して慰めるためにフォローしたのではなく、確かにあるスクールアイドル界の現状を語ります。
7236…なんの数字か分かります? 去年エントリーした、スクールアイドルの数ですわ。
第一回大会の10倍以上
ラブライブの大会の開催によって、それは爆発的なものになった
A-RISEとμ’sによって、その人気は揺るぎないものになり…
アキバドームで決勝が行われるまでになった。
そして、レベルの向上を生んだのですわ
μ’sが望んだ「スクールアイドルが拡がりを見せること」。それは想像も付かない勢いで現実のものになりました。多くの学生が、スクールアイドルの楽しさを、輝きを知る。μ'sの願いは大きな形で叶えられました。
しかし―その大きすぎる光の一方で、スクールアイドルが拡がりを見せたことによる影も生まれていました。スクールアイドルの人口増加、それによるレベルの向上。ラブライブの大会に出場するためには、ただ見てくれる人を楽しませるだけのパフォーマンスや練習だけではどうにもならなくなったことが語られます。
μ'sが生んだ光と影。光が強すぎるあまりにその影も濃くなっていった。μ'sの軌跡を追いかけてきた我々としては、彼女たちの願いが叶えられたことは感慨深く思えるだけに、それによって後に続くスクールアイドルの未来に厳しさという影を落としてしまったことは複雑な心境になります。
ダイヤは続けて語ります。
あなた達が誰にも支持されなかったのも、私達が歌えなかったのも、仕方ないことなのです
2年前…既に浦の星には統合になるかも、という噂がありましてね
School…idol…?
そうですわ!学校を廃校の危機から救うには、それしかありませんの!
ソーリー、そういうの興味ないの
うんって言うまでハグする!
ダイヤの口から初めて千歌たちに語られる3年生の過去。2年前にも浦の星には廃校の危機が迫っており、今の千歌たちと同じようにスクールアイドルになることで自分たちの学校を守ろうと決意していたのでした。
彼女たちの間の溝が深い今の関係性からは想像もできない過去に、思わず辛く込み上げてくるものがありました。今は鞠莉の方から果南とダイヤをスクールアイドルに一方意的に誘っていますが、かつては果南とダイヤの方から鞠莉をスクールアイドルに誘っていた。驚くべき過去が語られました。
そして、彼女たちも今の千歌と同様に東京に進出していたことが語られます。
そうですの!私達が呼ばれたんですのよ!
チャンスですわ!
このイベントで有名になればラブライブが一気に近付きますわ!
今のダイヤとは似ても似つかわない無邪気な姿。今、ギクシャクした関係になっていしまっている姿を我々は知っているだけに、かつて幸せそうにスクールアイドルをしている彼女たちの姿を見てしまうと、本当に見ていて辛いものがあります。
余談ですが、ホワイトボードに書かれた「力をあわせて夢の海を泳いで行こ」という歌詞、第4話で千歌たちがかつてのスクールアイドル部の痕跡を見つけた時に実はホワイトボードに消しきれていなかった文字が残っていたことに気づいていましたが、やはり「泳ぐ」というキーワードは果南が書いた歌詞だということが分かりました。
3年生のスクールアイドル活動の痕跡が残る体育館内の部室。歌詞をよくみると「泳いでいこう」という文字らしきものが見えたりします。「泳ぐ」で真っ先に思い浮かぶのが果南ですが、何か彼女と関係がある曲なのか、その辺も含めて今後が楽しみです。
【ラブライブ!サンシャイン!!】第4話「ふたりのキモチ」 感想ひとりごと - きりんログ
でも、歌えなかったのですわ
他のグループのパフォーマンスの凄さと、巨大な会場の空気に圧倒され…
何も歌えなかった
ダイヤたちはスクールアイドルワールドで歌うことすら出来なかった。第6話の回想で、ステージを見た果南が静止し、それを見たダイヤと果南も止まっていましたが、それは彼女たちが会場の雰囲気に飲まれて歌えなかったことを描写していたもの。大きな歓声が湧いていましたが、その歓声の大きさこそが彼女たちを苦しめていた正体だったのでした。
