きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

Aqoursの物語と歌のつながりのチカラ ~『HAPPY PARTY TRAIN』に寄せて~

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以前「Aqoursの物語と歌のつながりのチカラ」と題してTVアニメの曲を中心に『ラブライブ!サンシャイン!!』の楽曲がいかに物語と密接に結びついおり、それが聴き手の感動を引き起こすものなのかというお話をしました。

 

ayarieshon.hatenablog.com

(TVアニメに登場した曲については全曲歌詞に込められたメッセージを考察しましたのでこちらも合わせてご覧いただけると幸いです。)

 

来たる2017年8月。Aqoursの2ndライブにしてラブライブ史上初となるライブツアーが始まります。それに向けて、Aqoursが見せてくれる新しい景色への期待を抱きながら、ツアータイトルにもなった『HAPPY PARTY TRAIN』へと思いを馳せたいと思います。

 

まずは、『HAPPY PARTY TRAIN』という曲に込められたメッセージを歌詞やPVから読み取り、この曲がいかにTVアニメやPVの物語と密接に結びついているかを振り返っていきます。ご一読いただければ、この曲の素晴らしさはもちろんのこと、これまで『ラブライブ!サンシャイン!!』が描いてきた物語が「全部入り」だということが分かったいただけるかと思います。大きなメッセージが4つあるかと思いますので、それぞれ章立てして分けて書きました。

 

そして締めくくりとなる5章にて、「HAPPY PARTY TRAIN TOUR」がどれだけ期待に溢れるものなのかをお話し、Aqoursが語るツアーへの展望について触れながらツアーに向けたワクワクな気持ちを皆さまで共有できればなと思っております。

 

目次

 

【第1章】Aqoursの旅立ち

―「やっぱりこの時間も有限なんだな」と思わせるものが、この曲に含まれてるというか。

「そうなんです。やっぱり有限なんですよね。でも、そこのエッセンスを少しでも入れることが、娯楽と言ったら変なんですけど、でも過ぎ去っていく美しさも楽しみたいじゃないですか」

畑亜貴「CUT 2017年5月号」

 

HAPPY PARTY TRAIN』について作詞の畑先生は「時間の有限性」をエッセンスとして込めたと語っています。確かに、歌詞はもちろんPVのなかでも、時間は過ぎ去っていく有限なものであることを「巡りゆく季節」という象徴的なものを使って表現しています。Aqoursは同じ場所でずっと歌い続けていますが、季節はひたすら巡っていっています。

 

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この「時間は有限なもの」であることこそが、この曲が描こうとする「旅立ち」のひとつのきっかけなのではないでしょうか。ここで言う旅立ちとは「μ'sからの旅立ち」。

 

しりたいのはすばらしいよあけと

せつなさをやどすゆうやけ

だからもういかなくちゃ ひとりでもいかなくちゃ

おもいでをくちずさんで

 

前半の「しりたいのは…」という歌詞は、1番の「ひらいたはなのかおりから…」という歌詞と重なるものであり、続く後半の「だからもういかなくちゃ」までの文脈も含めると「μ'sからの旅立ち」を歌っているものだと想像できます。

 

「限られた時間のなかで」は『ラブライブ!』でも大きな軸となっていましたが、『ラブライブ!サンシャイン!!』でも少女たちに与えられた時間は等しく、時間は待っていてはくれません。「だからもういかなくちゃ」というフレーズからは、Aqoursの旅立ちの決意を感じます。時間は限られている「だから」次に進まなくちゃ。悲しみに暮れて立ち止まっている時間はない。だって時間は限られているんだから。Aqoursの決意はもちろんですが、何か私たちも次に進まなくちゃいけないと言われているような気さえします。

 

ちなみに「旅立ち」の象徴は、果南が乗る「列車」としてPVのなかで描かれています。「9」という数字は、μ'sのことを指しているようにも見えます。

 

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そう、体験済みだからこそ『あっ!」って思うわけじゃないですか。『知ってる、この切なさ』っていう。

畑亜貴「CUT 2017年5月号」

 

続くインタビューでも語っていますが、この曲を聴いて時間が過ぎ去る切なさを強く感じるのは一度私たちがμ'sを通して経験しているからだと語っています。一度過ぎ去ってしまった時間。しかし、ただ時間を過ぎ去っていくもののとして捉えるのではなく、「過ぎ去っていく時間を美しい」と思う気持ちも歌われていることが『HAPPY PARTY TRAIN』の良さであり、ラブライブシリーズが描いてきた価値観そのものではないでしょうか。先の畑先生のインタビューで「過ぎ去っていく美しさ」を曲に込めたと語っていましたが、まさにそれが歌詞にもPVにも表れています。

