TALK ABOUT SUNSHINE !! 3 -【2期直前】8つのキーワードで振り返る『ラブライブ!サンシャイン!!』-
前回は、「『ラブライブ!サンシャイン!!TVアニメオフィシャルBOOK』で知った好きなものに通底すること」と題しまして、自分のことで誠に恐縮ながら、私自身が好きなものについて、その全てに通底する本質が『ラブライブ!サンシャイン!!TVアニメオフィシャルBOOK』から見えた、というお話をさせていただきました。
そして今回は、『ラブライブ!サンシャイン!!』TVアニメ2期の放送直前ということで、TVアニメ1期を振り返る内容にしたいと思います。
しかし、ただ振り返っても面白くない。ということで、オフィシャルファンブックのとある1ページに書かれている8つのキーワードを軸として振り返りをしていければなと思っております。
さて、オフィシャルファンブックをお持ちの方がいらっしゃいましたら18ページ、19ページの見開きを開いてください。STORYの章の最初のページとしてあらすじと各話のシーンが散りばめられている何気ないページです。普通に見ていたら読み飛ばしてしまいそうなページでしたが、私はこのページを開いた瞬間ここで読む手が止まってしまいました。
ページに散りばめられているAqoursの物語を語る上で欠かせない「キーワード」たち。奇跡-あなた-というように漢字にルビが振ってあり、それが何か意味を持っているように思えてしばらくその意味について考えふけってしまったのです。
実際にラブライブには作品を語る上で欠かせない重要なキーワードというものが存在しています。それは、歌詞の中に込められていることが多く、無印の時では「未来」や「夢」などがそれに当たりました。サンシャインにおいても同様に、作品を語る上で欠かせないキーワードが少なからず存在しています。ファンブックに載っていたのは、その中でも特に重要なキーワードであるように私には思えました。
この場で、ひとつひとつのキーワードについて想像を膨らませながら、『ラブライブ!サンシャイン!!』1期を振り返ってみたいと思います。その中で『ラブライブ!』へと思いを馳せた箇所もありますが、あくまでもサンシャインはラブライブから地続きの世界だということを思うならば、それも必然だったのかなと思いました。
奇跡-あなた-
この言葉が何を指しているかは、シンプルですよね。
「奇跡だよ!」
サンシャインの1話で、スクールアイドルを夢見る高海千歌が、偶然出会った作曲のできる少女・桜内梨子。その彼女が学校に転校して来た時に千歌はこう叫びました。
「あなた」というルビは、疑う余地なく「桜内梨子」を指していますよね。
しかし、「奇跡」をもっと大きい解釈で捉えてみると、サンシャインには沢山の奇跡がありました。
「普通なわたしの日常に、突然訪れた奇跡―」
サンシャイン1期はまさにこの千歌の台詞から始まります。ここで言う奇跡とは「μ's」であり「スクールアイドル」「ラブライブ!」のこと。何かに夢中になりたいと思ってきた普通星に生まれた普通星人の千歌が出逢えたはじめて夢中になれたもの。それを千歌は「奇跡」と呼びました。
きせき【奇跡・奇蹟】
常識では起こるとは考えられないような、不思議な出来事。特に、神などが示す思いがけない力の働き。また、それが起こった場所。
奇跡の意味をGoogle先生に聞いてみると「常識では起こるとは考えられないような、不思議な出来事」とあります。千歌にとっての常識は「アタリマエの日常」でした。その中で彼女が出くわした「不思議な出来事」。それが、梨子との出逢いであり、μ'sとの出逢いでありました。「神などが示す思いがけない力の働き」ともありますが、μ'sが「9人の歌の女神」という意味を持つだけに、これも的を得ていますね(言葉遊び)。
また、サンシャイン3話で「Aqours」というグループ名を決める時には、「奇跡」の存在を知っている千歌だからこそ言えた発言もありました。