ダイヤ「あなた達は歌えただけ立派ですわ」
曜「じゃあ反対してたのは?」
ダイヤ「いつかこうなると分かっていたから…」
これは今までのスクールアイドルの努力と、街の人達の善意があっての成功ですわ。勘違いしないように
これまで、言動の端々から感じられたダイヤの厳しさ。初めて彼女の口から、それが意図的なものであったことが明言されました。ダイヤは、これまでのAqoursの頑張りを知っていて、その努力が帰着する結果を知っていた。その上で、彼女はAqoursに更なる大きな悲しみを背負わせないように、千歌たちの前に立っていたのでした。
これは今までのスクールアイドルの努力と、街の人達の善意があっての成功ですわ。勘違いしないように
これは、自分たちがスクールアイドルをやっていた1年生時に、身を持って痛感したことだったのでしょう。鞠莉が「何が悪かったの?街の人も学校の人も、スクールアイドルだと応援してくれたじゃない」と、果南に対して言っていたことから、それは確かなことだと分かります。ダイヤは自分たちが経験した苦しみから、Aqoursにも同じ苦しみを味あわせたくない。どうしてもスクールアイドルとして先に進みたいなら、あえて厳しい言葉を掛ける。それでダメになるようだったら、その先の苦しみには到底耐えられない。
7話で、Aqoursが東京に行くことになった時にダイヤがどこか全てを悟ったような表情をしていましたが、それも覚悟を決めた千歌たちの行く末を知っていたから。1話で机に足を乗せて千歌にスクールアイドル活動を認めさせないように必死になっていたのも、ダイヤなりの止め方だったのかと思うと、またその場面を見た時に意味合いが異なって見えてきそうです。
ダイヤ・鞠莉・果南それぞれのスクールアイドルへの想い
一方、果南は自分たちの過去の経験から、スクールアイドルとしてラブライブで優勝して学校を救うなんて無理だと鞠莉に語ります。
ラブライブに優勝して学校を救うとか、そんなのは絶対に無理なんだよ
だから諦めろって言うの?
私はそうすべきだと思う
…果南
(誰かが、傷付く前に…)
私は…諦めない!
必ず取り戻すの!あの時を!
果南とダイヤとうしなったあの時を!
私にとって、宝物だったあの時を…
「誰かが傷付く前に」かつて、ダイヤと鞠莉と3人でスクールアイドルをしていた時、東京で挫折を味わったこと、そしてスクールアイドルを辞めてダイヤと鞠莉との間に大きな溝が出来てしまったこと。東京に行った千歌たちのこともあり、再び同じ悲劇を繰り返してはいけない。そんな思いから果南は、鞠莉からのハグを断りました。
かつては果南からハグを求められていた鞠莉は、今度は逆の立場に転じましたが、今の彼女の思いは受け止めてもらえませんでした。それだけ、果南にとってスクールアイドルがもたらした影響は大きなものだった。鞠莉としては、自分に宝物のような時間をくれた時を再び取り戻したい。最初はスクールアイドルへの誘いを断っていた彼女ですが、結果的にかけがえのない時間をスクールアイドルのおかげで過ごすことが出来た。
3年生の全員が「スクールアイドル」に対して負の感情を持っていますが、それぞれ異なる見方が存在していることが分かります。ダイヤとしては、スクールアイドルになることで、後輩たちに同じ思いで傷ついて欲しくないという想いが。鞠莉は、もう一度あの頃のかけがえのない時間を取り戻すためには、痛みを負ってでもスクールアイドルが必要なんだという気持ちが。そして、果南にとっては、スクールアイドルは自分たちの青春を破壊した憎むべきもの対象として捉えていました。3人それぞれが持っているスクールアイドルへの想い。それぞれの想いが強く、そして正論であるだけに、いまだ彼女たちの想いは交錯したままなのでした。
それぞれの想い
千歌ちゃん、大丈夫?
