【ラブライブ!サンシャイン!!】第10話「シャイ煮はじめました」 感想ひとりごと
無印でも登場した合宿回でもあり、梨子ちゃんのピアノ問題を再び浮上させた回でありました。
多くの人が忘れていたであろう、あるいは覚えていても、このタイミングでその話題を再浮上させると思っていた人は少なかったのではないでしょうか。
個人的に、2話はもちろんのこと、これまでの回を思い出しながら見るとより深みが増すというか、キャラクターの考えや気持ちがより伝わってくるようなお話だったという印象を受けました。(他の回にも共通することではありますが)
そして、コミカルに躍動するキャラクターの個性は、それぞれ抱えていた悩みを解決したからこそ溢れ出ていたもの。そんなことが、10話を見て真っ先に感じたことです。
梨子ちゃんに届いたお知らせ
梨子ちゃんに1通のお知らせが届きます。今回は手紙ではありませんが、思わず無印の「ことりに届いた留学のお知らせ」を思い出してしまいました。我々はこの時、梨子ちゃんがまだピアノと素直に向き合えていなかった事実を知ります。「ピアノコンクールの出場登録期限が迫っている」それを見た梨子ちゃんは虚ろな表情を浮かべます。
夏といえば?
屋上に集合するAqoursの9人。1年生、3年生共に悩みを乗り越え、想いをぶつけ合い、ようやく9人全員がここに揃ったことには大きな喜びを感じます。
しかし、その一方で立ち振舞が大きく変わっていた印象を受けたのが3年生のダイヤ。
彼女は、これまで厳しい生徒会長を演じ続けていただけで、「スクールアイドル好き」という性分が、過剰に表出しただけなのかもしれません。「ブッブーですわ!」というあのお馴染みのセリフも飛び出しましたが、堅物の生徒会長だった頃のダイヤでも同じ台詞を言っていたことを思い出すと、やはりスクールアイドルのことになると「厳しい生徒会長」を演じきれなくなっていたというのが真実でしょうか。
「夏といえば」という質問に対して、ラブライブと答えられたルビィ。自分の妹に対しては、とにかく溺愛する姉の一面も。「姉妹コントは」と言われていましたが、これが本来のルビィへの接し方であり、ルビィ自身がずっと大好きだったお姉ちゃんの姿なのではないでしょうか。
合宿!
そして、ダイヤの提案から始まる合宿。サンシャイン!!の舞台が沼津の海に面していること、そして千歌ちゃんの家が旅館であったこと。合宿の条件は十分に整っていました。海で和気あいあいと遊ぶメンバーたち。無印で夏色をオマージュしていた合宿回の場面を思い出します。
合宿回ということで、前作では先輩と後輩の間の壁を取り除く役割を持っていた回ですが、Aqoursの姿を見てると自然にそれが出来ているような気がします。
ダイヤは手伝い先の海の家が、隣の綺麗な海の家とは違ってオンボロで、客足ゼロの現実を目の当たりにします。それを見て現実から目を逸らそうとするダイヤ。
そんなダイヤに対して、チャレンジャーな鞠莉はノリノリな一言を言います。
私たちはラブライブ決勝を目指しているんでしょう?
あんなチャラチャラした店に負ける訳にはいかないわ
鞠莉さん、あなたの言うとおりですわ!
