きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」に寄せて

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「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」、内田さん本当に本当に長丁場お疲れさまでした。

 

3時間超え、34曲を1人で歌いこなした内田さん。内田さんのバイタリティには毎回感服させられており、「内田さんの事だからきっとやってくれる」とあまり心配はしていなかったのが正直なところですが、やはり34曲全てを妥協することなく表現し切っている姿を目の当たりにしてしまうと、内田さんに対する畏敬の念が強くなってしまいます。

 

「内田さんのライブはお客さんも笑顔なのが印象的だ」と言ってもらえたと笑顔で内田さんは語っていましたが、私もライブ中は「楽しむ」ことに終始してしまっているので、印象しか強く残っていないというのが正直なところですが、今回は内田さんにとっても私にとっても大切な武道館のライブだったので、何とかして形に残しておきたいなと思い記憶を遡りながら文章に残しておこうと思いました。

 

声優・歌手・普段全ての内田彩が詰まったComplete LIVE

今回のライブの印象をまとめるとこの副題になるのですが、声優で培った表現力、歌手としての歌唱力、そして元々持っている内田さんらしさが、曲の中で完璧に融合していたのがこのComplete LIVEだったと思います。それぞれの要素については以降で話していきますが、全ての要素が合わさった集大成のライブがひとつ「Complete」という名前で表されているように感じました。

 

内田さんの表現力を端的に象徴した妄想ストーリーテラー

記念すべき武道館での初ライブ、大事な1曲目は予想外の「妄想ストーリーテラー」。この選曲をしたのは自分だとパンフで語っていましたが、意外と言えば意外でしたし、考えれば当然だったとも思えます。2ndライブ初披露の「妄想ストーリーテラー」は、個人的に内田さんの表現力の深さを再確認できた曲だったので、アーティストあるいは表現者内田彩として1曲目に披露する曲としては申し分なかったのではないでしょうか。(もちろんそれだけに内田さんの中でも勝負の曲だったと思います。)更に言うと、初披露の2ndから半年以上かけて培った歌手としての表現力も相まって、Complete LIVEの幕開けに相応しい姿に成長していたことを強く感じる曲でもありました。

 

セットリストから感じたこと

セトリは大きな流れを言うと、最初に魅せる・聞かせるタイプの曲を中心に、終盤には盛り上がる・楽しいタイプの曲を配置していた印象が。「え、あの曲まだやってないけど終盤に一気に来るの…?」と、楽しみと怖さ半分で待ち構えていました。

細かい曲の繋ぎを見てみると、「11.ONE WAY、12.afraid...、13.シリアス、14.Like a Bird、5.MELODY」「17.Daydream、18.ピンク・マゼンダ」「22.リードを外して、23.笑わないで、24.Sweet Dreamer」など、曲のイメージで何曲かが集められていました。

個人的に好きな繋ぎは、「07.Let it shine、08.オレンジ、09.Sweet Rain、10.最後の花火、11.ONE WAY、12.afraid...」の部分。綺羅びやかな恋心から、最後の花火で切ない恋心へ、そしてONE WAYを基点に、afraid...から闇を孕んだ恋の曲へと進んでいく流れがまるで一連の恋愛ストーリーを見ているかのようでいて面白かったです。

 

やっぱり、CDだときっちり作ってパッケージにするけど、ライブは生なので、同じ曲でもその日によって違う雰囲気で歌ったりするんですよね。いい意味で、前後の曲に引っ張られつつ、いつもと違う感じで聴くことができる曲もあるんじゃないかなあと思います

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

内田さんのライブの場合は特に多様な曲をセトリに組み込めるので、曲の並べ方によって同じ曲でも感じ取れる印象がライブごとに違ってきます(もちろん、色んな世界観を表現できる内田さんの表現力ありきの話ですが)。

それに加えて、その時の気分やお客さんの反応を受けて歌い方を変えているそうで。好みもあると思いますが、やはりライブは生が醍醐味で、その日その場所だからこそ聞ける歌にこそ価値があると考えているので、毎回同じ曲でも印象が変わるのは個人的に素晴らしいことだと考えています。