うん。少し考えてみるね。
私がちゃんとしないと、みんな困っちゃうもんね
「私がちゃんとしないと」千歌は自分があるべき姿を自ら決めて、素の自分を押し殺していたことが分かりました。
曜ちゃんは、千歌と2人で写っている写真を見つめながら帰りのことを思い出します。
千歌ちゃん。
やめる?スクールアイドル
「やめる?スクールアイドル」と聞いても返事を返してくれなかった千歌。「悔しくないの?」という電車の中で尋ねた言葉もそうですが、曜ちゃんは千歌から自分が期待している言葉を引き出して安心したがっているように思えました。「やめる?」という言葉に対しては「やめない」。「悔しくないの?」に対しては「悔しい」と。
それは、千歌が初めて本気で夢中になれたのがスクールアイドルだということを誰よりも知っていて、千歌ちゃんと一緒に夢中になれることをしたいという夢を曜ちゃんが持っていたから。これまで、千歌が本気になれるものに巡り会えなかったこと、そして本気で夢中になれるスクールアイドルに巡り会うことができたこと、それを誰よりも千歌の側にいて知っていたからこそ、今回は「やめない」という千歌の言葉を待ち詫びていた。いつも千歌のやる気を出させるために厳しい言葉をかけていた曜ちゃんですが、この時ばかりは彼女の質問は違う意味合いを持っていたように感じられました。
落ち込む曜ちゃんが千歌との昔の写真を眺めていた時も、これまで千歌と一緒に過ごしてきた日々を思い出しながら「また今回も諦めてしまうのかな」という不安の中に彼女はいたように思えます。
また、8話で最終的に、梨子ちゃんには本音を打ち明けるのですが、曜ちゃんには本音を打ち明けられていなかったのが印象的でした。「せっかくスクールアイドルやってくれた」と千歌は自分が弱音を吐けなかった理由を語るのですが、曜ちゃんは自分がスクールアイドル部を作ろうとした時も真っ先に協力してくれて。そして、衣装づくりや振付の指導も率先してやってくれている。「自分のために」というのは結果的に千歌の思い違いだということが分かるのですが、自分がやりたいと言って始めた活動に一番よく付き合ってくれた曜ちゃんに対して本音を打ち明けられなかったのは、彼女たちの距離の近さを考えてみると当然と言えば当然なのかなと思いました。
千歌が自分の部屋でμ'sのポスターに手を伸ばす場面、Saint Snowを、「0」という数字を思い出し、スクールアイドルの厳しさ、大会のレベルの高さを思い出したところで千歌は自分の伸ばした手を戻します。μ'sに憧れてスクールアイドルになった千歌。今までμ'sに憧れてここまでスクールアイドルを続けてきましたが、μ'sとの間にはこんなにも大きな距離の隔てがあったこと。好きという気持ちでここまで来た千歌が現実を身を持って知った時、彼女は届かない星へと手を伸ばすことをやめます。
Step! ZERO to ONE
翌朝、梨子ちゃんは海に入っていく千歌ちゃんを見て、慌てて家を飛び出します。しかし、それは梨子ちゃんの杞憂に終わりました。1話で海に飛び込んでいった梨子ちゃんを追いかけて行った千歌でしたが、8話ではそれが逆転していました。
千歌は海に潜っていた理由を梨子ちゃんに話します。
何か、見えないかなって…
見えたの?
ううん、何も見えなかった
でもね、だから思った。続けなきゃって。
私、まだ何も見えてないんだって
このまま続けても、0なのか…それとも1になるのか、10になるのか。
ここでやめたら、全部わからないままだって…
だから私は続けるよ。スクールアイドル。だってまだゼロだもん
今は、何も見えない。でも、ここで辞めてしまったら、0が1になるのか、10になるのか。0のままかもしれないけど、続けなければそれすらも分からない。自分のいる場所を知って初めて「続けたい」という思いが千歌の心に強く芽生えました。
あれだけ皆で練習して…
衣装も作って、PVも作って、頑張って頑張って…輝きたいって…
なのに0だったんだよ?悔しいじゃん!