「都会の軍門に下るのデース?」とも言う鞠莉でしたが、前回まで深刻な表情を浮かべていた彼女が、隣の綺麗な海の家を「都会のスクールアイドル」に例えていたのは、曲がりなりにも「東京の壁を乗り越えられなかった」ことで果南と険悪な仲になった彼女が言って良かったのか悪かったのか。それに乗っかるダイヤも、もう誰の制止も効かないといった具合。とにもかくにも、そんなことすらネタにできるようになった間柄になったということでしょう。
海の家の料理番を任されたのは、曜ちゃん、ヨハネ、鞠莉の3人。ヨハネと鞠莉を料理番に指名したダイヤの采配には意義を唱えたいものです。器用で何事も卒なくこなす曜ちゃんは、料理もお手の物。オリジナルのヨキソバを作っていました。
彼女が何でも卒なくこなせてしまうのは、素晴らしい個性であるとともに、1話の回想で幼少期の千歌との距離を生んでいた原因の一つでもあっただけに、曜ちゃんが抱える今後の問題のひとつであるようにも思えます。
不安材料のヨハネはやはり「堕天使の涙」という禍々しい料理を作ります。そして、鞠莉は、海鮮ごった煮の「シャイ煮」なるものを作ります。Aqoursのニコ生で、小原鞠莉役の鈴木愛奈さんの「金目鯛のシャイ煮」という称号が思い出されます。
ところで、メンバーはみんな髪を下ろしていて、いつもと違う印象のAqoursの姿を見ることができて新鮮でした。個人的に酒井監督がつぶやいていたツイートがものすごく共感できたので、一緒に載せておきます。
デザインの時から思ってたんですが、髪をおろした千歌ちゃんは確かに伊波さんにそっくり…🤔いや…伊波さんが似てきたのか…はて。
— 酒井かずお (@okazuon) 2016年9月3日
料理で盛り上がる傍ら、千歌たちは曲づくりの話を進めます。梨子ちゃんに「良い歌にしないとね」と千歌は言います。
その言葉を受けた梨子ちゃんは何か嬉しそうな表情を浮かべます。やはり、この時には彼女の中でひとつの答えを出していたように思えます。それは、海の家を出た梨子ちゃんが、コンクールのメールを削除したことからも分かりました。
今の彼女にとっては、仲間たちと一緒にいて、自分たちのために曲を作られる今の方が大切である。そんな梨子ちゃんの想いが伝わって来ました。
梨子の決断
千歌は、志満姉と梨子ちゃんの母の会話から、梨子ちゃんがピアノコンクールに出場するかどうか決め兼ねていることを知ります。
そして、ピアノコンクールとラブライブの予備予選が同日だということを知る千歌。
梨子ちゃんは、ピアノコンクールとラブライブの出場で心が揺れていたことに、この時はじめて千歌は気付きました。
千歌は、夜の海に梨子ちゃんを連れ出します。千歌と梨子と海という構図はこれまでも何回も目にしたものであり、今回も海を前に2人の大切な話が始まります。
梨子ちゃんは、千歌にはお見通しだったかというように、自分の気持ちを素直に話します。
心配しなくて大丈夫。
ちゃんとラブライブにでるから
確かに、コンクールの知らせが届いた時はちょっとは戸惑ったよ?
チャンスがあったらもう一度って気持ちもあったし…
でも、皆と一緒に過ごして、
この学校や、スクールアイドルが自分の中でどんどん大きくなってきて…Aqoursの活動が楽しくて
自分に聞いたの。どっちが…大切なのか
すぐ答えは出た。
今の私の居場所はここなんだって
自分をスクールアイドルに誘ってくれた千歌に対してラブライブには出るから心配しなくて大丈夫だということ、コンクールの知らせが届いた時は正直驚いたこと、チャンスがあったらもう一度挑戦しようと思っていたこと、でもみんなといる時間を過ごす内に学校やスクールアイドルが楽しくて自分の中でその存在がどんどん大きくなっていったこと。
それをピアノに挑戦することと天秤にかけた時、彼女の中では既に答えが出ていたようです。
「今」の自分の居場所は「ここ」だということに。
今の私の目標は、今までで一番の曲を作って、予選を突破すること
決意が固まった梨子ちゃんの気持ちを聞いた千歌は、「分かった。梨子ちゃんがそう言うなら…」と答えます。
