【ラブライブ!サンシャイン!!2期】#3「虹」感想ひとりごと
アバン
えぇぇぇぇぇ!?
実は…学校説明会が一週間延期になるって…
雨の影響で道路の復旧に時間がかかるので、一週間後にした方がいいと…
2話「雨」のラストの引きからの続き。鞠莉の携帯に告げられたのは「悪い知らせ」でした。
どうしたの皆。その分もっと良いパフォーマンスになるよう頑張ればいいじゃん!
しかし、千歌は事の大きさどころか話の筋が分かっていない様子。
輝いてる。
何か見えたんだ。今何を言いたいか、何を思っているのか…
私が私に問いかけていた、答えが…
前回のラストで、昇り来る太陽を屋根から見た時に曲のイメージが閃いた千歌。思えば、この時から彼女は説明会で何を伝えたいのかという「問いかけ(君のこころは輝いてるかい?)」への答えが見えていたのでしょう。彼女は説明会の明確なビジョンが見えていたのだろうし、それゆえに説明会が遅れることすら、「もっと良いパフォーマンスを醸成できる準備期間が伸びた」とプラス方向に物事を捉えていたのでした。
しかし、事の本筋はそうではありません。
ですが…そんな時、その説明会が一週延びるという知らせが届きました
ラブライブ予備予選の開催日は変わりません
2つが開かれるのはさて、いつでしょう?
そんなの簡単だよ!…ん?
うわぁーーー!!
ようやく千歌にも事の本筋、事の重大さが理解できました。それと同時に屋根の上から落ちてくる千歌。ひとり高みを見ていた千歌が落ちてくることによって、ようやく現実としてどうその問題に向き合わなきゃという問題解決のお話が始まります。
同じ日曜だ!!
Aパート
遠く離れたラブライブの予選会場から学校説明会に向かう方法について作戦会議が始まります。
それで、学校は?
こっちの方角だけど、バスも電車も通ってないから…
舞台が「田舎の街」であるという『ラブライブ!サンシャイン!!』らしい問題。思えば、サンシャインになって廃校の危機がより大きい問題としてピックアップされているのも、同じ理由に起因していました。前回の雨による説明会の延期といい、限られた交通機関といい、世界が彼女たちに試練を与え続けます。
そんな中でも微笑ましかったシーンがこちら。
空でも飛ばなきゃ、無理ずらね
ならば…この堕天使の、翼で!!
おぉ、その手があった!堕天使ヨハネの翼で大空から会場入りずら~
嘘よ、嘘!常識で考えなさい!
あんた達!わざとやってるでしょー!!
善子のボケにあえて乗ってあげるルビィと花丸。それができるようになったのも彼女たちの仲が深まったことの証明なのだろうと思いながら、シリアスな場面のなかで思わず和んでしまいました。何だかこのワチャワチャ感、キャスト1年生組すら彷彿とさせます。
現実的に考えて、説明会とラブライブ予選、2つのステージを間に合わせる方法は…1つだけ!
予備予選出場番号1番で歌った後、すぐであればバスがありますわ
それに乗れれば、ギリギリですが説明会には間に合います
唯一、2つのステージを間に合わせる方法があると語るダイヤ。しかしその方法を取るために必要なことは、
…抽選!?
「運」に頼るというものでした。
運否天賦の責任重大なくじ引きという場面。手を挙げたのはまさかの善子でした。
この前とか突然何もないところで躓いて海落ちちゃうし
まるたちがいつもハッピーなのは善子ちゃんのおかげずら
不運じゃない!善子言うなー!普段は運をためてるのよ!
またまたルビまるに弄られます。ですが、
見てなさい、いざという時の私の力を…
善子の一言に目をキラリと輝かせる花丸。
ずら
すごい善子ちゃん!
善子ちゃんがパーで勝ったずら!
花丸のアシストによって善子が「パー」で勝利を収めます。花丸はなぜ善子のアシストをしたのでしょうか。それは、花丸は昔から善子のことを知っていて、彼女が輝く瞬間を何回も目にしてきたから。「いざという時の私の力を」と言い放った善子に、花丸が目を輝かせたことが何よりもの証拠でしょう。「善子ちゃんがパーで勝ったずら!」。善子が必ず「チョキ」を出すと知っていた花丸だからこそ取れたアシストでした。
さて、じゃんけんではない、ラブライブ予選の出場順の本当の勝負の結果は―
24番!!
不死…フェニックス!
喜んでる場合じゃないずら!