 

自由なバンドアレンジ

「ライブごとに曲の印象が変わる」という話の延長で、今回楽曲によって大胆なバンドアレンジが加えられていたことは特筆すべきことです。内田さんのライブは贅沢なバンドのパフォーマンスも魅力の一つですが、彼らの絶妙なアレンジが加わると曲ごとの色がより鮮明になる印象を受けました。今回のライブのテーマが「COLORS」であることを考えても、アレンジが果たした役割は重要だったと思います。個人的に「リードを外して」を初めとしたEDM調の曲にアレンジが加わっていたことが新鮮でした。普段はバンドサポートが無い「ピンク・マゼンダ」もそうですが、そういった曲にバンドサウンドが加わったことで曲の世界観がよりエモーショナルに感じられた気がします。

 

アンコールなしの34曲complete LIVE

これだけの曲数のライブでアンコールが無いライブは前代未聞です。ぶっ通しの34曲ライブ。そこに、内田さんなりの哲学というか意思を感じました。内田さんとして、全曲を平等に愛を持って歌いたかった、そして一気に「complete LIVE」を駆け抜けたかった。

 

今まで出してきた曲を武道館で全曲披露なんて、1曲1曲にとってもこんな幸せなことはないと思うんですよね

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

アンコールがあるとアンコールで披露される曲が往々にして特別になる印象があります。もちろん、今回も「Blooming!」や「アップルミント」はラストに配置されているのですが、34曲を等しい時間の中でやることに価値を見出した内田さんなりの、曲への愛の表現なのかなと思いました。

 

新たな楽しみというか、驚きというか。拠りどころに甘えず、『おおっ!」と思ってもらえる瞬間をたくさん作りたいなあ

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

そして、「complete LIVE」をアンコールなしで一気に駆け抜けるというサプライズをお客さんに届けたかったという思いもあったのかなと思いました。

全曲ライブの発表があった時も驚きましたが、それをノンストップで歌い切るというのは、この日まで誰も想像していなかったと思います。内田さんは驚いてくれたり、喜んでくれたりするファンの反応が嬉しいと語ってくれますが、今回のサプライズは内田さんが思っている以上に私たちに驚きを与えました。

 

声優が歌手活動をする意味を体現したライブ

声優さんが歌手活動する意味のようなものを、内田さんのライブに行く度に強く感じるような気がします。声優さんが歌でソロ活動するのは別に最近に始まった話ではありませんが、正直なところ「声が特徴的」や「曲がいい」「歌が上手い」という理由以外で魅力あるなと感じたアーティストの方はかなり数少ないです。「声が特徴的」というのは声優さんの魅力の一つなので素晴らしいことには変わりありませんが、それだけだと物足りないように私は感じます。それでは、声優がソロのアーティストとして活動する上で、武器となるものは何か。それは、役者として培った演技・表現力の幅。それを歌の上でも出していけることが、本当に声優さんが歌手活動する意味なのかなと、内田さんの歌を聞いている内にそう思いました。内田さんは言います。

 

歌が上手い人なんていっぱいいるんですよ世の中には。なので私にしかできない表現みたいなもので

うっちーの『咲いていいとも!』より

内田彩さん、お誕生日おめでとうございます。 - ethereal

 

歌が上手いアーティストは、声優以外の方も含めると世の中に沢山いらっしゃいます。同じ土俵の上で戦うのは熾烈を極めます。そこで内田さんの「私にしかできない表現みたいなもので」という言葉を聞いて、声優として、役者として培った表現を持って歌を歌うことが、声優がソロ活動することのひとつの答えなんじゃないかと私は思いました。

 

それでもやっぱり歌が上手い内田さん

歌が上手いのは別に、という話をした後で恐縮なんですが、それでもやっぱり内田さんは歌がお上手なんですよ。でも、最初から歌が今のように魅力的だった訳ではなく、アーティスト活動を重ねて、ライブを重ねていく内に歌唱力が上がってきたような気がします。最初の1stライブを見ると分かりますが、ところどころ固さが残っていますし、緊張もあったことも大きいでしょうが、自由に歌を表現することを躊躇っている印象がありました。

