きりんログ

-愛と青春と声豚の記録-

ラブライブ!The School Idol Movie -シーン別感想②-

第2回目となる、劇場版のシーン別感想。今回で、残る海外パートの最後まで触れていきたいと思います。

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公園を駆け抜ける凛-好奇心の力-

公園で早朝練習をするシーン。凛ちゃんは9人の先頭を楽しげに駆け抜けていました。凛ちゃんにとって、ここは初めて来た場所のはずです。しかし、そんな場所でも臆することなく、彼女は駆け抜けていました。

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彼女がそれを出来たのは、持ち前の好奇心があってこそだと思いました。前回も触れた花陽と凛が肩を寄せ合うシーンでは、見知らぬ土地に来たことに対する寂しさを語っていた花陽に対して、凛は「知らない街にいるって、なんか不思議だねー」と笑顔で語っていました。その言葉と表情からは、知らない街でも新しい出会いを探究している様子が伺えました。

そんな彼女の好奇心は、後に『Hello,星を数えて 』で、彼女の持つ新しいリーダーシップとして描かれることになります。そんなリーダーシップが、公園で9人の先頭を抜ける描写からも、少しだけかいま見ることができました。

 

公園のステージに立つ-希の居場所-

公園のステージで9人が横一列に並ぶシーン。絵里は初めて来た場所なのに「不思議と落ち着くわね」と言っていました。それに対して希は「みんなが一緒だからやない?」と答えます。希がそんな風に答えたのは、かつて自分の居場所をμ'sに見つけた彼女だからこそだと思いました。彼女にとって、9人が一緒にいられる空間があれば、そこが安心できる場所になる。絵里と希のやりとりから、そんなことが思い出されました。

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海外の街を観光-スクールアイドルの救世主-

観光パートはコメディ色が強い印象がありました。しかし、観光パートの役割はそれだけではありません。この街は、多様性を受け入れる寛容さを持っている。凛たちがその結論に至るまでの布石でもあったように感じました。観光パートでは細かいネタがいろいろと仕込まれていましたが、特に印象的だったものについて書いていきます。

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自由の女神のポーズをする穂乃果を、ことりが記念撮影するシーン。ことりは「穂乃果ちゃんヒーローみたい!」と言っていました。劇場版の後半で、穂乃果はスクールアイドルの救世主となります。ことりの台詞が意図されたものなのかは、怪しいところではあります。ちなみに、新田恵海さんは「劇場版で穂乃果を演じる時は、リーダーというより、ヒーローを意識して演じました。」と舞台挨拶でコメントされていました。

 

凛の気づき-ことりの共感-

凛ちゃんは、自分たちが巡ってきた街を見下ろして、「この街ってね、少しアキバに似てるんだよ。」と語りました。海外とアキバに共通点を見出した凛。それが出来たのは、先にも触れた彼女の好奇心があってこそだと思いました。好奇心は、物事を探求しようとする心です。それがなければ、彼女は初めて来たこの場所で、新しい発見をすることは無かったでしょう。

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そんな凛に対して、一番の共感を示していたのがことりでした。彼女も、この街の魅力を感じ取ることが出来ましたが、それが出来たのは偶然ではなかったように思います。かつてことりは、アキバの魅力を理解し、それを歌に乗せていました。その経験があったからこそ、初めて来た海外でも、街の本質を見抜くことが出来たのではないかと思いました。

ちなみに、ことりが街の魅力に気が付いている描写が、ここより前のシーンでありました。早朝練習でランニングをするシーンでは、公園を見たことりが「大都会の真ん中にこんな大きな公園があるなんて素敵!」と、語っていました。

 

Hello,星を数えて-凛の好奇心-

これまで、重ねて述べてきた凛ちゃんの好奇心。ハロ星では、それが全面に溢れていました。

ハロ星は、「大丈夫にゃ!」という掛け声から曲が始まります。これまでの「行っくにゃ~!」ではなかったところが、ポイントだと思いました。後者だと強引に手を引っ張っていく印象がありますが、前者だと優しく手を取って連れて行ってくれるような、そんな印象がありました。好奇心を原動力にして、みんながためらう場所へと連れて行ってくれる凛ちゃんからは、彼女の新しいリーダーシップがかいま見えました。