火を見るより明らかでした。それでも、喜んでいる善子の姿を見て良いなと思いました。不運続きの彼女ですが、その不運を不運として終わらせるのではなく、ポジティブに変換していたのは非常に好感が持てました。
「運」だけで突破できるほど今回の問題は甘く無いことが、抽選会の場面を見てあらためて認識されました。
でもこうなった以上、本気で考えないといけないね…
説明会か、ラブライブなのか…
どっちかを選べってこと…?
唯一残されていた「運」の力で切り抜けるという方法も断たれたAqours。あらためてここで「説明会」を取るか「ラブライブ」を取るかという「二者択一」の問題をメンバー全員が認識することとなりました。
そうなったら説明会ね 学校を見捨てる訳にはいかないもんね それはそうだけど…
今必要なのは、入学希望者を集めること!効果的なのは、ラブライブではありませんか? 沢山の人に見てもらえるし 注目されるし それもそうずら
それぞれがどちらを優先すべきなのかという議論を交わします。廃校を阻止するために、説明会への参加はマストであること。一方で、入学希望者を集めるために効果的なのはラブライブに出場することであること。
学校説明会に出るべきだという人は?
……。
じゃ、ラブライブに出るべきだと思う人?
……。
どっちかだよ?
決められないずら…
そうだよ。だって、どっちも大切だもん
どっちも…とても…
「説明会」か「ラブライブ」か。どちらがより大切だとお互いに意見を交わしたAqours。その実、明確に「どちらを選びますか?」という「二者択一」の決断を促された時には、メンバー全員が答えられませんでした。それもそのはず。9人全員が千歌が言うとおり「どちらも大切」だと思っているから。お互いに2つの選択肢を天秤に掛け合いながらも、全員が最後には振り切れない状態にある。それ程、今回の二者択一の問題は答えを容易には出せないものでした。
はぁ…何かいいアイディア出てこないかなぁーもう!
頭を抱える千歌。ですが、彼女には「二者択一」という選択肢は無く、まだどちらも選択する方法は無いか、思考を張り巡らせています。それもやはり「どちらも大切」だからという言葉に集約されるのだと思います。
気持ちはわかるけど、いつまでも悩んでる時間はないわ!
現実主義な梨子。この後も今取り得る「最善」の方法を取るべきだと語るシーンがありますが、彼女が藪から棒にこう言うではなく、「説明会」も「ラブライブ」も「どちらも大切」という思いを彼女自身も持ってるからこそ、最善の策を講じるべきだと語っているように見えました。それこそ、どちらかを取ろうとして、両方共倒れになっては元も子もありません。梨子も千歌と変わらず、心の中ではどちらかなんて選べないと思っているのです。次の掛け合いを見てもそれは明らか。
だよね…梨子ちゃんは、どっちがいいと思う?
ラブライブに出て輝きたい。輝いてみたいってスクールアイドル始めたけど…
それが出来たのも、学校があったから。浦の星があったから
先程の9人で議論を交わす場面では、「ラブライブ」に出場する方が入学希望者を集めるためには効果的だという意見もありましたが、そうではなく自らも「ラブライブに出て輝きたい」という想いも確かに梨子の中にはありました。一度大会に出場して破れて再び舞い込んできたチャンスだからこそ今回はラブライブに出場して輝きたい。彼女のこれまでの軌跡を振り返るならば、なぜピアノというもう一つのやりたいことに再び向き合うことができたのかというところを思い返すならば、やはりスクールアイドルとしてラブライブに出て輝きたいという想いは至極当然のことのように思えました。それはもちろん、誰よりもμ'sに憧れて自分たちだけの景色を見たいと願っていた千歌も気持ちは同じです。
しかし、やはり今スクールアイドルとしてラブライブを目指せるのも学校があったから、浦の星があったから。
それだけじゃないよ!
ラブライブがあったから!μ’sがいたから!
スクールアイドルがいたから!
1期13話の千歌の台詞。彼女にとっては、それらすべてのものが「今、輝けていること」の根源なのです。それは、もちろん「学校」「浦の星」も例外ではありません。
やっぱり選べない?