しかし、千歌はその直後に虚ろな表情を浮かべていました。
この時千歌は、梨子ちゃんがスクールアイドルが楽しいと言ってくれたことは嬉しいという気持ちもありましたが、梨子ちゃんには自分の道を進んでいって欲しいという気持ちもあって、千歌自身がその間で揺れ動いていたように思います。
ちなみに、1話冒頭で、千歌がスクールアイドルを「輝いている」と表現したことや、梨子ちゃんが「学校やスクールアイドルが楽しくて、大切なものになっている」と表現した気持ちは、前作で穂乃果たちが辿り着いたところでもある訳で、サンシャイン!!ではそれを受け継いだ上で、更にそれを新しい表現を用いて昇華させていっている印象を受けます。
今後の展開次第で、「スクールアイドルの物語」がどのようなものに生まれ変わっていくのか。そして、Aqoursはどんな解を導き出していくのか。ここまで来ても尚、欠片しか想像することが出来ないAqoursの未来が今から楽しみで仕方ありません。
大切なもの
千歌と梨子ちゃんは、果南と3人で歌詞の話をします。千歌が書いてきた歌詞のテーマは「大切なもの」。
「大切なもの」を天秤にかけて決断した梨子ちゃん、同時に気持ちが揺れ動いている自分自身への何かメッセージのようにも感じました。
曜ちゃんは、千歌が浮かない表情をしていたのを見て「千歌ちゃんどうしたの?」と声をかけます。「ううん、なんでもないよ」と、千歌は答えていましたが、千歌が見つめる先には梨子ちゃんの姿が。
曜ちゃんは何かを察したように見えましたが、彼女がここで何を感じていたのかはハッキリとは分かりません。
梨子ちゃんが何か問題を抱えていることだけを察したのか。はたまた、千歌ちゃんが梨子ちゃんのことを見ていることに何か思うところがあったのか。
彼女のこれまでのさっぱりとした性格からすると後者の可能性は少ないように思えますが、8話で梨子ちゃんにしか本音を打ち明けていなかったことなどを振り返っても、何かヤキモチに似た気持ちがあるのかもしれません。「恋になりたいAQUARIUM」の曜ちゃんの心情にもリンクしそうな気がしますしね。ここは次回を見てからしっかりと判断する必要がありそうです。
大好きだよ
千歌は、梨子ちゃんを夜の学校に連れ出します。
聴いてみたことなかったなって…
ここだったら思いっきり弾いても大丈夫だから!
梨子ちゃんが悩んで、一生懸命作った曲でしょ?聴いてみたくて!
梨子ちゃんがずっとピアノの曲作りで悩んでいたことを知っていた千歌。時には自分も一緒になって海に潜り、梨子ちゃんが歌に対して真剣な姿を千歌も目にしていました。
梨子ちゃんのピアノを聴きたいとせがむ千歌の姿からは、梨子ちゃんが本当にピアノに対して真剣である気持ちを再確認したいという気持ちと共に、自分が次の一言を言うための決心づけをしたいというような気持ちも感じられました。
梨子ちゃん。
ピアノコンクール、出て欲しい
千歌のまさかの一言に梨子ちゃんは驚いた表情を浮かべます。
スクールアイドルに誘ったのは私なのに…
梨子ちゃん、Aqoursのが大切って言ってくれたのに…でもね
またピアノに前向きに取り組めたら、素晴らしいなって、素敵だなって…そう思ってた
かつて、ピアノに向き合えない梨子ちゃんに対して「やってみて笑顔になれたら、変われたら、また弾けばいい。諦めることないよ。」と、声をかけた千歌。
千歌は、自分がそれを伝えた時の気持ちを思い出して、スクールアイドルのおかげで今また笑顔になれた梨子ちゃんに対して正直に「ピアノコンクール、出て欲しい」と伝えます。
スクールアイドルを始めないかと自ら誘った千歌の言葉がただの勧誘の気持ちではないことは2話でも分かっていましたが、実際に梨子ちゃんがスクールアイドル活動を経て笑顔になれた今、梨子ちゃんの背中を千歌が後押しできたことが彼女の本当の優しさだと思いました。
この街や学校や、皆が大切なのは分かるよ
でもね、梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?
