きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

舞台『四月は君の嘘』感想~舞台の力、彩りの魔法~

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私の姑息な嘘が連れてきた君は、想像と違ってました……。
思ってたより暗くてひくつで意固地でしつこくて盗撮魔。
思ってたより声が低くて……
思ってたより、男らしい。

 

思ってた通り、優しい人でした

 

モーツァルトが言ってるよ。
「旅に出ろ」って。

 

旅の恥はかきすて。
思いきり恥かこうよ、2人で。

 

ここに居る誰もが、きっと私たちを忘れない。

君を連れてきた、春が来る。

 

舞台『四月は君の嘘』を観劇しました。

 

この舞台を見て強く感じたことがあります。それは「舞台の力」「生の人間がその場で表現する力」。舞台を見終わった時は、放心状態になっていました。

 

舞台のセットは白一色。ピアノやバイオリンを除けば特別なモノは他に何もありません。それなのに、舞台上には確かに「色」がありました。

 

役者の演技、言葉、そして演奏家が奏でる音楽。舞台に立つ人間がその場、その時限りで生み出す生の熱量。その全てが彩りとなって私の心に入り込んできました。

 

 

特に色を感じたシーンが、コンクールのシーン。舞台では、キャラクターを演じる役者が演奏の演技を続ける傍ら、プロの演奏家がピアノあるいはヴァイオリンで音楽を奏でていました。

 

役者と演奏家の表現が一体となってその場でひとつの表現になるさま。それは私の感情を激しく揺さぶり、視覚以上の色彩を感じさせてくれました。

 

―原作コミックスや台本を詠まれての、ストーリーの印象を教えてください。

音への言葉がとても美しく、カラフルで切ない内容がまるで音楽のように描かれていると思いました。

小林修子 ヴァイオリン演奏

舞台『四月は君の嘘』パンフレット

 

宮園かをり役のヴァイオリン演奏を担当した小林さんが原作を見て感じたもの。それが、舞台でも表現されていたように思います。美しさ、カラフル、切なさ―。言葉と動きと音楽が調和して、どの場面も映画のワンシーンのようにドラマチックに映りました。

 

演奏家の方がキャラクター性を意識して役者として音楽を演奏していたのも、キャストの演技、言葉と調和していた理由かもしれません。

 

また、舞台では「静寂」や「間」を大切にしていた印象を受けました。

 

なかなかピアノを弾き出せない公生や、かをり、椿、渡が言葉を失ってしまう無言の台詞こそが、この世界を生かしてくれると感じています。

三浦香 脚本

舞台『四月は君の嘘』パンフレット

 

音楽や言葉を大事にしている作品だからこそ、音楽が無い時には無音が際立ちますし、言葉が無い時には無言が際立ちます。そこにキャラクターの躊躇いやその瞬間の切なさが表現されていました。

 

舞台『四月は君の嘘』、心の中に残り続けるような素敵なお芝居でした。

 

P.S.音楽という表現について

舞台に限った話ではないので追記として。

 

四月は君の嘘』という作品はTVアニメ放送当時にリアルタイムで視聴していました。ですが、舞台を通して更にこの作品から考えさせられたものがあります。

 

それが、音楽という表現について。

 

わたしは誰かの心に住めたかな

宮園かをり

 

自らの最期が近いことを悟っていた宮園かをりは誰かの心に影響を与えることで自分の生がそこにあった事実を残そうとします。彼女にとってそれができる唯一の方法だったのが音楽でした。

 

僕らは誰かと出会った瞬間から 一人ではいられないんだ

有馬公生 

 

公生もこう語ります。孤独にピアノを弾いていた公生は誰かとの関わり合いの上に今の自分が独りではないことを知ります。それを教えてくれたのも音楽でした。

 

彼女たちが奏でる音楽は誰かとの関わり合いの先に生み出されるもの。今に至る誰かとの関わり合いの全てが感情となり音楽という形で表現されます。

 

何かここに音楽という表現が持つ不思議な魅力を感じました。(音楽に限らず表現や芸術全般にも当てはまることかもしれませんが。)

 

私はAqours1stライブの逢田梨香子さんのピアノ演奏とその時の伊波杏樹さんを初めとしたAqoursメンバーの歌声を思い出しました。

 

努力の先に彼女の演奏があったのは紛れもない事実ですが特に彼女の2日目の演奏にはAqoursの仲間や会場からの想いが少なからず乗っかっていたように感じました。

 

ミスタッチから復帰に至る2回目のトライで伊波杏樹さんを初めとしたAqoursメンバー全員の歌声にいつも以上に想いが乗っかっているように感じました。

 

「わたしは誰かの心に住めたかな」

「僕らは誰かと出会った瞬間から 一人ではいられないんだ」

 

誰かとの関わり合いの先に音楽や今や自分があることを知った2人の音楽家の言葉から、音楽という表現が持つ無限の可能性について考えさせられました。