きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

【レポ】劇場版ラブライブ!サンシャイン!!スタッフトーク付上映会@シネマサンシャイン沼津

 

2019年2月17日にシネマサンシャイン沼津にて行われた、劇場版『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』スタッフトーク付き上映会に参加してきました。

登壇者は、酒井和男監督、劇伴担当の加藤達也氏、撮影監督の杉山大樹氏の三名。

制作過程をじっくりと知れる機会としては、2016年に行われた「あにつく 2016」の「ラブライブ!サンシャイン!!CGセミナー!」以来。しかも、CGセミナーの時はSNSでの共有が禁止されていたので、オープンスタイルでは今回が初の試みであったと言ってもよいでしょう。

酒井監督が仰ってましたが、監督自身が沼津の人たちや作品を愛してくれた人たちに直接感謝を伝えたかったからこそ、このような機会を松竹さんにお願いして作ってもらったそうです。トークの中身は大変濃いもので、劇場版と同じくらい熱い想いを感じました。

今回はその貴重なお話の一部始終を、感想を交えながらレポートとして書き留めておきたいと思います。

 

 

冒頭の挨拶、仕事内容の紹介

最初に挨拶と自担当の仕事の説明を簡単にされていました。なかでも杉山さんの「撮影」という仕事を自分は理解していませんでした。

撮影という言葉は昔の名残りのようで、今はカメラで実際に撮影している訳ではないとのこと。

「最後のシメ」となる仕事のようで、PCでキャラクターの絵と背景を合成したり、グラデーションやキラキラの処理を仕上げとして入れていくのがメインの仕事とのことでした。

その杉山さんの説明に「自分もはじめて知りました」と酒井監督は仰ってましたが、絶対に知ってましたよね。

以前の舞台挨拶の時も感じましたが、酒井監督はだいぶお茶目な方で、合間にこういった面白い合いの手が入るので聞いていて微笑ましくなりました。

 

映画が完成した時の気持ち

最初のトークテーマは映画が完成した時の気持ち。

制作にかなりの時間と根気を要したようで、出来上がった時は安心した、大変だったという気持ちはお三方とも口を揃えて仰っていました。

 

杉山さん「完成版は五反田で見たんですけど、率直に感動と興奮と色々な気持ちになりました。あと自分はクリエイターなので、『このシーンは良かった』とか『ここは反省ポイントだな』という目線でも観ていました。とにかく完成した時は、安心しました。作業が終わって夜の10時に寝たんですけど、目覚めたら翌日の22時でした。最後の砦ですからね」

 

酒井さん「その最後の砦を壊しに来ました」

 

加藤さん「僕は映画の尺が決まってから作るので杉山さんよりは精神的な余裕を持って仕事をすることができていたと思います。初めて完成版を見た時は隣にいたEFFY君とお互いに裏話をしながら観ていました」

 

酒井さん「本当に大変だったよね。実は絵コンテを最後に作ったのは『僕らの走ってきた道は…』で」

 

加藤さん「最後まで『僕らの走ってきた道は…』は空いてましたよね」

 

酒井さん「まさに『ああどうしよう』でしたね」

 

加藤さん「そしたら彼女たちが『そうです!』って。作り終わった時は本当にホッとしました」

 

TVシリーズと劇場版の違い

次に話されたのがTVアニメ版との違い。大画面に映し出される映画というフォーマットの中でいかにして魅せるかにこだわったというのが撮影監督の杉山さん。

 

杉山さん「TV版とは色味が違いました。フレア(光の反射の効果)やグラデーションとかは劇場版の方が盛り盛りです」

 

酒井さん「『そうです』」

 

加藤さんは、劇場版の劇伴制作にあたって最初は苦労をされたそうです。

 

加藤さん「僕はまずTVアニメの1期の時は次があるとか考えずに走り抜けました。そして2期は新たな気持ちで走り抜けました。ですが劇場版はなかなか決まらず・・・そのなかで音響監督の長崎さんと話していくうちに(イメージが)明確になっていきました。特に劇場版のキーポイントとなる部分が悩みました。『劇場版のシンパシーを感じられるような音楽』を届けられたんじゃないかと思っています」

 

MC「思い浮かばない時はどうやってヒントを得ていますか?」

 

