ラブライブ!サンシャイン‼︎The School Idol Movie Over the Rainbow - 新しい輝きを求める物語 -
※本記事はネタバレを含むため、まだ劇場場本編を見ていない方は映画を見てからご覧いただくことを強くオススメします。
ありがとう、ラブライブ!サンシャイン‼︎
劇場版の感想を書き始める前に、まずは酒井監督、制作スタッフ、並びにキャストへの感謝の気持ちを言葉にしたいと思います。
劇場版は、最高の形で物語を描き切ってくれました。
”最高の形で”とは、『ラブライブ!サンシャイン!!』らしい形でということ。
どんなに失敗しても目覚めたら違う朝、というのが『ラブライブ!サンシャイン!!』の”心”だと思うんです。
悲しいけれど明日、また朝日が昇ったら違う希望があるかもしれない。そんな曖昧で確かなものに希望が持てるーそれが『ラブライブ!サンシャイン!!』ではないかと思っています。
本作のタイトルも”サンシャイン”、太陽ですから。
監督・酒井和男
『ラブライブ!サンシャイン!!』らしさは、「明日への希望」にあると言ってもいいでしょう。
「明日もきっと、輝いている。」
「未来」とは言わずに、彼女たちから見て一番近い「明日」に希望を持つ姿。それは、実にAqoursらしい等身大の姿。
この劇場版でも、失敗をして、もがき悩みながらも、自分たちの力で答えを見つけ、最後には明日へと希望を持ち進んでいく少女たちの姿が描かれていました。
「進む、Aqoursらしく」
Aqoursらしさ。「何度も立ち上がる」姿は、Aqoursの”はじまりの曲”にも表れていた通り。
彼女たちは、沈んではまた昇る「太陽」のように、その名に相応しい輝き方で劇場版でも輝いてくれました。
- ありがとう、ラブライブ!サンシャイン‼︎
- The School Idol Movieであること
- The School Idol Movie Over the Rainbowであること
- 新しい輝きを求める物語
- 新しい輝きへと向かう「飛べる」力
- Saint Snowの輝き
- それぞれの成長と羽ばたき
- 旅立ちの歌はいつも優しくて
- 最後に
The School Idol Movieであること
『ラブライブ!サンシャイン!!』でも、「The School Idol Movie」の名は伊達ではありませんでした。
「最高のライブエンターテインメント・ムービー」
大スクリーンで冒頭から歌って踊る姿は、まさにスクールアイドルらしさ全開。
イタリアを駆け回りながら歌ったり、「沼津の石段に似てるから」という理由でスペイン広場をステージにして踊る姿は、まさに劇場版だからこそ出来たことでしょう。
理屈抜きで、見てて心が躍るシーンが沢山ありました。
そして、ラストシーン。
Aqoursに憧れ、自らもスクールアイドルになりたいと語る少女の声。
たとえAqoursが9人でなくなっても、彼女たちの残した輝きは、次の世代へと受け継がれていく。
「形を変えて永遠に輝き続ける」スクールアイドルの物語らしい幕引きが描かれていました。
最初から最後まで「The School Idol Movie」を貫く物語は、最高の一言です。
The School Idol Movie Over the Rainbowであること
本作は、「The School Idol Movie」でありながらも、それを観る私たちの背中をも押してくれるような映画でした。
それが、「The School Idol Movie Over the Rainbow」たる所以だとも思っています。
「未来へはばたく全ての人に贈る―」
沼津で行われた初日舞台挨拶で、高槻さんが「この映画は、みんなの映画」だと言ってました。
この映画の主役は、スクールアイドルたちでありながら、同時に「私たちの物語」でもあるのだと。
『ラブライブ!』というのは”みんないっしょに輝こう”というのが1つのテーマです。
監督・酒井和男
この「みんないっしょに輝こう」は、劇場版でも通底されていました。
特に印象的だったのが、先にも挙げた海岸でのラストシーン。
Aqoursのファンの少女たちが聖地沼津の海岸で「輝きたい!!」と叫ぶのですが、彼女たちは顔も姿も描かれておらず、声だけでのみ登場します。