そりゃあね
千歌はやはり「どちらも大切」だから「選べない」という結論に帰結するのでした。でも今度は否定的に同じ結論が出た訳ではありません。自分たちの本当に大切なものを確認し合った上で建設的に結論に至りました。
それは、手を伸ばして笑い合う2人の姿を見てもそう思います。この仕草は1期3話を彷彿とさせますが、以前と違うのは手と手が届かなくても笑いあっていたところ。今はもう物理的に距離が離れていても、お互いに心の距離は無いからこそ、こうして笑い合えるのです。
ここで前もって話しておきますが、先程の「それが出来たのも、学校があったから。浦の星があったから」という1期13話を彷彿とさせる千歌の台詞や、今の1期2話を彷彿とさせる掛け合いなど、2期3話ではこれまでのAqoursの道程を感じさせるような台詞や行動が沢山登場します。これがひとつ3話のキーポイントになってくると思うので、詳しいことについては後になって再び触れていきたいと思います。
振り返りに戻ります。「どちらも大切」だから「選べない」という結論に帰結した千歌。そんな彼女を見た梨子は、「どちらも選ぶ」方法を千歌に提案します。自分の想いを伝えて、千歌の気持ちをしっかりと受け取った今の梨子だからこそ、その方法を千歌に伝えたのだと思いました。
もう一つだけ、方法はあるけど…
本当!?
私達は1人じゃない。9人いるってこと
梨子からどちらも選択する方法を提案してもらった千歌。その方法を他のメンバーにも提案します。
二つに分ける?
うん。5人と4人、二手に分かれて、ラブライブと説明会両方で歌う。それしかないんじゃないかな…
千歌も提案したものの自信は無い様子。部屋に太陽が差し込んでいないことも、この方法が正しいものではないということを暗示しているかのようです。
そこに問いかけをしたのが、Aqoursの他のメンバー。
それでAqoursと言えるの? ずら…
それに、5人で予選を突破できるか分からないデース
千歌も恐らくは同じことを思っていたことでしょう。2つに分けたらAqoursではなくなること。2つに分かれたら予選を突破できるか分からないこと。
実は1期11話でもAqours8人と梨子という風に9人では無いAqoursでラブライブのステージに立つという構図は存在していました。ただあの時と決定的に違うのは、今回は「説明会」と「ラブライブ」という2つの成すべきことの裏側に「廃校阻止」という1つの同じ目的が存在していること。一方で11話における「ラブライブ」と「ピアノ」という2つの成すべきことの裏側には2つの異なる目的(夢)が存在していました。11話の方は、別々の夢に向かっても想いはひとつだからと1つの「Aqours」として存在することができていました。ただし、今回の問題は本質的にそれとは異なり、廃校阻止という1つ目的に向かう中で2つの「Aqours」が存在することになります。それが今回の問題の新しさなのです。
嫌なのはわかるけど、じゃあ他に方法ある?
梨子のこの言葉に集約されていると思います。2つのAqoursに分かれることは9人全員が「嫌」だと思っているのです。でも他に方法はない。
本当に良かったのかな?
良くはない。けど最善の策を取るしかない…
私達はキセキは起こせないもの
この前のラブライブの予選の時も学校の統廃合の時も…
再び梨子は現実的に「最善の策」を取るしかないと語ります。繰り返しになりますが、彼女は決して冷徹な訳ではなく、ラブライブも学校も大切に思っているからこそどちらかを取るべきだと語っているのです。
私達はキセキは起こせないもの
高校2年生の少女が言うにはあまりにもペシミスティックな一言。しかし梨子は、
だから、その中で一番良いと思える方法で精一杯頑張る!
それが私達じゃないかって、思う…
そう…だね
自分たちがキセキを起こせないことを受け入れた上で、最善の方法を前向きに考える。結論としては変わらないけど、彼女は一歩前へと踏み出しました。思えば、1期でも彼女たちは0を受け入れた上で1へと進みましたし、2期1話や2話でもありのままの自分たちを受け入れた上でじゃあどうするのか、どうありたいのかという心の機微が繊細に描かれていました。
来週10月7日(土)から、「ラブライブ!サンシャイン!!」2期の放送開始です❣️
— 長崎行男 (@Kameari_Kanata) 2017年9月30日
浦の星女学院のスクールアイドル、Aqoursの奮闘が再び始まります。
これまでにも増して、丁寧、かつ、繊細に、9人の少女とその周辺の人々の心の機微が描かれてます。
そして、もちろん、心躍ります‼️ https://t.co/5019wLIyad
音響監督の長崎さんが言う通り、『ラブライブ!サンシャイン!!』は2期になって更に少女たちの心の機微が丁寧にかつ繊細に描かれている印象を受けます。
ここでもひとつ後ほど詳しく述べる3話のキーポイントについて触れておきます。「私達はキセキは起こせないもの」という梨子の台詞。そこには、「キセキ」についての捉え方の変化といった、2期を通した主題に関わるものが隠されていると考えています。こちらも詳しいことは後で述べさせていただきます。
振り返りに戻りまして、梨子が前に一歩踏み出したこと。それによって―
みっかーーん!