 

その代表的な部分が次のPVのカット。「せつなさをやどすゆうやけ」を見つめながらも、笑顔の梨子。それは、過ぎゆく時間さえも愛おしいと思っているような印象を受けます。

 

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そして、「おもいではポケットのなか」「おもいでをくちずさんで」という歌詞は、μ'sの思い出を思い返すことや歌を口ずさむことと捉えてもいいでしょう。過ぎゆく時間のなかで出会った思い出や歌をひたすらに忘却するのではなく、思い出や曲はいつも側において思い返しては口ずさみ続けていくこと。なにか、ここにも過ぎた時間を愛おしく思うような気持ちが伝わってきます。あるいは、「μ'sへの憧れを抱きつつも」といったニュアンスもこの歌詞にはあるような気がします。自分たちの走り方で輝くことを決めたAqoursですが、μ'sへの憧れは捨てた訳ではありません。憧れは確かな原動力として彼女たちのなかにあるのです。

 

Aqoursがμ'sに憧れている部分は、とても大事なものだと思っていて。ものすごく強い動機になると思うんですよね。

畑亜貴「CUT 2017年5月号」

 

そして、Aqoursが「旅立ち」を決意したきっかけは時間の有限性だけに留まりません。歌詞にあるように、Aqoursはμ'sから「あたらしい夢」を受け取りました。

 

ひらいたはなのかおりから うけとったよつぎのゆめを

さあどこへゆこうかな はねるようにゆこうかな

はじまりと(さよならを)くりかえして

 

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μ'sの『僕たちはひとつの光』で開いた蓮の花。蓮の花言葉は「去りゆく愛」ですが、その去りゆく愛からも『MOMENT RING』で歌われているような「あたらしい夢」が生まれました。μ'sの歌を引用しながら新しい夢を受け取ったと歌うAqours。μ'sへのリスペクトも感じざるをえません。

 

新しい夢を受け取ったAqoursは、その夢に向かって旅立ちます。彼女たちは限りある時間に駆り立てられるように旅立ちを決めますが、それ以上に目指すべき新しい夢が生まれたからこそ、その目的に向かって前向きに旅立つ決意を決めたのでした。

 

さて、『HAPPY PARTY TRAIN』ではμ'sを匂わせる歌詞がいくつか登場しますが、Aqoursが新しい夢を追い駆けようと歌うことによって、よりいっそうμ'sが拡めたいと願った輝きやμ'sの存在までもがずっと輝き続けていくように感じられます。

 

μ'sの輝きを受け取った子たちの物語を書くことによって、いつまでもμ'sが輝いてることもみんなに伝えられる、と思って。今の時点で自分にはそれができるし、やってもいいことなんじゃないかなって思えたんですよ

畑亜貴「CUT 2017年5月号」

 

畑先生もAqoursの楽曲を書こうと思った理由についてこのように語っていますが、まさに語られてる通りだと思います。μ'sが伝え拡めようとしたスクールアイドルの楽しさや輝きを受け取ったスクールアイドルが確かにそこにいて、その子たちが新しい物語を紡ぎながら自分たちの輝きを見つけようとしている。畑先生は以前『ラブライブ!』について「永遠に輝き続ける青春の物語」と称していましたが、誰かの輝きが他の誰かの輝きを生む「輝きの円環」こそが「みんなで叶える物語」の核と呼ぶべき部分なのではないでしょうか。

 

μ'sが輝き続けるというお話ついでに、先ほども触れた「おもいでをくちずさんで」という歌詞を聞くとどうしてもμ'sの「μ'sic forever」という言葉が思い浮かぶというお話を。μ'sの楽曲を口ずさめば、彼女たちの歌を通してまたいつでも彼女たちに会える。

 

やっぱり音楽って凄いんですよ。一曲一曲聴くだけで、そこの場面に戻れるわけじゃないですか。『ラブライブ!』ではこんなにたくさんの曲を作ってきたし、一曲一曲が戻れる手がかりとして残ってるから、いつでもまた会えるよっていう気持ちもあって。
畑亜貴「Cut 2015年 08 月号」

 