私は、このシーンを見て、『ラブライブ!』の京極監督の言葉を思い出しました。
「この現実世界でも、やろうと飛び出しちゃえば、スクールアイドルになれる。なんだってできるんだ!」ということを観た人に伝えたかった
顔も姿も見えない少女は、Aqoursが繋いだスクールアイドルの襷(たすき)を受け継ぐ少女。
そして、Aqoursからエールを受け取った10人目の私たち自身でもあるのだと。
私は劇場版の最後を、そう受け取りました。
新しい輝きを求める物語
以前、畑先生は、劇場版を経た『ラブライブ!』を「永遠に輝き続ける青春の物語」と表現されていました。
私は、『ラブライブ!サンシャイン!!』を劇場版を経て「新しい輝きを求める物語」と表現したいです。
千歌たちは、新しい輝きを求めるために「変わっていく現実」があることを受け入れました。
冒頭から終盤まで、開かれたままだった浦の星女学院の門。
それは、彼女たちが、変化を受け入れられなかったことの暗示だったのかもしれません。
「6人でAqoursを続けていかなくちゃいけない」
言葉では分かっていても、心の中ではその現実を受け入れられなかった。
物語の終盤、千歌たちは、浦女に戻ることなく門を閉める決意を固めます。
それは、彼女たちが答えに気づくことができたから。
「今までやってきたことは全部残ってる、何ひとつ消えたりしない」
空も、海も、人も、学校も変わっていく。でも、「変わらないもの」が確かに胸の中にある。
これまで積み重ねてきたAqoursとしての時間。3年生と過ごした季節。それは「軌跡」として、「輝き」として、「自分の一部」になって残っている。
新しい輝きを求める旅路は、決してゼロからのスタートではなく、これまでの光る軌跡の延長線上にある。
過去から伸びる軌跡は、未来の新しい輝きと繋がって、やがて大きな虹の軌跡を描いていく。
それこそが、『ラブライブ!サンシャイン!!』が最後に伝えたかった、旅立ちに際してもなお「明日への希望」が確かにあるという、寛大なメッセージではないでしょうか。
新しい輝きへと向かう「飛べる」力
「これまでの軌跡」が、新しい輝きへと向かう「飛べる」力になることも、劇場版では描かれていました。
一番身近な形でそれを示してくれたのが、善子。
彼女は、これまでAqoursとして、自分の好きを隠すことなく見せてきました。
その体験があったからこそ、彼女は新しい学校でもすぐに友達を作ることができたのではないでしょうか。
そして、新しい輝きへと向かう時には、新しい「みんな」が手を差し伸べてくれることも描かれていました。
スクールアイドル部の素晴らしさを伝えようと真剣になる千歌たちの姿を見て、新しい学校の生徒たちがステージの準備を手伝ってくれました。
さらに、「自分たちも部活を頑張らなくちゃ」とも言ってくれました。
これまでのAqoursとしてやってきたこと。
それが今でも彼女たちの中で息づいてるからこそ、また新しい「みんなで叶える物語」は起こるのでしょうし、別の少女たちの心に輝きを灯すのでしょう。
Saint Snowの輝き
劇場版では、Aqoursの輝きに留まらず、Saint Snowの輝きも描かれていました。
ラブライブ!大会の勝者ではないスクールアイドルの道。
それが描かれていたようで、とても嬉しくありました。
Aqoursに入ることが、理亞が求める夢ではない。
ダイヤや上級生にすべてを頼らず、自分の意思で決めることを誓ったルビィ。
「これまでの軌跡」が、新しい輝きへと向かう「飛べる」力になる。
彼女は、身をもってそれを知っていたからこそ、理亞に手を差し伸べた。
「ラブライブ!は遊びじゃない」
姉と決勝の舞台で歌い、優勝すること。
その軌跡が、理亞の新しい夢への架け橋になる。
Saint Snowとしての夢を叶えた二人の歌は、自分たちだけの輝きを掴んだ歌のように聞こえました。
そして、訪れるSaint Snow色の羽根。
それは、二人が自分たちだけの輝きを見つけたことの証明なのでしょう。
それぞれの成長と羽ばたき
Aqoursの1年生から3年生は悩みながらも、それぞれ成長を遂げることで、新しい道へと羽ばたく姿を見せてくれました。
彼女たちの成長には、「自分の意思で決める」という共通点があります。