もやがかっていた千歌の視界も開けて、笑顔になった彼女の目の前には「道」が現れたのです。先に触れてしまいますが、この後ラブライブの予選にて披露する「MY舞☆TONIGHT」の歌詞にもある通り、
このセカイはいつも諦めない心に
答えじゃなく道を探す手掛かりをくれる
のです。ありのままの自分たちを受け入れて一歩前へと踏み出した梨子の「諦めない心」に呼応するように、世界は「道を探す手掛かり」を彼女たちに与えてくれました。
Bパート
ラブライブの予選が開かれる「狩野ドーム」でのシーン。
結局、全員で歌うのは無理だってことになったみたいだよ。学校説明会で、浦の星の子達もいないし… 今回は厳しいかもねー
みと姉も言う通り、Aqoursは全員で歌う道を諦めたようです。そして、「浦の星の子達もいない」。1期13話でも描かれていた通り、浦の星の生徒たちも10人目のAqoursであり、Aqoursに力を与えてくれる「みんな」の一部なのです。
ラブライブのステージを直前に控える千歌、梨子、曜、ルビィ、ダイヤ5人の場面。
ルビィ、ずっとずっと思ってたんだ
お姉ちゃん、絶対似合うのにって…
ルビィ…
2年間お姉ちゃんの帰りを待っていたルビィ。彼女たちが交わす言葉の中には2年間の想いが詰まっているように感じました。
いい妹さんですね、ダイヤさん
もちろん自慢の妹ですわ
「いい妹さんですね」という言葉を投げ掛けることが出来たのも程よい距離感の梨子らしくもあり、それに「もちろん自慢の妹ですわ」と微笑みながら答えるダイヤはもう完全にスクールアイドルでありルビィの姉としてのダイヤでした。
さぁ、行きますわよ!
この言葉は、「親愛なるお姉ちゃん、ようこそAqoursへ!」とかつてAqoursに迎えられた時の黒澤ダイヤではなく、Aqoursとして同じ道を歩んで行く黒澤ダイヤとしての言葉でした。
次のステージに向けて!
千歌たちはラブライブのステージに立ちます。しかし、そこには静かな会場とまばらな拍手しかありませんでした。それは、無理もありません。彼女たちの力の原動力である学校のみんながいないのですから。1期3話で言う「街の人の善意」も今回はみと姉やしま姉を除けば他に僅かだったのでしょう。
不安げに会場を見つめる千歌。そこに現れたのは―
勘違いしないように!
やっぱり、私達は一つじゃなきゃね!
ラブライブの会場に駆けつけた鞠莉、果南、花丸、善子の4人でした。今彼女たちは再び9人になり、ようやく「Aqours」としてステージに立つ準備が整います。
そして、披露される彼女たちの新曲。2期2話「雨の音」から着想を得て作られた「MY舞☆TONIGHT」が今花開きます。
ダイヤを彷彿とさせる琴の音色から始まり、和傘を彷彿とさせるクルクルと回転する天上のカット。演出が決まり過ぎていて冒頭から堪りません。
いま小さく燃えてるまだ小さな焔が一つになればキセキが生まれ
静寂。花丸が提案した「無」が音として取り入れられています。
そして、1人1人が胸の前に「焔」を形作ります。2話の寺でも揺らめいていた蝋燭の焔。1つ1つは小さい焔だけど、それが1つになればキセキが生まれる。正に会場に駆け付けた全員を合わせてようやくAqoursだと言わんばかりの歌詞です。
このセカイはいつも諦めない心に答えじゃなく
鞠莉のギターの振り。彼女が提案したロックは寺で着想を得たであろう和の要素と結びつくことによって「和ロック」という、また彼女たちが新しいジャンルへと挑戦するきっかけにもなりました。
このように「MY舞☆TONIGHT」では、「雨の音」の旋律が取り入れられているのはもちろんのこと、そこに至るまでに登場したAqoursメンバーの意見が楽曲の要素として取り入れられているのが良いですね。正にバラバラな個性が集まって1つのAqoursだということを象徴しているかのようです。
道を探す手掛かりをくれるから最後まで強気で行こう
「道」のくだりは先程も触れたので割愛します。
しかし、「このセカイはいつも諦めない心に答えじゃなく道を探す手掛かりをくれるから最後まで強気で行こう」と言い切れる強さ。これは、「未来の僕らは知ってるよ」に通じるものがあると思います。一度輝けることを知ったからこそ未来に希望があると確信を持って今それを言うことができる強さ。その強さが歌詞の中に取り入れられている「MY舞☆TONIGHT」は正に今のAqoursだからこそ歌える曲に他なりません。
踊れ踊れ熱くなるため人は生まれてきたの?