千歌は自分の本当の気持ちを初めてありのままに吐き出します。「大会の結果は良くなかったけど、みんなで精一杯できる限り頑張ったから問題ない。」そう、ずっと言い続けて千歌の本音が初めて外に噴出しました。
差が凄いあるとか、昔とは違うとか…そんなのどうでもいい!悔しい!
今、他の有名なスクールアイドルと自分たちの差が歴然であること(自分が慰めのためにメンバーに言ったこと)とか、昔より今のラブライブの規模が大きくなったこと(ダイヤから言われたこと)とか、そんな気休めの言葉はどうでもいい。今あるのはただ「悔しい」という感情、そして「0」という事実だけ。
そんな千歌に対して梨子ちゃんは
良かった…
やっと素直になれたね
素直に自分の思いをぶつけてくれた千歌を優しく抱き締めました。彼女はずっと千歌が自分の気持ちを吐き出してくれるのを待っていたようです。2話では梨子ちゃんのことを救ったのが千歌でしたが、8話では梨子ちゃんが千歌に対して救いの手を差し伸べたことが印象的でした。
そして、千歌は「自分がこうあるべき」という思いを強く持っていたことを語ります。
だって私が泣いたら、皆落ち込むでしょ…?
今まで頑張ってきたのに…せっかくスクールアイドルやってくれたのに…だから…
自分が泣いたら、皆が悲しむ。千歌はAqoursを始めた発起人として、リーダーの自分はこうあるべきだというような自己規定をしていたのでした。
バカね。みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないの。自分で決めたのよ
梨子ちゃんは、「せっかくスクールアイドルやってくれた」と言う千歌に対して
みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないの。自分で決めたのよ
と、声を掛けてあげていました。千歌ちゃんが「スクールアイドルをやりませんか?」と声を掛けて回っていたのは確かですが、曜ちゃんが、梨子ちゃんが、ルビィちゃんが、花丸が、善子がスクールアイドルをやりたいと思ったのは、自らの意思に他なりません。
千歌は穂乃果のように誰かを引っ張る力は無いけど、同じ目線に立って自分も「輝きたい!!」と思わせてくれる力があると思いました。
【ラブライブ!サンシャイン!!】第2話「転校生をつかまえろ!」 感想ひとりごと - きりんログ
2話で梨子ちゃんが悩んでいた時、一緒に海に入って海の音を聞こうとしてくれた千歌を見て、自分も「輝きたい!!」と思わせてくれる力があることを千歌から感じました。今回、梨子ちゃんが「自分で決めた」と語っていたところからも、みんなを輝かせていたのは千歌ではなく、あくまでも一人ひとりが「輝きたい!!」と思う気持ちを持てるように助けてあげていただけだということが強く実感できました。
みんなで一緒に歩こ。一緒に
千歌ひとりだけではない。みんなで一緒に悩んで、みんなで一緒に苦しんで。そして、みんなで一緒に壁を乗り越えよう。梨子ちゃんの「一緒に」という言葉から、そんな想いが込められていることを強く感じました。
今から0を100にするのは無理だと思う
でも、もしかしたら1にすることは出来るかも
うん!!
6人が0からのリスタートを誓った瞬間、空から太陽が差してきました。1人では雨を止ますことが出来ない千歌でも、皆とならば一緒に太陽を輝かせることができる。彼女のリーダー像のようなものがあらためて垣間見えた瞬間でした。
ホワイトボードにスクールアイドルワールドの結果を貼り出す千歌。
自分たちが今「0」という場所にいることを強く自覚した上で「1」への歩みを踏み出す覚悟。Aqours6人の強い意思と新しい始まりを感じました。