千歌は「なんかよくない?グループ名に」と提案します。「名前決めようとしている時に、この名前に出会った。それって凄く大切なんじゃないかな!」と。その言葉を聞いて、千歌らしいなと思いました。 思えば、彼女がスクールアイドルに憧れを抱くようになったのは、秋葉原で偶然見つけたμ'sの映像であるわけです。それが無ければ今の千歌はありません。そして、海岸で出会った梨子ちゃんとも浦の星で再会することが出来た。彼女が「奇跡」の存在を信じられるのは当然のことであり、それゆえに偶然の出会いの大切さを一番知っている彼女だからこそ、一見突拍子もなく見える名前の決め方ができた。私はそう思いました。
【ラブライブ!サンシャイン!!】第3話「ファーストステップ」 感想ひとりごと - きりんログ
もう少し視野を拡げて、『ラブライブ!』における「奇跡」について振り返ってみましょう。
「無謀な夢から始まって」
「奇跡のようにすべてが繋がって」
μ'sファイナルシングル『MOMENT RING』の一節です。μ'sは「伝説開幕」という大胆な宣誓をしてから厳しい季節がありながらも最後は東京ドームという大舞台に立つという大きな夢を成し遂げました。私たちが「奇跡」の存在を確信した瞬間でもあります。
「KiRa-KiRA Sensation!」や「それは僕たちの奇跡」でも「奇跡」という言葉が使われています。
ラブライブ!決勝を飾った「KiRa-KiRA Sensation!」で印象的な歌詞がもう一つ。「奇跡それは今さここなんだ」という歌詞。TVアニメ2期OPの「それは僕たちの奇跡」の「それ」が指し示していたものが、1期OPの「僕らは今のなかで」の「今」に当たると思いカタルシスを覚えた。
みんなで叶える物語の軌跡―ラブライブ!μ's Final LoveLive!〜μ’sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜に寄せて - きりんログ
「KiRa-KiRA Sensation!」で言う「ここ」とは「今」であり、続く「みんなの想いが導いた場所」を指します。奇跡はみんなで叶えることができるものということがここでも分かります。
ここまで振り返ってみるとどうでしょうか。ラブライブにおける「奇跡」というものは「常識では起こり得ない神がかり的な出来事」でありながらも、それは確かにμ'sの活動を通して「確かに現実に起こり得るという確信」を得たものでもありますし、「みんなで叶えられるもの」でもあると定義することができます。
私は学校のために歌を始め、スクールアイドルを始めた。そして、μ'sと出会った。ラブライブ!で優勝できたのは、奇跡じゃなくて、スクールアイドルとして歌うことに夢中になれたから。そして、何よりも、楽しかったから!
かつて学校を救うために穂乃果たちが全力で歌った『僕らは今のなかで』に、「それなら起こるよ、奇跡は必然」という歌詞があります。穂乃果たちが成し遂げたことは、夢中で駆け抜けてきたことの必然の結果である。それが昔から予言されていたかのような歌詞であることに、驚かされました。
ラブライブ!The School Idol Movie -シーン別感想④- - きりんログ
やはり、「奇跡」は起こせるものだということを私たちはどこかで「知っている」のです。そう確信できた出来事があったというだけで、奇跡を現在進行系で繋いでいっているAqoursの未来が必ず輝くものになることを信じられるのです。
「未来の僕らは知ってるよ」
このタイトルについては機会を設けてしっかりと考察したいと思いますが、彼女たちが今そう言えるのは、一度輝けることを知った彼女たちだからこそ、そう断言できるのだと思いました。
仲間-ヒカリ-
早速Google先生に登場いただきましょう。
なかま【仲間】
心を合わせて何かをいっしょにするという間柄をかなりの期間にわたって保っている人。そういう間柄。「―の面倒をよく見る」
辞書的な回答が来ると思ったらここまで言い得て妙な表現が来たので驚きました。心を合わせて何かをいっしょにする。これでもうラブライブにおける「仲間」という存在を言い表しているような気がします。ただし、これだけだと寂しすぎるので「仲間」という言葉が使われた場面をいくつか振り返ってみましょう。
私も仲間と一緒に頑張ってみたい。この人が目指したところ。私も目指したい。私も…輝きたいって…!!