踊れ踊れきっとそうだよだから夢見て踊ろう
ダイヤとルビィのダブルセンター曲。1stシングルの『君のこころは輝いてるかい』が発売された時に見たPVでもそうですが、千歌と梨子のダブルセンターを見てAqoursの新しい可能性をかいま見た気がしたので再びダブルセンター曲をやってくれたのは感無量でした。(『想いよひとつになれ』の千歌と曜のダブルセンターもあります。)
MY舞☆TONIGHT(dancing tonight!) 最高の
MY舞☆TONIGHT(dancing tonight!) 今日にしよう
揺らめく焔を表したかのような振り付け。1つになった焔はキセキを生み出します。
会場から巻き起こる拍手と歓声。9人のAqoursになってようやく彼女たちは会場から声援を貰うことができました。
さぁ、行くよ!
ここからが勝負よ!
一度Aqoursとして自信を持って輝き切ることが出来た千歌たちは誰にも止めることはできません。
もっ、もしかして!
学校説明会に!?
間に合わせるつもり?!
5人で立とうとした舞台に4人が駆け付けてくれたことでキセキが生まれたように、今度は千歌、梨子、曜たちが再びキセキを起こそうと他のメンバーを引っ張ります。彼女たちは1人ではキセキは起こすことはできないけど、9人なら、お互いに手を引っ張りながら、キセキを生み出すができるのです。それが彼女たちAqoursのキセキの起こし方。
うん、うちのみかん畑だよ?
よっしゃぁー!!
小さな焔は1つではダメ。それはAqoursだけでなく、学校のみんなも巻き込むことで大きな焔になります。千歌が見たみかん畑はよしみの家のみかん畑。千歌の諦めない心は「答えじゃなく道を探す手掛かり」を引き寄せました。
浦の星に向かって走って「虹の郷」まで辿り着いたAqours。
他のメンバーと比べると体力が無い花丸ですが、今はルビィだけでなく善子も一緒に背中を押してくれました。1期4話のシーンも彷彿とさせます。
お嬢ちゃん達、乗ってくか~い?
運転士は果南。言わずもがな『HAPPY PARTY TRAIN』を彷彿とさせます。
…あ。
取れちゃった…
ブレーキの壊れたHAPPY PARTY TRAIN号改めみかん運搬用モノレールはノンストップでみかん畑を駆け抜けて浦の星へと向かいます。
運搬用モノレールを降りて浦の星に駆け足で向かうメンバー。説明会の時間は刻一刻と迫ります。途中で雨も降り出し、学校まであと一歩のところで自分たちにはキセキは起こせないのかと不安の声を挙げます。
時間がありませんわ!
間に合うかな…
あと少しなのに…
キセキは起こるのかな
自分たちがキセキを起こせないことを一度受け入れた梨子は、最善の策を講じるのではなく2つの選択肢の両方を取る道に進んだ時に、やはりキセキの存在を確信することはできません。ラブライブのステージが終わった時には自信を持って駆け出した梨子ですが、最後の最後でキセキの存在を信じ切ることができませんでした。
そんな梨子に対して、千歌は自らが思う「キセキのあり方」について語ります。
私、思うんだ
キセキを最初から起こそうなんて人、いないと思う
千歌が「キセキのあり方」について語ることができた理由。それは、彼女が常に「キセキ」に対して向き合ってきたから。
2期1話では、精一杯足掻いてキセキを起こそうと、鉄棒の上から誓いました。
2話では、手立てが無く不安になる中鞠莉の働きもあり廃校阻止の具体的な条件が定まることで、可能性が繋がった以上キセキが起こることを信じようと、階段の上で成長した姿でキセキを口にしていました。
3話では、説明会とラブライブという廃校阻止の手立てが危うくなり可能性が狭まりつつある中どちらも大切だからこそ、自分たちにはキセキは起こせないことを受け入れた上で最善の方法を考えることが大切なのではないか、という梨子の言葉を一段高い道の上から千歌は聞き届けました。
このように彼女は目には見えないキセキを追い求めながら、キセキを阻害しようとする困難に苛まれながら、常にキセキに対して向き合ってきました。Aqoursの中で一番キセキの側にいた千歌。彼女がキセキと接する場面では、常に他のメンバーより一段高い場所にいたことも何か暗示的です。
だからこそ彼女は、他のメンバーがキセキの存在を信じられなくなっている中でも「キセキのあり方」について語ることができたのではないでしょうか。
そして、千歌はキセキについて次のように語ります―
ただ一生懸命、夢中になって、何かをしようとしている
なんとかしたい、何かを変えたい!それだけのことかもしれない!