印象的だったのが、大人の意思に晒される3年生の鞠莉。
劇場版では、母による縁談が持ちかけられていました。
『ラブライブ!』の劇場版同様、大人の意思が介在し始めます。
それは、3年生が高校生活を終え、大人へと進む岐路に立たされているということの表れでもあります。
大会で優勝しても学校を救えなかったスクールアイドルは無意味だった。
大人から見れば、そう捉えられるのかもしれません。
それでも鞠莉は、自らの意思で「自由な選択」をすることを誓いました。
それは、果南とダイヤに出会って知った「自らの意思で未来を決める」という選択肢。
自由なスクールアイドルらしい選択肢。
彼女は、スクールアイドルは人を感動させられる素晴らしいものだと、身をもって証明しました。これまでやってきたことは決して無駄では無かったのだと。
鞠莉の母も、自分の意思で選択できるようになった娘の成長が嬉しかったのか、静かに笑みを浮かべていました。
言葉なく去るところは、この母あっての娘だなとも思い、感慨深くもなりました。
彼女は卒業してもなお、Aqoursで培った自由な飛び方で未来へと羽ばたいていく。
未来へと続く道は、決して真っ直ぐではないかもしれませんが、希望に溢れる旅路であることが伺えた瞬間でもあり、胸がいっぱいになりました。
旅立ちの歌はいつも優しくて
『ラブライブ!』に続き、『ラブライブ !サンシャイン‼︎』でも、最後の旅立ちの歌は優しくありました。
それは、彼女たちが旅立つこととは何かを悟ったからでしょうか。
だからこそ、優しい歌を歌っているようにも聞こえて、一層切ない気持ちになりました。
『僕らの走ってきた道は…』から始まり『Next SPARKLING!!』で終わる。
劇場版の物語が、TVアニメの延長線上にあり、これかれもAqoursの未来は続いていくことが感じられます。
『Next SPARKLING!!』
劇場版のテーマ「新しい輝き」をタイトルに冠した曲。
Aqoursの気持ち、3年生への気持ち、私たちへの気持ちが乗せられた歌のようにも聞こえて、まさに色々な想いが汲み取れる劇場版の最後にふさわしい曲だと思いました。
一つ一つの思い出たちが大事なんだ
ずっときれいな僕らの宝物だよ
『Next SPARKLING!!』
私は冒頭の一節を聴いて、μ'sの『MOMENT RING』を思い出しました。
瞬間をリングへと閉じ込めて
いつも眺めてたい どの指がいいかな
きれいだね…!
キラキラの
毎日をずっと忘れずいてよ
そして、劇場版を見たからこそ、μ'sの想いも鮮明になったような気がします。
これまでの思い出は、形を伴わないけど、心の中にはちゃんと残っている。
会いたくなったら目を閉じて みんなを呼んでみて
そしたら聞こえるよ この歌が
ほら次は どこ一緒に行こう
『Next SPARKLING!!』
そのことを思い出せば、決してひとりじゃないし、ゼロでもない。
彼女たちの音楽は、永遠に胸に残っていく。
明日は今日より夢に近いはずだよ
『Next SPARKLING!!』
まさに「明日への希望」を謳う、Aqoursらしいメッセージ。
Aqoursは、旅立ちに際してもなお、私たちの心に明かりを灯す言葉を届けてくれたのでした。
最後に
劇場版は、最高の形で物語を描き切ってくれました。
私は冒頭でそう言いました。
しかし、この劇場版はAqoursの青春の一部を切り取っただけ。
そのことは、映画を見た人なら誰でも分かるでしょう。
彼女たちの道は、これからもずっと続いていきます。
私はこの物語を見て、彼女たちが過ごした沼津に行きたくなりました。
酒井監督がパンフレットで言っていたように、角を曲がれば千歌たちがいるような気がする。
この劇場版、これまでの物語、歌、ライブ、そしてこの街のこと。
全部が私たちのなかで大事に残っている。
またいつでも思い出せば、キラキラと輝く季節が蘇ってくる。
その思い出と共に、また明日へと希望を抱いて一歩づつ歩いていく。
これからも、この空の向こうで、新しい輝きを追い駆け続けながら進む、全てのスクールアイドルに思いを馳せながら、今日という日を大切に過ごしていきたいと思います。
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