「仲間」という言葉は、サンシャインの1話から登場していました。μ'sを見た時の気持ちの高ぶりを梨子に伝える千歌。
「仲間と一緒に頑張ってみたい」
普通星人の千歌は、自分と同じ普通の高校生でもみんなで心をひとつにしてステージに立つと格好良くて、感動できて、素敵になれるということをμ'sを見て初めて知りました。つまり、千歌は最初から「仲間と一緒に輝く」という部分に憧れてスクールアイドルを志したのです。
千歌ちゃんにとって輝くということは自分ひとりじゃなくて、誰かと手を取り合い、みんなと一緒に輝くことなんだよね
私や曜ちゃんや、普通の皆が集まってひとりじゃとても作れない大きな輝きを作る。その輝きが学校や聞いてる人に拡がっていく。繋がっていく…
それが、千歌ちゃんがやりたかったこと。スクールアイドルの中に見つけた、輝きなんだ
11話「友情ヨーソロー」でも、曜と梨子が、千歌が語る「輝き」について「みんなと一緒に輝くこと」だと語っています。それは、曜や梨子も「輝くことは自分ひとりではなし得ない」ということを身を持って体験したことで、千歌が語る本当の輝きの意味について知ることができたのでした。
普通の子が精一杯輝いていたμ’sを見て、どうしたらそうなれるのか…穂乃果さんみたいなリーダーになれるのか…ずっと考えてきました
やっと分かりました。私で良いんですよね
仲間だけを見て、目の前の景色を見て、まっすぐに走る…それがμ’sですよね
それが、輝くことなんですよね!
12話「はばたときのとき」では、どうしたら憧れたμ'sのように、穂乃果のようになれるか悩んでいた千歌が、形にとらわれずに真っ直ぐに自由にμ'sが走ったことに気づき、ありのままの自分を肯定することができました。そして、ありのままの自分であるということは、μ'sに憧れたままの自分の気持ちを持って走るということ。そう、つまり1話で千歌自身がμ'sを見て思った「仲間と一緒に輝く」姿勢を持ったまま走ろうとあらためて千歌は強く思うことができたのです。
そして、決めました。私達は、この街と、この学校と、この仲間と一緒に!私たちだけの道を歩こうと。起きること全てを受け止めて、全てを楽しもうと。それが…輝くことだから!
…輝くって、楽しむこと。あの日、0だったものを1にするために!
Aqours
あとはご存知の通り。13話「サンシャイン!!」にて、彼女たちは「仲間と一緒に」ゼロからイチへと踏み出すことを大勢の目の前で誓いました。そして更に千歌は、その先にある輝きにさえも手を伸ばします。
みんな一緒に輝こう!!