前回の記事でも引用したインタビューですが、ラブライブは楽曲と物語が密接に結びついているからこそ「いつでもまた会えるよ」という気持ちに強くさせられるのだと思います。

 

このようにμ'sの歌や思い出や憧れの気持ちを胸に抱きながらも、新しい夢へと向かって旅立たなくちゃというAqoursの決意。それは、私たち自身の気持ちさえ歌われているような気がしてなりません。『HAPPY PARTY TRAIN』では、Aqoursの旅立ちの気持ちがテーマとして歌われているのでした。

 

では、なぜ今Aqoursの旅立ちをテーマにした歌が歌われたのか。それは次の章にも繋がるところですが、TVアニメの1期、そして1stライブが終わり、「Step! ZERO to ONE」から「Next Step!」へと繋がる今だからこそAqoursの旅立ちが歌われたのだと思います。

 

【第2章】どんな場所へでも繋がる次の一歩

今は、ゼロから1になって……1の次ってなんだろう?っていうことを探っています。またいろいろ考えちゃってるんですけど、この人生についての考察が少し落ち着かないと、苦しいままだと思うんですよ。

畑亜貴「Cut 2015年 08 月号」

 

こちらもまた畑先生のインタビューから拝借したものですが、畑先生自身もゼロからイチを成し遂げた上で次にどこへ向かうべきなのか悩まれたいたようです。悩んだ末に出した結論が『HAPPY PARTY TRAIN』には表れているように感じました。

 

彼女たちはまっさらなところからいろいろな状況に踏み込んで、そこで得たものってすごく大きいですよね。そうすると「人生ってさ」って、ついポロリと呟いてしまう子たちに成長しているんじゃないかなと思って。目の前の道がどこに繋がっているかはわからないけど、でもたくさんの場所に続いてるということを、今の彼女たちはきっと理解している気がします。

畑亜貴「リスアニ!Vol.29」

 

「まっさらなところからいろいろな状況に踏み込んで」。これは、TVアニメで表されていた「ゼロからイチへ」のストーリーであり、Aqoursのキャスト9人が1stライブで挑んだ「ゼロからイチへ」でもあります。そして、彼女たちが「そこで得たもの」は、「未来への可能性」。しかし、彼女たちはまだイチへ辿り着いたばかりなので、それがどこへ続く道なのかはハッキリとは分かっていません。でも、彼女たちがゼロからイチへの一歩を踏み出せたこと。それは、自分たちの歩みが未来へと繋がることをどこかで理解できた瞬間であり、彼女たちの自信にもなった大きな出来事でした。だからこそ、今の彼女たちは知っていますし、それを歌うことができます。この先の道がどこへ続いているかは分からないけれど、自分たちはどんな場所にでも行けるかもしれないということを。

 

それこそが畑先生が語る彼女たちの「成長」であり、Aqoursが人を惹きつける「無謀さ」でもある訳です。

 

―まさにおっしゃっている通りのことを、”青空Jumping Heart”の歌詞に感じていました。この曲の歌詞って、すごく無謀じゃないですか。

「そうですね」

―その無謀さが、泣けます(笑)。

「それは、わたしたちが失ったものだからですね(笑)。そう、時間は戻らないんです」

―そうなんですよね。だから、『ラブライブ!』の楽曲から受け手が感じるエモーションの大きな部分が、この曲には含まれていて。「無謀に何かを夢見ることはどれだけ輝いていて、楽しそうなんだ」っていう。

畑亜貴「Cut 2017年 5 月号」

 

インタビューにもある通り、「無謀さ」というのはラブライブシリーズに通底している要素であり、この無謀さを見てなぜ私たちが感動するのかというと、私たちの多くはそれを持ち合わせていなかったり、既に失ってしまっているからです。しがらみに捕らわれ挑戦することをやめたり、自然と夢を見ないで生きる選択肢を選んでしまっていたり。だからこそ、自分たちが失ってしまった何事も恐れず挑戦をしようとするμ'sやAqoursの姿が私たちには眩しく映るのです。かつて、千歌がμ'sを見て「キラキラしてる」と表現したように、その無謀さは見るものの心を鷲掴みにします。

 

それは、『青空Jumping Heart』の歌詞を見ても無謀さが歌われていることが分かります。「どんなことがおこるのかわからないのもたのしみさ」「ゆめをつかまえにいくよみんなとなら せつめいはできないけどだいじょうぶさ」。あらためて、これらの歌詞を見ると、ゼロからイチへと踏み出したAqoursだからこそ歌える無謀さでもあるように感じられ、『青空Jumping Heart』が未来のAqoursが歌っているようにも思えます。

 

さて、『HAPPY PARTY TRAIN』に話を戻しますが、歌詞のなかにはゼロからイチへの成長を経て未来の可能性を知ったAqoursだからこそ語れる無謀さが登場します。

 

すてきなたびにでよう

じんせいってさ…たくさんのばしょへつづいてる?