 

「ほんと、自由になりました」

―最初はいろんなことにとらわれていたというか、自分の中の何かにとらわれてましたよね(笑)

「(笑)はい、ほんとにそうでした。なんかでも、それが成長なんだな、と思います。曲もどんどん成長していってるし、よりよくなってきてるなあって思いました」

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

声優としてキャラクターという拠り所が無くなった内田さんは「アーティストとは」「内田彩の歌とは」という問いかけに悩んでいたようですが、ソロ活動をする内に追いかけて来てくれるファンや、スタッフさんたちが拠り所だと分かってからは、純粋に音楽を楽しむことができるようになったそうで。今ではその自由さを持ち合わせているからこそ、内田さんの表現力がいかんなくステージ上で発揮されているような気がします。

 

アーティスト内田彩のライブが完成した瞬間

冒頭で今回の武道館ライブは「声優・歌手・普段全ての内田彩が詰まったComplete LIVE」と言いましたが、「声優」「歌手」「うっちーらしさ」全てが合わさったのが「アーティスト内田彩」としての表現の完成形なんだと、今回の武道館ライブで強く実感しました。声優として培った表現力が、歌手としての歌唱力と合わさって、曲の世界観を確かに築き上げる。そこにはたまに「楽しくなるとハメを外し過ぎちゃうところ」や「歌詞をアレンジしたり(「いざゆけ!ペガサス号」で2番の歌詞を目に付いた「月刊武道」に変えちゃうところとか)、間違った時にハッキリとそれを言ってしまう」ところがあって、うっちーらしさが良いスパイスとなって楽曲に彩りを添えています。

 

1stシングルはソロアーティストとしての新しい一歩

そして、今回のサプライズ。30曲以上持ち曲があって、武道館で1stシングルの発売を発表したのは後にも先にも内田さんだけでしょう。

デビュー当初は、内田彩としての表現力、魅力を出すためにアルバムという形を選択したそうですが、ここに来てシングルを出すことになったのは、ひとつアーティスト・内田彩という形が確立されたからだと思いました。

1stアルバムで色の幅を表現して、2ndでは更にそれを拡め、コンセプトで1つの色を深めていった内田さん。ライブも重ねて一通りの色を究めた後で、盤石になった状態で踏み出すアーティストの第一歩が1stシングル「すみれSmile」。

最初は嫌だったソロ活動も、続ける内に知った喜びや、みんながくれた笑顔を詰め込んだ楽曲にしたい、という想いを語ってくれた内田さん。何か、1stシングルでありながらも、これまでのソロ活動の経験が全て集約されるような、そんな素敵なシングルになるような気がしています。

 

成長の物語で魅せる内田さんのライブの醍醐味

内田さんのライブの醍醐味のひとつとして「成長の物語」を感じられることがあります。もちろん、単発のライブだけを見ても素晴らしいんですが、それまでの苦労や悩みを知っているとより心に訴えかけてくるものがあるというか。一つのライブだけに閉じていないところも内田さんライブの魅力だと思っています。

デビュー当初は、声優を目指してこの仕事に就いたので、ソロ活動にも乗り気ではなかったと語っていた内田さんですが、「Blooming!」あたりからは、自ら積極的に楽曲制作に携わるようになり楽しみたいという思いが強くなっていきました。

 

こんなに一緒に喜んで笑いあってくれるみんながいるということは、間違ってなかったんじゃないかとか、少しでも伝わってたんだなとか、一瞬でも笑顔にできたんじゃないかなと

AYA UCHIDA CONCEPT LIVE ~Sweet Tears~より

 

コンセプトライブでは、ライブを見に来てくれたお客さんと喜びを共有できたことで、自分のソロ活動が間違えじゃなかったんだと実感することができたと語っていました。

 