高海千歌
これまでAqoursという8人の仲間と一緒に走ってきた千歌は、さらに自分たちだけではなく「10!」と返してくれた新たな「仲間」たちに対して輝こうと声を放ちます。
続く彼女は「ヒカリになろう」と歌います。ここでようやくファンブックの「仲間」の「ヒカリ」というルビ書きがあった意味が読み取れます。千歌にとって「ヒカリ」とは、輝くことであり、それは決してひとりではなし得ないこと。つまり、仲間(みんな)と一緒に輝くことこそが、彼女にとっての輝き(ヒカリ)なのです。
以前の記事でも触れましたが、この『MIRAI TICKET』は輝きを拡めるという点においてμ'sの『SUNNY DAY SONG』とリンクする曲だと思っています。μ'sはスクールアイドルの輝きを拡める時にこの曲を歌い、「輝きになろう」と歌いました。そして、彼女たちが歌った次の曲はどうでしょうか。『僕たちはひとつの光』。彼女たちは僕たちという仲間でひとつの光なのだとそう歌いました。
そう思い返すと、「仲間」イコール「ヒカリ」であるという図式はラブライブの世界ではより自明なものだと理解することができ、ラブライブ!サンシャイン!!でも大きなテーマである「輝く」ということには、やはり「みんな」の存在が不可欠なのだとあらためて「みんなで叶える物語」という言葉の持つ深みについて思い知らされました。
「仲間」についてはもう少し続きます。
みんなの声が背後から聞こえてきたら、大切なことを実感したんです。「私は1人じゃない。いつも助けてくれる仲間が必ず近くにいるんだ」と。
伊波杏樹「電撃G'sマガジン2016年9月号」
キャストのみんなで制服を着てイベントに参加していると、スクールアイドル部の活動のようで青春を感じます。こんな仲間たちと学生時代を過ごしたかった!!そう…私にとってAqoursの活動は、生まれて初めての青春時代ですね。
高槻かなこ「電撃G'sマガジン2016年10月号 」
女優のときは基本的にはひとりだし、自分との戦いという面が強いかもしれませんが、ここには信頼できる仲間がいるし、みんなで一緒にいいものを作り上げていきたいという思いが強いです。そして、それぞれ得意分野が違うので、お互いにいい影響を与え合える関係だと思っています。
小宮有紗「B.L.T.VOICE GIRLS vol.27」
9人の半身のAqoursであるキャストも「仲間」という言葉を沢山使っていることが過去のインタビューから分かります。キャストである彼女たちにとっても仲間という存在は大きなもの。そしてそれは、偶然アニメの中の千歌たちと一致したのではないことがファンブックの監督のインタビューから想像することができます。
”感情に嘘がない”というのは『ラブライブ!』の本質だと思うんです。人間が持つ根源の動機は、絶対”真実”じゃなくてはいけない。千歌たちが想う欲と伊波さんたちの願いは同じじゃないといけないって。それをフィルムに焼きつけて観てもらうというのが、μ'sのころからずっと続いている、この作品の魅力だと思ってます。
監督 酒井和男『ラブライブ!サンシャイン!!TVアニメオフィシャルBOOK』
監督が作品を作り続ける上で心がけていること。その中のひとつとして語られていたのが、このキャラクターとキャストの想いが一致してなくてはいけないという言葉でした。キャストが本当に思っていること、願っていることをキャラクターが持ち合わせていなければ、役を演じる上での感情の部分がブレてきてしまい、そこには真実の物語が生まれなくなってしまう。そういう風に私は読み取りました。
この前後にも、伊波さんと監督らが会うことで千歌の魅力が育まれていったというお話や、キャラクターとキャスト18人全員の想いが重なるのがラブライブであるというお話が載っていました。
そうしたお話を聞くと、「仲間」という言葉をキャラクターとキャストがお互いに多用していたのは偶然ではなく必然だったのだと想像することができました。
翼-Music-
「翼」という漢字に「Music」というルビ書き。スクールアイドルにとって「音楽」というのは羽ばたくための翼そのものであると。私はそう読み取りました。