わくわくだらけさ! 

れーるはどこまでつながるか まだまだわからないね

ずっとはしってたい ぱーてぃーとれいん

 

この先の道がどこへ続いているかは分からないけれど、自分たちはどんな場所にでも行けるかもしれない。それは、『青空Jumping Heart』でも「ごーるはどこ?どこだろう?わからない わからない でもねたのしそうだよ」と歌われているのと同義です。このように、『HAPPY PARTY TRAIN』では、ゼロからイチへ、イチから次の一歩(Next Step!)を踏み出すAqoursの期待に溢れた無謀なミライヘ向かう気持ちが歌われているのでした。そう考えると、あらためて『HAPPY PARTY TRAIN』が1期から2期、1stライブから2ndライブとの間のこの時期に歌われた意味というものが強く感じられます。

 

HAPPY PARTY TRAIN』の素晴らしいところは、そのAqoursの今の気持ちや状況が鉄道にまつわるものとして映像のなかにも象徴的に表れているところだと思います。

 

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鉄道のレールは「敷かれたレールの上を」という言葉に代表されるように、「定められた運命」を象徴することが多い訳ですが、『HAPPY PARTY TRAIN』のPVを見るとどうでしょうか。Aqoursが運転士となって進む機関車のレールは、彼女たち自身が伸ばしていってますし、最後には何もない夜空に光るレールを敷きながら走って行っています。それこそがまさに、Aqoursが進もうとしている道である訳です。どこへ繋がっているかは分からないけど、どこへでも繋がっている道。

 

そして、何もない夜空を思い切り駆け抜ける姿は、何もない場所を自由に真っ直ぐに走ろうと誓ったAqours自身のようにも見えます。何もない場所に自分たちだけの9色のレールを敷きながら夜空を進む機関車は、見るものをまた夢へと駆り立てる9色のハート(愛)の光を振りまきながら未来や夢という名の銀河に向かって進んで行くのです。

 

【第3章】輝くって、楽しむこと

前の章で、Aqoursが未来へと無謀な旅路を切り出せたのは、ゼロからイチへの一歩があったからだと説明しました。それでは、なぜAqoursはゼロからイチへの一歩が踏み出せたのか。そう、彼女たちは辛いことも大変なこともありのまま全てを受け入れて、「楽しむこと」を誓ったから。

 

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私達は
この街とこの学校と
この仲間と一緒に!
私たちだけの道を歩こうと
起きること全てを受け止めて全てを楽しもうと
それが…輝くことだから!

…輝くって、楽しむこと

あの日、0だったものを1にするために!

高海千歌 13話「サンシャイン!!」

 

HAPPY PARTY TRAIN』では、そのゼロからイチを成し得た理由についても形を変えて描かれています。それが、小さい時のAqoursメンバーが登場するシーン。

 

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思い悩んだ表情で車窓を見つめる果南の元に9人の幼いAqoursが登場します。この幼いAqoursは「楽しむこと」の象徴だと思われます。「子供」というのは、ラブライブシリーズを通して、純粋に物事を楽しむことの象徴として描かれてきました。『ラブライブ!』の劇場版での幼い穂乃果、『ラブライブ!サンシャイン!!』12話における少女などがその例です。『HAPPY PARTY TRAIN』でも、ありのまま楽しむことの象徴としてAqours自身の幼少期の姿が登場しました。

 

ちなみに、果南の元に幼いころのAqoursが登場するに至ったのは、PVのなかで彼女たちが好きなものや夢中になれるものに触れられたことと無関係ではないように思います。

 

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それは大切な仲間であったり、大切な人の笑顔であったり、夢中になれる大好きなものだったりします。彼女たち自身が好きなものに触れたこと。それがあったからこそ、純粋に楽しむという気づきも得られ、その象徴として幼いころの彼女たち自身が現れたのだと思います。

 