だから…
起こせるよキセキ!私達にも!
「キセキ」とは、「最初から起こそう」と思うものではない。ただ、「一生懸命、夢中になって、何とかしたい、何かを変えたいと思った行動の結果」なのだと。「キセキ」を起こすために走り出した彼女は、「キセキ」は決して「奇跡」という大それたものではなく、何かを成し遂げようと精一杯行動した結果の「軌跡」として生まれるものだという結論に至ることができました。「キセキ」は自分たちの前ではなく、常に後ろに出来上がるものであると。
だからこそ、自分たちにもキセキは起こせると彼女は口にします。そして―
起こるかな…キセキ
起こるよ!
だって…だって!
虹がかかったもん!
「虹」すなわち「輝跡」
雨が通った後に虹がかかるように、彼女たちが今未来を変えたいと思い全力で駆け抜けた轍が輝きの軌跡を作り出す。
それこそが、彼女たちが起こそうとしていた「キセキ」の正体だったのではないでしょうか。
そして、彼女たちは今輝きを問いかける歌を歌います―
今…
みらい、変えてみたくなったよ!
だって僕たちはまだ夢に気づいたばかり
「未来を変えてみたいと思う姿勢」。それこそがキセキを生み出すためには必要なもの。
ラブライブのステージで9人揃うことで初めてキセキを生み出したように、彼女たちは手を取り合うことでのみキセキを起こすことができます。
『ラブライブ!』の2期12話「ラストライブ」を彷彿とさせる学校のみんなが用意してくれた「君ここ」の衣装。「みんなで叶える物語」は続いていきます。
1stのPVでも登場したシャボン玉は学校のみんなが作ったもの。「9人の歌」から「みんなの歌」に変わった瞬間で、また曲に新しいコンテキストが付与された瞬間でもあります。
今…
みらい、変わりはじめたかも!
そうだ僕たちはまだ夢に気づいたばかり
「今みらい変えてみたくなったよ」と歌い始めた彼女たちは、「今みらい変わりはじめたかも」と、最後に歌います。その過程こそが「輝跡」なのです。
キセキが起こったことを祝福するかのようにステージ上には虹が、学校のみんなが飛ばしてくれたシャボンは虹色に、周りには虹色のフレアが映し出されます。虹は全て太陽の光(サンシャイン)の働きによって生まれるもの。
どっちにするかなんて選べないし、どっちも叶えたいんだよ!
キセキを起こした千歌は語ります。「学校」も「ラブライブ」もどちらも大切で、どちらも叶えたいものだと。どちらかを選んでいたら、決してキセキは起きなかったでしょう。
だから行くよ!
諦めず心が、輝く方へ!
どちらも大切だからこそ、「変えたい」「輝きたい」と心が向かう方向へと彼女たちは諦めず手を伸ばし、更なる大きなキセキを成し遂げるために彼女たちは9人で同じ方向を目指すのです。
『ラブライブ!サンシャイン!!』における「キセキ」について
『ラブライブ!サンシャイン!!』2期第3話『虹』。ラブライブの大会と学校説明会という本作を象徴する2つの出来事を1話に詰め込むという盛り沢山な内容でした。
特にサンシャインにおいて2つの要素は「廃校阻止」と密接に結びついたものであります。前作では学校説明会の成功で廃校阻止が叶いましたが、本作では廃校問題というものはより大きくシリアスな問題として描かれており、学校説明会と合わせてラブライブの大会に出場して学校のことを知ってもらうという行動はとても重要なものとして存在する訳です。
それゆえに、1話の中で両方を取り上げてどちらも達成する話を描くことは、廃校を阻止することがいかに難しく、それ自体が「キセキ」を起こすことと同等なものであると訴えている訳です。
2期で度々登場する「キセキ」というキーワード。この「キセキ」というキーワードは『ラブライブ!』でも度々登場してきましたが、『ラブライブ!サンシャイン!!』ではとりわけこの「キセキ」との向き合い方が重要になってくるのではないでしょうか。
ここでもひとつ後ほど詳しく述べる3話のキーポイントについて触れておきます。「私達はキセキは起こせないもの」という梨子の台詞。そこには、「キセキ」についての捉え方の変化といった、2期を通した主題に関わるものが隠されていると考えています。
文中でも少し触れましたが、千歌はキセキについて2期1話~3話に至るまで思考を張り巡らせて来ました。
2期1話では、精一杯足掻いてキセキを起こそうと、鉄棒の上から誓いました。