サンシャインではまだ翼というキーワードが歌詞や劇中に登場しませんが、無印では『START:DASH!!』の「うぶ毛の小鳥たちもいつか空に羽ばたく」「大きな強い翼で飛ぶ」という歌詞から始まり、『Angelic Angel』の「翼をただの飾りにはしない」、そして『僕たちはひとつの光』の「小鳥の翼がついに大きくなって」というように、翼は成長するに従って大きくなる推進力として扱われてきました。
みんなが達成感を知ってしまったから、彼女たちは次はもっと具体的なものが欲しいんだっていうことを表現するのがいいなと思ったんですね。その翼は、ちゃんとどこかに行くためのものなんですよ、っていう意思が表明できるような曲だとカッコいいかなと。
畑亜貴『Cut 2015年 08 月号』
『Angelic Angel』のインタビューで畑先生も「翼」は「どこかに行くためのもの」であると語っています。「どこか」というのはラブライブだったり新しい夢だったり。そして、夢へと向かう推進力をスクールアイドルに与えるのは「音楽」。そう考えると、翼という言葉に「Music」というルビが振ってあるのも納得できます。
大空へと旅立ったμ'sの大きな翼は、その羽ばたきで新しい”夢”の「羽根」をあまねくスクールアイドルに振りまきました。その中のひとりの高海千歌は、秋葉原にてμ'sの「音楽」と出逢い自らも羽ばたく力を手に入れます。
そして12話「はばたきのとき」では、μ'sが見ていたものを自分たちも見たいという想いを持つことで、確かな自分たちの夢の「羽根」を掴むことができたのです。
歌-おもい-
「歌」という漢字で「おもい」というルビ。そしてこのさくらピンク色はもう「想いよひとつになれ」を想像せざるを得ません。
最初に「8人でステージに立った」と書きましたが、想いをひとつにして梨子を含めてAqours9人で立ったとも言えます。それは、東京で1人頑張ってピアノを弾く梨子も然り。梨子も、9人の想いでピアノを弾き切った。「想いよひとつになれ」というタイトルの通り、違う場所にいても想いを同じくして夢に向き合う少女たちの姿が描かれました。
Aqoursの物語と歌のつながりのチカラ ~ラブライブ!サンシャイン!!の楽曲から振り返る「みんなで輝く物語」の序章~ - きりんログ
沼津で千歌たちが歌う「想いよひとつになれ」、梨子が東京で弾く「海に還るもの」。梨子が弾くピアノの旋律が無ければ千歌たちはこの「歌」を歌うことができませんでした。逆もまた然り。千歌たちがいなければ、「海に還るもの」という曲は見つかりませんでした。別々の場所にいてもそれぞれの「想い」がひとつになり、それが「歌」となり、音となり、振り付けにも宿ります。
「歌」は彼女たちの「想い」がひとつになったものである。11話を振り返ってみるとあらためてこのキーワードに込められた想いというものが明確になってきます。
そして、彼女たちは9人の歌に留まらず、私たちの「想い」さえも乗せて運んでいってくれようとしています(『HAPPY PARTY TRAIN』)。そんな熱い「想い」を受け取った私たちもいま熱くなる(『SKY JOURNEY』)。劇中でむっちゃんたちが千歌たちの想いに触発されて自分にできることは無いかと模索し始めたように、彼女たちの想いを受け取った私たちも熱い気持ちで明日へと向かう力を貰えたような気持ちでいっぱいになれたのです。
夢-LoveLive!-
「夢」という言葉。μ'sやAqoursの曲を見てもおそらく何十曲とこの言葉は使われています。それだけ「夢」という言葉はラブライブにおいて重要なキーワードにあたるのでしょう。なにせμ'sのファーストシングル『僕らのLIVE 君とのLIFE』でも登場し、ファイナルシングル『MOMENT RING』でも登場するのですから。
プロジェクトの始まりの「無謀な夢」は、みんなの「終わらない夢」になりました。そして、「あたらしい夢」が生まれ、その夢は『HAPPY PARTY TRAIN』でも歌われているように「受け取ったよ次の夢を」と、Aqoursに受け継がれました。
その夢の入口に立った千歌。「ユメノトビラ ずっと探し続けてた」。2話の千歌の台詞でも引用されていましたが、「何かに夢中になりたかった」「輝きたかった」千歌の気持ちがこの歌詞と重なります。
そして、『夢で夜空を照らしたい』では、「夢のかたちはいろいろある」けど、「確かめたい夢」に出逢えた喜びを歌います。