加藤さん「僕は具体的なヒントになるような音楽は聞きません。あと仲がいい藤澤くんは真面目にキッチリと仕事を終わらせるタイプ。逆に僕は不真面目ですね。プライベートで家に帰ってからも曲を考えちゃいますし、風呂場で思いついた時は鼻歌を録ったりしています」

 

酒井さんは劇場版においては「変化」をどう映画に込めるかに注力したといいます。

 

酒井さん「僕はよく沼津に行くことがあるんですけど、お店が無くなってたりして、街や人の景色が変わっていて、『沼津も変わっていってる』ことを実感しています。僕も地方出身者なので、強く感じるものがありました」

 

変化する沼津を映像に残しておこうとする監督の想いのようなものは、劇場版だけでなくTVシリーズでも感じるところがありました。

 

 

監督自身が地方出身者ということで、何か原体験のようなものが沼津を舞台としたサンシャインという作品にも少なからず影響を与えているように思います。

 

酒井さん「劇場版では『変化』をどう描くか、凄く悩みました。そこが『前作との違い』でもありますね」

 

確かに劇場版では「変化」が大きなテーマになっているように感じます。「街も人も…変わっていく」という千歌のセリフもありますが、じゃあその変化とどう向き合い、どう受け入れて前に進んでいくかがキャラクターたちの成長して描かれていました。監督も明言されていたように、変化を軸において描き出そうとするところに「前作との違い」がしっかり表れています。

そこから発展してさらに酒井監督は劇場版でも描かれていた「変化への向き合い方」について話をしてくださりました。

 

酒井さん「彼女たちの『生きがい』『輝き』『今』が映画に乗って、『変化を恐れない』というところに繋がります。自分なら(変化に対して)静かになっちゃうところを、彼女たちは変化を恐れずに突き進んでいく。その変化の中で、少し耐えられなくなっちゃったのが理亞ちゃん。自分の描き方は日本映画っぽいんですけど・・・言ってしまえばキャラクターの命なので、永遠に生かすこともできるし、終わらせることもできる。でもその中で『(変化を)自分の糧にして生きていこう』という答えを僕は映画の中でしっかり描き切ろうと思いました。すべてが舞台です。それが彼女の生きる全てだから」

 

監督の意思が籠もった一言一言に胸が熱くなりながら頷いて聞いていました。キャラクターの歩む道がどうなるのかは作り手次第だけど、そこから逃げずにしっかりと描き出そうとした監督の想いには、ただただ感謝の気持ちを感じずにはいられませんでした。

 

沼津のお気に入りの場所

次のトークテーマが沼津のお気に入りの場所。MCの方に「全部」というのは無しでお願いしますと最初に釘を刺されていました。

 

加藤さん「僕は伊豆のロープウェーで行けるパノラマパークが好きです。淡島は地上からしか観たことが無かったんですけど、頂上から見える淡島と富士山のコラボレートに感動しました」

 

杉山さん「エンディングの水の処理でもありますが、千歌ちゃん家の前の海岸や島郷海水浴場は何度も行っていて、その景色を見ると仕事を思い出しちゃうんですけど、本当に綺麗で好きです」

 

酒井さん「(沼津の)全部が好きです。内浦でいうと実際走っていった弁天島とか。あとは淡島神社で(長井崎の)学校が見えたりする眺めがラブライブ!サンシャイン!!だなって思います。心臓が取れるくらい疲れたので、果南ちゃんすげぇなと思いました」

 

劇場版のオススメのシーン

劇場版の見どころのシーンについては、杉山さんと加藤さんがたっぷりと裏話をしてくだりました。ひと目見ただけでは気づかないような様々な工夫が施されており、また何回も見て確かめたくなるものが沢山ありました。

 

杉山さん「ライブシーンは、とにかく格好良さを重視しました。2曲目の『逃走迷走メビウスループ』の『クルクルっと』の部分で、逆光でバンっと光の粒子が舞うところがあってそこは頑張ったので見て欲しいです。あとは4曲目の『Believe again』で入れたスミア光(光の筋)にはこだわりました。Saint Snowの衣装のエナメルの光の照り返しにもこだわって、2Dを3DCGにした時の照り返しの効果はその為のプラグインを作りました。2Dの撮影だと出来ない帽子までの照り返しですね。レンダリング処理(映像の出力処理)でPCが何回も落ちました」

 

専用のプラグインを開発するところがクリエイターのこだわりだなって感じます。

 