その気持ちに、答えを出してあげて
梨子ちゃんが、この街や学校や皆が好きだという気持ちは分かる。でも、梨子ちゃんにとってピアノが大切だという気持ちも同じくらい本物。
梨子ちゃんは、千歌に自分がピアノが好きだという気持ちは直接伝えていないですし、彼女自身その気持ちがあったことを忘却していたくらいですが、千歌は梨子ちゃんがピアノのことで真剣に悩んでいたことや、ピアノに向き合えなくて楽しくないと吐露していたこと、そして東京に行った時に聞いた音ノ木坂での期待が負担に感じていたという言葉から、梨子ちゃんにとってピアノが大きな存在であることを千歌は十分に感じ取っていました。
そのことに気付けたのは一朝一夕ではなく、これまでの梨子ちゃんとの日々の積み重ねがあればこそ。何か見えない時間も、お互いに友情を育んで理解を深め合っていたことが分かるような場面でした。
その気持ちに、答えを出してあげて
何度も言うように、千歌は梨子ちゃんがピアノを好きだという気持ちを直接は聴いていません。でも、彼女にとってピアノという存在が大きなものであること。「その気持ちに、答えを出してあげて」という台詞は、ピアノを弾くことが純粋に好きだった頃の梨子ちゃんのことさえ、まるで知っていたかのような一言に聞こえました。
私、待ってるから!
ここで、みんなと一緒に待ってるって約束するから
梨子ちゃんが自分の夢に向かっても、いつか必ず帰ってくるのを信じてずっと待っている。
前作の1期のラストを彷彿とさせるような「友達の旅立ち」ですが、ことりを引き止めた穂乃果とは異なり、千歌は「一度自分の夢に向き合って欲しい」と梨子ちゃんに声をかけました。
千歌は、穂乃果のように強引さや引っ張る力は無いものの、何か友達の気持ちを考えた上で信じてあげられるような強さの持ち主だとあらためて思いました。穂乃果とは違って友達がどちらの道に進むべきか悩んでいることにすぐに気がつくことが出来たのも、よく他人の表情や気持ちを観察して考えてあげられるから。
それゆえに8話では自分の本当の気持ちを蔑ろにし過ぎた訳ですが、今回の海の特訓のシーンでドミノのように倒れた姿を見て笑った梨子ちゃんの表情を見て自分も笑顔になっていた場面にも、自分よりも人の気持ちを想う千歌らしさが出ていたと思います。
ホント、変な人…
大好きだよ
ストレートな言葉ですが、自分のことを想って背中を後押ししてくれた千歌への感謝の気持ちや、色々と気を利かせて思いを巡らせてくれた千歌への申し訳なさのようなものが全てこのシンプルな言葉には詰め込まれているように感じました。
2話でお互いに手を伸ばし合って繋いだ手と手。10話でも確かにその場面と重なるように、そしてもっと近い距離でお互いに手を繋ぎ合っているように見えました。
友情ヨーソロー
2話で、ある意味保留にしていた「スクールアイドルで笑顔になれたら、またピアノに向きあえばいい」という問題。今回の話は、実際にその時が来た今、その問題に答えを出した千歌と梨子の姿が描かれていました。想像より早くそのタイミングが来たので驚きましたが、3年生の問題が解決した今であればこそ向き合わなければいけない問題なのかなと思うのと同時に、しっかりと答えを出した話を用意してくれたのはとても素晴らしく思えます。
梨子ちゃんがコンクールに出るということは、9人ではラブライブの予備予選に出場しないことを意味している訳ですが、そうなるとAqoursとの兼ね合いの問題も出てきます。特に曜ちゃん的には、ずっと夢中になれるものが見つからなかった大親友の千歌ちゃんが初めて夢中になれたものがスクールアイドルだった訳で、曜ちゃんとしても子供の頃からいつか千歌ちゃんと一緒に夢中になれることがしたいという夢を抱いてきた訳ですから、大会に出られないと知った時の彼女の心境が心配になります。
その辺りの曜ちゃんの気持ちが表れるのが次回の「友情ヨーソロー」なのか。そして、やはりさっぱりと友情にひた走る曜ちゃんの姿が見られるのか。どちらに転んでも楽しみな展開が見られそうな11話に期待したところで、今回の感想の締めにしたいと思います。