そんな彼女たち『未熟DREMER』は、9人で今日の「夢の海を泳いで行こうよ」という絆をあらたに結ぶことができました。
彼女たちは大きな舞台で自分たちのありのままの物語を歌います。「夢が生まれ夢のために泣いたときでも」「あきらめないことで繋がった」。「夢」ひとつとっても「かたちはいろいろある」と歌われていたように、その時々で彼女たちの夢は少しづつ形を変えてそこにありました。『MIRAI TICEKT』の冒頭に登場する2つの「夢」をとってみても、それぞれ違う夢であったことが彼女たちの物語を振り返ってみると分かるかと思います。そして、彼女たちはその夢に常に全力だったからこそ『MOMENT RING』でも歌われているように、全てが繋がっていったのです。
ここまで「夢」というキーワードだけを拾って辿っていっても、全てが繋がっていく大きな物語が見えてきました。それだけ、このラブライブという物語、ひいてはラブライブプロジェクトにおいて「夢」というものが持つ価値については決して低いものではないことが分かっていただけたかと思います。劇中に登場するスクールアイドルたちにとって夢というものは、輝くためには必要なゴールであり推進力にもなり得るのです。
さて、ここであらためて考えたいのが新しい夢を受け取ったと語るAqoursの「夢」とはいったいなんなのかといった疑問です。オフィシャルファンブックの「夢」のルビ書きで「LoveLive!」と書いてますが、果たして彼女たちが目指す夢は本当にラブライブで優勝することなのでしょうか。
私なりの見解としては、YESであるとも言えるしNOであるとも言えるというのが現状です。というのも、「μ'sが見ていたものを私たちも見たい」というのが12話からの彼女たちのひとつの夢であり、それだけに留まらず「ゼロからイチへ」や、はたまた今はまだ見えない新しい夢さえも彼女たちはこれから抱くかもしれないからです。
μ'sと同じものを見たいという夢がある以上彼女たちが目指す場所は必然的に「ラブライブ」優勝ということになります。しかし、ここでもYES/NOに分岐します。というのも、決して『ラブライブ!』でもラブライブ優勝が全てでは無かったように、決して廃校を阻止することが物語の本質では無かったように、きっとAqoursにとってもラブライブ優勝が本質的な夢ではないのでしょう。彼女たちは「勝ちたいから」ラブライブに出場したのではなく、「輝きたいから」「憧れている人たちと同じ場所から見えるケシキを見たいから」ラブライブに出場したのです。
そして、彼女たちの夢は、目の前の「ゼロからイチへ」でもあり、今はまだ私たちも彼女たち自身も知らない「未来の僕らは知ってる」夢が待ち受けているかもしれないのです。そう考えると、夢と書いて「LoveLive!」と読ませるのはある一点では正解、ある一点では不正解ということになるのだと思います。
だって僕たちはまだ夢に気づいたばかり
彼女たちの夢はまだ始まったばかりなのです。
希望-Aqours-
希望と書いてAqoursと読むのはちょっと解釈が難しいですね。確かに私たちにとってAqoursは希望である訳ですが。
「希望」というキーワードを抽出すると、4話『ふたりのキモチ』で登場しました。鞠莉がダイヤに向かって言った「良かったね。やっと希望が叶って」という台詞。ダイヤは「何のことですの?」と返してましたが、ずっとスクールアイドルのことが好きでスクールアイドルになりたいと憧れていたルビィが一歩踏み出してスクールアイドル(「Aqours」)になることが、ダイヤの心のなかには初めからあった希望のように見えました。
そう考えると、確かに「Aqours」というものが「希望」の場所として指し示すことができます。実際に、9話で3年生がかつて「Aqours」というグループ名でスクールアイドル活動をしていたことが語られていましたが、彼女たちにとってAqoursはかけがえのない「希望」に溢れた場所でありながらも、再び離れ離れになってしまった時は、そこは再び還るべき「希望」の場所として彼女たちの目には映っていました。
また、千歌たちにとっても「Aqours」というグループは輝く上で必ず無くてはならない「希望」とも言える場所だったことでしょう。そんな彼女たちの、それぞれの希望が時を超えて、いくつかの支流が大きい川の流れに変わるように、ひとつの「希望」の場所として「Aqours」になったのでした。