2話では、手立てが無く不安になる中鞠莉の働きもあり廃校阻止の具体的な条件が定まることで、可能性が繋がった以上キセキが起こることを信じようと、階段の上で成長した姿でキセキを口にしていました。
3話では、説明会とラブライブという廃校阻止の手立てが危うくなり可能性が狭まりつつある中どちらも大切だからこそ、自分たちにはキセキは起こせないことを受け入れた上で最善の方法を考えることが大切なのではないか、という梨子の言葉を一段高い道の上から千歌は聞き届けました。
「キセキ」とは、「最初から起こそう」と思うものではない。ただ、「一生懸命、夢中になって、何とかしたい、何かを変えたいと思った行動の結果」なのだと。
彼女は壁にぶつかり乗り越えようと必死になる中で、自らを成長させ「キセキ」についての捉え方を変化させてきました。もちろんその中には、彼女だけでなく、梨子の考えるキセキの受け止め方や、Aqoursの他のメンバーの行動が無ければ見つからなかったキセキの捉え方も存在しています。
彼女たちがなぜキセキを成し遂げられたのかは劇中で描かれている通りですが、単純に彼女たちが「キセキ」と向き合って現状を変えたいと思い夢中になって行動したからこそキセキは現実のものとなりました。
何かを変えたいと思い行動した結果としてのキセキ。
思えば千歌は1期の1話から「奇跡だよ!」という言葉を使っていましたが、あの時の「偶然」という意味が強いキセキとは一変した意味でキセキを捉えているように思います。
実はこのキセキの捉え方は『青空Jumping Heart』でも歌われていることが曲を思い出してみると分かります。
変えたいと思う気持ちがきっとだいじだよ
物語の重要なコンテキストが既に発表済みの曲の中にも込められているというのは『ラブライブ!』でも伝統的だった訳ですが、『ラブライブ!サンシャイン!!』でもそれはご多分に漏れず既に1期のOPとして歌われていた曲の中に込められていた訳です。もちちろん3話ラストの説明会でも歌われた君ここの中にもそのエッセンスが込められていることは文中でも触れた通りです。
実はこの結果としてのキセキの概念。『ラブライブ!』でも機会は多くは無いものの楽曲や穂乃果の言葉の中では謳われて来たものでした。楽曲で言うならば、1期のOPでもある『僕らは今のなかで』。
それなら起こるよ奇跡は必然
「みんなで走った」結果としてキセキは必然的に起こるものだと歌われています。そして、穂乃果の言葉。
ラブライブで優勝できたのは、奇跡じゃなくて、スクールアイドルとして歌うことに夢中になれたから。そして、何よりも、楽しかったから!
ラブライブで優勝できたのは「奇跡」ではなくスクールアイドルとして歌うことに夢中になれたこと、楽しかったことの結果としての「軌跡」であったと。
このように『ラブライブ!』と『ラブライブ!サンシャイン!!』という輝き方を異にするスクールアイドルたちの物語ですが、枝分かれした木が幹や根っこの部分では同じであるように、ラブライブシリーズを通して伝えようとしている「キセキ」の本質自体は大差は無いように思います。ただし、その本質に至るプロセスは全く以って違うことはあらためて説明する必要は無いでしょう。
さて、『ラブライブ!サンシャイン!!』に向けた期待として、その「キセキ」や「輝き」に対してどれだけより深く突き詰めて描き出してくれるかが私個人としてはあります。
そのためには、キャラクターがどれだけ自分たちの内面に向き合っていく話を描いていけるかが鍵を握ってくると思います。端的に言うならば「内省」「内観」と言い換えてもいいでしょう。
その自分の内側を省みるためのきっかけのひとつになり得るのが「廃校問題」やまだ見ぬ「シリアス展開」だと思っています。
実際サンシャインは1期でもキャラクター同士が暗い天気の中で自分たちの心情について吐露し合うシーンや、シリアスな展開というものが用意されていました。その中で彼女たちは自分たちの行動や考えを省みて一歩づつ歩みを進めていきました。そして文中でも紹介したように2期では少女たちの心の機微というものがより繊細にかつ丁寧に描かれると制作陣によって語られています。
「キセキ」や「輝き」について向き合う少女たちの心の機微が描かれるかもしれないという期待。それがより強くなったのは思えば2期1話の冒頭の千歌の台詞だったのかもしれません。
輝きって、いったいどこから来るんだろう