杉山さん「あとは普段とは違うことがしたいなと思って、千歌が紙飛行機を投げる冒頭の場面は光の描写を『つぶつぶ』で描いているんですけど、終盤の幼い頃に戻って虹がかかる描写では光を『線』にして描いていて。虹って雨が降ってできますよね。これは虹の伏線として入れてて、実は酒井監督に黙って勝手に入れたんでんですけど気づきましたか?」

 

酒井さん「気づいてましたよ」

 

ラブライブ!は本当に全てのカットに意味がありそうなので、こういった話を聞くと更に細かく見てみようと思いますね。お次は劇伴の加藤さん。

 

加藤さん「TVシリーズで描いてきた想いをどう昇華して描くかというところにこだわりました。今までのアプローチを取り入れたり、意識しつつもあえて外したり。TVシリーズでは1期から2期への派生として楽曲を制作しましたが、劇場版では新しく構成しました。そして今回劇場版の楽曲を作るにあたって不思議な体験をしたのですが、最後の浦女を後にして走るシーンで流れる曲で、最初はロジカルに作っていったんですけど、その後はアドリブでピアノを弾いてシーンに重ねていったら自然と出来上がったしまったということがありました。あとは千歌ちゃんが紙飛行機を拾い上げるシーンでは僕の体が勝手に1期の曲を欲しがったりして、入れてみたらピッタリなんてこともありました」

 

偶然曲のタイムがぴったり映像に合ったというお話は音響監督の長崎さんも以前話されていたことがあったかと思いますが、何か不思議な力がこの作品にはあるようです。

 

加藤さん「イタリアで果南が想いを伝えるところで流れる『新しいAqoursを見つけた』がいいシーンですね。あと2月27日に「Sailing to the Rainbow」というサントラが出ますのでよろしければ聴いていただけると嬉しいです」

 

酒井さん「みんな買ってね!」

 

続いては酒井監督。

 

酒井さん「私のお気に入りのシーンは全部なんですけど、さっき出たレンダリングの話をしましょうか。最後のシーンで水が綺麗に描かれているところがあるんですけど、その水の処理に1400時間もかかりました」

 

杉山さん「別にPCがショボいとかじゃなくて、それくらい重いんです」

 

酒井さん「それが出来なかったら映画自体落ちるって言ってたので、カメ止めみたいに内浦でみんなで肩車して撮ろうという話にもなりました。半分本気でしたけど」

 

杉山さん「どれくらいすごいことなのかと分かりやすく説明しますと、家で4分のものを録画した時に、それのダビングに1400時間かかるイメージです」

 

最後の挨拶

撮影現場の苦労もだいぶ伝わってきたところで、スタッフトークも最後に近づいてきました。そしてここで願ってもないスペシャルゲスト(?)が・・・!?

 

杉山さん「まだまだ隠された秘密が沢山あるので何回も映画を見てください」

 

加藤さん「全員が愛をもってラブライブ!サンシャイン!!を作ったので、これからも末永く愛してくれたら嬉しいです」

 

???(女性)「観れてよかった~!!ありがと~!!!」

 

(田野アサミさんと佐藤日向さんが映画館の客側の入り口から一瞬だけ乱入)

 

MC「あいつらやりやがった・・・」

 

酒井さん「Aqoursはそれぞれ出払っているので沼津の防御が薄くなってるんでね。はい。今回のスタッフトークは本当はやる予定は全く無くて、でも僕がどうしても沼津で挨拶をしたかった、作品を愛してくれた人に感謝をしたかったので、松竹さんに相談してやる運びとなりました。本当にラブライブ!サンシャイン!!を愛してくれてありがとうございました!」

 

MC「それでは本日はファンミにも行かずにお越しくださり本当にありがとうございました!」

 

これにてスタッフトークは終了。貴重すぎるお話を聞けた後の多幸感は物凄いものでした。帰り際に映画館のスタッフの方がポスターを取り替えていたので覗いてみると、酒井監督、杉山さん、加藤さんのサインが書かれていました。今回の登壇者は3人。しかし、よくよくサインを見てみると・・・5人分書いてあるではありませんか。

 

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完全にプライベートで沼津までスタッフトークを聞きにきていたのでしょうか。しかし、ルビィちゃんのことにサインを書く佐藤さん。とても分かりみが深いです。

 

劇場版ラブライブ!サンシャイン‼︎のスタッフトーク、本当に有意義な機会だったので、また機会があれば是非開催して欲しい。そう思えるくらい濃密な時間でした。