最初はひとりの少女が抱いていた小さな希望。その希望はやがて、憧れの力で人と人を繋げることができる少女の希望と繋がることによって、大きなひとつの希望へと変わりました。そして、その大きな希望はやがて「みんな」の希望へと変わっていくことでしょう。
「僕ら」ってなると本当に限定しないというかみんなっていう感じがするんですよね。何かこう希望や未来を持っているこれからがあるものの象徴みたいに思えて
内田彩「NHK μ’sスペシャルライブ」
Aqoursの希望が10人目の僕らの希望ともひとつになる時、「あたらしいみんなで叶える物語」の本筋がようやく動き出すように思いました。
波-Dance-
波と書いてダンスと読む。これが一番難しい。正直に言うと全く分かりません。唯一思い浮かぶのが『Mermaid Festa vol.1』の「波と踊るから」という歌詞。全く関係無さそうですね。この「波」と「ダンス」の関係性。2期で分かるものなのか、はたまた全く関係性の無いものなのか。オフィシャルファンブックを書いた偉い人、あるいはこの関係性が分かる人がいたら教えてください。
未来-Shine-
「未来」という言葉は、ラブライブにおいて「夢」と並んで頻出のキーワードでしょう。ラブライブにおける未来という言葉はもれなくポジティブなものとして使われてきました。未来はShineつまり「輝き」に溢れたものとして私は解釈しました。
『未熟DREAMER』における「どんな未来かは誰もまだ知らない」「でも楽しくなるはずだよ」という歌詞。『青空Jumping Heart』における「どんなことが起こるのか分からない未来」。いずれも、千歌たちが東海地区予選で語った想いの通り、未来は希望に溢れる象徴だということが読み取れるかと思います。
これからも、いろんなことがあると思う。
嬉しいことばかりじゃなくて、辛くて大変なことだっていっぱいあると思う
でも私、それを楽しみたい!全部を楽しんで、皆と進んでいきたい!!
それがきっと、輝くっていうことだと思う!
そしてAqoursは歌います。「ミライヘ旅立とう」と。「ヒカリになろうミライを照らしたい」という歌詞は、まさにファンブックに書いてある未来と書いてShineと読むことそのものだと思います。ここで彼女たちの凄いところは、単に輝きに溢れた未来を待ち続けるのではなく、自分たちが光(Shine)になることで未来を輝くものにしようとしているところ。ひたすら前向きな姿勢は眩しくさえ思えます。
そしてゼロからイチを成し遂げたAqoursは次なるStepへと進みます。しかし、ここでも次に待ち受ける未来はやはり期待に溢れるものであると、次の駅へと向かう列車の歌の中で語っています。「期待でかがやく瞳なら見えるよ」「遠い駅できっとなにかが待ってるね」と。彼女たちが今時点で未来が希望に溢れるものだと知っているのは、「輝くって、楽しむこと」を、ゼロからイチへと踏み出すなかで体現したから。つまり、未来を輝かせるためには、起こることすべてをありのまま楽しむことが必要なのです。
"SHINE!!"だよ かわらない未来はない
たのしくなるきぼうがある太陽を追いかけろ
私たちも彼女たちが用意してくれた10両目の車両に乗って、彼女たちを待ち受ける輝きに溢れた未来に期待を抱きながら、Aqoursと僕らの物語を心待ちにしていたいなと思います。
さて、ファンブックの見開き1ページに載っていた8つの言葉で、ここまでAqoursの軌跡を振り返ることができました。
最初はエイヤで書き始めましたが、意外にも1期のAqoursとしてターニングポイントとなった物語については網羅できたかなと思います。
あらためてファンブックに書かれていた8つのキーワードがいかに重要なものだということかを思い知ることができました。こうした何気ない1ページだけであれこれと想像が膨らむラブライブという作品。それだけで、あらためてこの作品の魅力に気付けたような気分になれました。
さて、次の記事は「【超主観Ver.】『ラブライブ!サンシャイン!!』の好きなシーン」と題しまして、私自身が私情込みで『ラブライブ!サンシャイン!!』の好きなシーンを並べて書きます。「お前の好きなシーン、暇だから見てやるよ」という方は、是非次の記事もお読みいただけると私が喜びます。