夢を見ていた千歌が語るモノローグですが、この輝きがどこから来るものなのか探求する心の働きこそが「真理」や「本質」と呼ばれるものへの旅路なのかもしれません。
2期では3話まで通して「キセキとは」について描かれていましたが、本質的に「キセキ」と「輝き」は関係性の強い概念同士のように思え、2期以降では更に「輝き」という概念を深く抉り出して行くものだと仮定するのならば「キセキ」の有り様を描き出したことは「輝きって、いったいどこから来るんだろう」の答えへと一歩近づいたことになるのかもしれません。
Aqoursの「キセキ」の起こし方
3話ではAqoursにとってのキセキの捉え方の変化はもちろんのこと、彼女たちなりのキセキの起こし方も描かれていました。
彼女たちなりのキセキの起こし方、それは9人全員が互いに補い合いながら持てる力の全てを出し切ること。
3話を振り返ってみると9人全員がいなければキセキは成し遂げられなかったことが分かるかと思います。ラブライブのステージでは学校から駆け付けた4人がいなければ成功はしなかったでしょうし、その後に2年生組がキセキを信じて説明会への道を切り開いてくれなければ説明会にAqoursは間に合わなかったことでしょう。
それだけに留まらず、細かいところを挙げれば、梨子のキセキを起こせないことを一度受け入れる覚悟は千歌に道を探す手掛かりを与えましたし、学校へと向かう道中花丸の背中を支えるルビィと善子、互いに手を取り合いながら駆け抜けていく千歌と梨子と曜など、3話だけでも9人全員が互いに補い合う姿が描かれておりました。
そして、正確に言うならば9人だけでなく、よしみやむつきをはじめとした学校のみんなの助け、みと姉やしま姉といった町の人たちの応援が、彼女たちの背中を押していたことは間違いないでしょう。そういう意味でいうならば、Aqoursのキセキの起こし方は9人が互いに補い合うだけでなく、彼女たちと一緒に走る10人目のAqoursも含めた上でキセキを起こしたと言えるのかもしれません。
さらに9人がキセキを起こすためには、持てる力の全てを出し切ることが必要不可欠だったように思います。
「それが出来たのも、学校があったから。浦の星があったから」という1期13話を彷彿とさせる千歌の台詞や、今の1期2話を彷彿とさせる掛け合いなど、2期3話ではこれまでのAqoursの道程を感じさせるような台詞や行動が沢山登場します。
3話を振り返ってみると、上記の1期13話を彷彿とさせる「学校があったから。浦の星があったから」という千歌の台詞や、2話の千歌と梨子が手を伸ばし合う場面、それだけに留まらず、9話の善子が堕天龍鳳凰縛をルビィたちにかける場面や、4話の花丸を支えるルビィたちという構図、更にはHAPPY PARTY TRAINを彷彿とさせるみかん畑を疾走する場面など、わざと過ぎるくらいにこれまで彼女たちが歩んできた道程を思い起こさせるようなシーンが沢山あったように思います。
それを私は、彼女たちがキセキを起こすためには全てを注ぎ込む必要があるのだと汲み取りました。そして劇中でも言われていた通りに言い換えるならば、彼女たちの1期も含めた全ての結果こそがキセキに繋がっている訳です。千歌と梨子の手が触れ合えなくても笑い合えていたところや、花丸を支えていたのがルビィだけでなく善子もいたというのは、彼女たちの成長も込みでキセキを引き寄せたと言ってもいいでしょう。
このように、彼女たちAqoursは9人あるいは「みんな」で、全員が互いに成長し合いながら補い合い、持てる力の全てを出し切ることで初めてキセキを起こすことができるのだと、あらためて定義することができます。
2期における廃校問題
『ラブライブ!サンシャイン!!』2期では廃校問題が全体を通して大きなテーマとして描かれるだろうということは3話までを見ても明らかかと思います。
実際に2期の結末として廃校となるのか廃校は阻止されるのかといったところについては焦らずとも今後サンシャインが描き出すストーリーに委ねたいと思っていますが、3話の展開然り大きな山場になりそうだった説明会すら駆け足気味で描かれていたという印象を受けました。
ともするならば、説明会はあくまでも大きな廃校阻止ストーリーを歩んでいく上での序盤も序盤の最初の通過点となるイベントなのかもしれませんし、序・破・急で言うところの序にあたる部分なのかもしれません。
次回予告
次回!「ダイヤさんと呼ばないで」