そして、「過去」の果南と「今」の果南が交わった瞬間、夜空を照らす「未来」への光が輝き出します。

 

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そして、輝き始めた機関車は夜空へと走り出します。

 

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今のAqoursを呼ぶようにして空へと旅立つ幼いころのAqours。ここまでの一連の流れを見ると、純粋に楽しむ気持ちが今のAqoursを導いているというメッセージのように感じられます。過去から今、今から未来へと想いは繋がっていくのです。

 

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未来へと向かう果南の表情には、純粋に楽しむという気持ちが溢れ出ているのでした。

 

【第4章】新しいみんなで叶える物語

別れの切なさとあたらしい夢に駆り立てられるように旅立つことを決めたAqours。彼女たちは、すべてをありのままに受け入れて楽しもうと誓うことで、ゼロからイチへの一歩を踏み出すことができました。そして、次の一歩はどこへ行くのか分からないけれども、無限の未来へと繋がる一歩だと確信しました。

 

以上がここまで述べてきた『HAPPY PARTY TRAIN』が描く物語である訳ですが、ラブライブの主軸の「みんなで叶える物語」についても描かれていることは見過ごせません。『HAPPY PARTY TRAIN』の帯には、「新しいみんなで叶える物語」と書いてありますが、確かに『ラブライブ!サンシャイン!!』の1期ではAqours自身の新しい輝き方でみんなで叶える物語の一端を描いてくれました。

 

Aqoursはこの9人だけでなく、一緒に歩んでくれる学校の友達や地元の応援してくれる人たちもみんな「10」番目のAqoursメンバーだとメンバーに迎え入れてくれるような姿勢を持っている

TALK ABOUT SUNSHINE !! - ラブライブ!サンシャイン!! を見つめ直す - - きりんログ

 

前回の記事でも述べたように、13話で千歌の友人が一緒にステージに立つことに賛同していたり、「10!」という掛け声に対して「みんな一緒に輝こう!」とアンサーしていたように、Aqoursは「みんなで輝くこと」を大切にしていたように見えます。彼女たちの声に呼応して一緒に輝こうとする人たちはみんな10番目のAqoursメンバーであるかのうように思えるのです。これこそが、Aqoursの新しい輝き方に他なりません。

 

そして、その彼女たちの姿勢は『HAPPY PARTY TRAIN』の歌詞にも表れています。

 

すてきなたびにでよう

おもいをのせて はっぴー はっぴー とれいん とぅ ごー

おわらないたびをしよう

 

「ヒカリになろう」と歌い観客の「輝きたい!!」という気持ちを喚起して未来への航海へと連れ出してくれた『MIRAI TICKET』同様、Aqoursは『HAPPY PARTY TRAIN』を通して私たちにも一緒に旅に出ようと誘ってくれています。彼女たちは自分たち自身の夢や希望だけでなく、彼女たちの輝きに魅せられた私たちの想いまで乗せて未来へと連れて行ってくれようとしているのです。

 

それが象徴的に描かれているのが次のカット。

 

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機関車の先頭にはしっかりと「Aqours」の文字が書いてありますし、Aqoursのメンバーは運転士の衣装を着ています。歌詞でも私たちの「想いを乗せて」とあるように、映像でもAqoursという名の機関車に乗って私たちの「輝きたい!!」という気持ちを乗せて旅に出てくれるような印象を受けました。

 

ちなみに、「みんなで叶える物語」を感じられる部分はまだあります。「れーるはどこまでつながるかまだまだわからないね」と歌っている部分。

 

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Aqoursは腕を真横にして機関車のレールを繋ぐようなフォーメーションを取りますが、人と人とで作るレールは「みんなで叶える物語」を表しているかのよう。進むべきレール(道)も「みんな」で作っていくのです。

 

さて、ここまで来てお気づきの方もいるかもしれませんが、『HAPPY PARTY TRAIN』というタイトル。楽しむことは輝くことであるとAqoursが定義した訳ですから、これはもう「楽しみ輝くみんなを乗せて走るAqours」と読み換えてもいいのではないでしょうか。PARTYもパーティーではなく、一行、一団、つまり「みんな」と訳し変えてもいいでしょう。

 

想いを乗せて走る彼女たちの輝きに触れた「みんな」のなかには、「ワクワク」する表情を浮かべる者もいれば「ハラハラ」する表情を浮かべる者もいます。

 