他の業界の方に『今、声優さんとかキャラソンってすごく売れてるじゃん』って言われるんですよ。それも嘘じゃないと思うんです。でも、そこを越えていきたいんですよね。(中略)普通に聴いても『いいな』と思ってもらえる歌が歌えたらいいなあって思うし、どんな人が見てくれても、『よかった!』と思ってもらえるようなライブができたらいいなあって思います。

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

武道館ライブを控える頃には、アーティスト内田彩としての展望を語ってくれていました。これまで声優としての内田彩を応援してきてくれた人はもちろんのこと、声優としての内田彩を知らないどんな人にでも「いいな」と思ってもらえる曲が歌いたい。そう思えることが今の内田さんの成長の結果であり、これからもまだ成長したいと望む内田さんの成長物語の1ページなんだと思いました。

 

内田さん自身が誰よりも楽しむ姿

内田さんのライブに参加していつも思うのが、内田さんが誰よりも笑顔でライブを楽しんでいること。お客さんを笑顔にするのが大事だとよく言いますが、お客さんが笑顔になるために一番大事なことは、実はアーティストが楽しそうにしていることをファンが見られることなんじゃないかと思います。それを強く感じられるのが内田さんのライブ。特に今回のライブでは、後半の「Blooming!」や「Breezin'」でそれを強く感じました。楽しみすぎてハメを外して歌詞を間違えちゃったり噛んだりするのはご愛嬌。むしろ、完璧に歌い上げようとして縮こもったり、CDで聴くのと変わらないような歌になってしまうよりかは、歌詞を間違えても、楽しく、その時の感情をありのままに歌ってくれる方が見ている側としても気分がいいですし、その日その場所のライブに行った価値というものを強く感じさせてくれる気がします。

 

アーティスト内田彩が歌うことの答え=みんなの笑顔

内田さんは今回のライブでは「皆さんの笑顔があったから、ここまでやってこれたんだ」という趣旨の言葉を繰り返し言っていたように記憶しています。最初は乗り気ではなかったアーティスト活動を続けて、徐々にその喜びを見つけてきた内田さんが、たどり着いたアーティスト活動をすることの一つの答え。それが、自分の歌に対して見せてくれる「みんなの笑顔」だったようです。

 

with you

内田さんが最後に選んだ曲は「with you」。いつも私に付いてきてくれる「あなたたち」への感謝の気持ちを込めて、この曲を最後に選んだそうです。

 

―ただ、内田さんの場合、ひとりの力ではないというのが特徴的で。幸せな時間を一緒に作ってきた人たち全員の力っていう感じがすごくする。だから、武道館は絶対にいいライブになりますよ。

「はい……なんか、ちょっとほわんとしました。よかったあ。きっと、みんなそういう気持ちで来てくれるんだろうなあ。TOKYO DOME CITY HALLで、武道館でライブをすることを発表したときも、『こんなに喜んでもらえるものか』ってビックリして」

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

早すぎるソロ活動に付いてきてくれて、そして声優じゃない内田彩の歌も聴いてくれる、そんなみんながいたからここまでやって来ることができた。

 

だから来てくれた人も、何年か経って武道館の前を通りすぎたときに『あのときのライブ楽しかったなあ』とか、ちょっとでもいいから思いでに残ってほしいです。誰かの楽しかった思い出に残ってこそだと思うので、何か楽しい瞬間、記念になるような瞬間があったらいいと思うし、とりあえず何でもいいから、この日のことが心に残ってほしいです

「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」パンフレットより

 

最初はソロだから、自分ひとりの力で何とかしなきゃと思っていた内田さん。今では一緒に付いてきてくれる人たちの存在を強く感じることで、アーティスト内田彩としてこのステージに立つことができている。そう涙ながらに最後は語ってくれました。

 

内田さんが願う、みんなの心に残るような笑顔溢れる楽しいライブ。あの場所に居合わせた全員が、それを強く実感することができた。それが「AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~」であり、アーティスト内田彩が作り上げたソロ活動の結晶なのではないでしょうか。