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そんなさまざまな表情を浮かべる「みんな」を乗せて走るAqoursという名の列車。しかし、心躍る表情やハラハラする表情を浮かべながらも、彼女たちの瞳は期待で輝き、遠い駅という名の未来で待ち受ける夢さえもきっといつか目にすることができるでしょう。

 

【第5章】HAPPY PARTY TRAIN TOURへの展望

ここまで『HAPPY PARTY TRAIN』に込められているメッセージについて読み解いてきました。青春は限られた時間であること、μ'sからあたらしい夢を受け取ったこと、μ'sから旅立つ決意を決めたこと、これから起こるすべてを楽しむこと、ゼロからイチへ、未来はどこまでも繋がっていく予感。このように、曲に込められたものをひたすら並べていくと、『HAPPY PARTY TRAIN』は『ラブライブ!サンシャイン!!』がこれまでに描いてきたものの「全部入り」だといっても過言ではないくらい濃密な楽曲だということがご理解いただけたのではないでしょうか。

 

そんな「新しいみんなで叶える物語」のエッセンス全部入りの楽曲を携えた「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 2nd LoveLive! HAPPY PARTY TRAIN TOUR」が始まろうとしています。ツアータイトルになっている『HAPPY PARTY TRAIN』。間違いなく、目玉の曲となることは間違いないでしょうが、ありったけのAqoursの物語が詰まっているこの楽曲が、生のAqoursによって披露されるエネルギーはどれくらいのものになるのでしょうか。想像を絶することだけは想像するに容易くありません。

 

冒頭にも述べたようにツアー形式はラブライブプロジェクト史上初めての試みですが、『HAPPY PARTY TRAIN』が汽車や旅がテーマになっている通りこれほどぴったりな楽曲は他にはないと思います。また、濃密なスケジュールにもなっていますが、1stライブやその後のフェスのAqoursのパフォーマンスを見ると素晴らしく「新しい」景色を見せてくれることは疑う余地がありません。

 

HAPPY PARTY TRAIN』でも、目の前の道がどこまで繋がっているか分からないけども、どんな場所にも繋がっているからワクワクすると歌われていますが、Aqoursのリーダーである伊波さんが2ndライブツアーへの展望を聞くと、それが本当かもしれない、必ず新しい景色を見せてくれるかもしれないという期待感に胸が膨らみます。

 

―さて、夏からは2ndライブツアーが始めります。最後に、今の意気込みをお願いします。

伊波「応援してくれている人がこんなにもたくさんいるんだ!」と思うと、もっともっと「Aqoursってこんなこともしちゃうんだ!」ってびっくりさせたくなるんです。温かく見守っていただきたいと思いつつ、私たちも応援してもらえることを当たり前だと思わず、9人で「どんなことができるのか?」をていねいに考えていきたいです。

伊波杏樹「リスアニ!Vol.29」

 

Aqoursを見に来てくれる人たちを驚かせたい。9人でどんなことができるのかを考えたい。この言葉を聞くだけで、「HAPPY PARTY TRAIN TOUR」がAqoursの新しい何かを見せてくれるという期待感と共に心強さのようなものを感じてしまいます。『HAPPY PARTY TRAIN』の曲中でも想いを乗せて運んでいってくれると歌われていましたが、そのAqoursに対する期待感と心強さは伊波さんが語る姿にも通じているような気がしています。

 

そして、未来を見て次の一歩を踏み出そうとする姿勢は、まさに「Next Step!」。「Step! ZERO to ONE」にチャレンジしたからこそ「応援してくれている人がこんなにもたくさんいるんだ!」と知ることができたのであり、その確信や自信が次の新しい一歩を踏みだそうという展望に繋がったのだと思っています。それは、まさに『HAPPY PARTY TRAIN』にて描かれていたものと同義でしょう。

 

三箇所の会場を旅するツアーの果てにAqoursが辿り着く場所はどこなのか。「新しいみんなで叶える物語」で描く、ゼロからイチへのあとの次の一歩はどのような夢への軌跡を描くのか。

 

すてきなたびにでよう

じんせいってさ…たくさんのばしょへつづいてる?

わくわくだらけさ! 

 

Aqoursと旅するいまの一瞬を大切にしながら、何が待ち受けているか分からないけどきっと素敵になる未来に期待で瞳を輝かせ、一緒に「HAPPY PARTY TRAIN TOUR」という名の一歩を踏み出しませんか?

 

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