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凛ちゃんは、雨でも外に駆け出します。凛ちゃんは、かつて屋上に飛び出して、雨に降られたことがありました。しかし、ハロ星では、最後に雨空を星空に変えます。そこにも、彼女の成長を感じることが出来ました。雨と聞くともう一つ思い出されるのが、2期の1話で、穂乃果が「雨やめー!」と言った瞬間に、空が晴れたシーン。奇跡を願った穂乃果の力を象徴するかのような描写でした。劇場版では、そんなリーダー穂乃果の力が、次期リーダーである凛ちゃんにも受け継がれたように感じました。

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この後、学年曲が2曲控えていますが、いずれの曲もキャラクターの心情をよく表している曲でした。それだけに、海未ちゃんの作詞ではないように思います。その中でもハロ星は、海外に恐れを抱いていた海未ちゃんでは書けないような印象を強く受けました。

 

女性シンガーの出会い-時代が流れても-

穂乃果が一人見知らぬ街で彷徨っていると、遠くから聞こえる美しい音色に導かれることになります。

ここで初めて、穂乃果は劇場版での鍵を握る女性シンガーと出会います。ここで、彼女が歌っていた曲は、『As Time Goes By』という曲で、『カサブランカ』というアメリカの映画で使われた曲だそうです。

「どんなに時代が流れても、変わらない大事なことがある」。英語の歌詞には、そんな意味があるそうです。それを知ると、女性シンガーがこの曲を歌っていたことが、穂乃果に対するエールだったように感じます。

 

Angelic Angel -成熟したμ'sの意思表明-

この曲をはじめて聴いた時、大人っぽい曲調と成熟した恋の歌詞で、クールで格好良いのですが、μ'sがこれまで歌ってきた曲とはどこか異なる印象を受けました。その印象の正体が、畑亜貴先生のインタビューから分かりました。

テーマが友情とかだと、一皮むけた感じっていうのは出ないっていう。何がいいんだろう?っていうことをすごく考えて……遠くに行くということもあって、"翼"がすごくいいテーマになるなって作るときに思っていて。みんなが達成感を知ってしまったから、彼女たちは次はもっと具体的なものが欲しいんだっていうことを表現するのがいいなと思ったんですね。その翼は、ちゃんとどこかに行くためのものなんですよ、っていう意思が表明できるような曲だとカッコいいかなと。

『Cut 2015年 08 月号』畑亜貴「μ'sの夢を叶えた10曲」

 

AAは「達成感を知ったμ'sの意思表明の歌」。主に、友情をテーマに歌ってきたμ'sではなく、達成感を得たμ'sが歌っているからこそ、以前のμ'sとは異なる印象があったのです。曲の端々から「成熟」を感じられることも、同じところに起因していると思います。

また、畑亜貴先生は、AAは"翼"をテーマにしていると仰っています。翼と聞くと必然的に思い出されるのが、スタダの「大きな強い翼で飛ぶ」という絵里のフレーズ。そんな絵里が、「翼をただの飾りにはしない」と歌っているところにも、ラブライブ!で優勝を果たした彼女たちが示す、新たな決意が表れていたと思います。

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ちなみに『Angelic Angel』は、「美しくあどけない天使」と訳せます。「美しくあどけない」という部分は、絵里の二面的な魅力を意味しているように感じました。絵里の魅力の一つは、大人っぽい美しさ。そして、そんな絵里がたまに見せる、子供っぽい部分も大きな魅力です。TVシリーズでは、暗がりを怖がる絵里や、おもちゃのチョコレートを間違えて食べようとした、というエピソードが希に暴露されていました。劇場版でも、絵里が寝言を言うシーンが描かれていましたが、大人っぽく見える反面、内面は普通の少女であることが分かって、微笑ましいシーンでした。

さて、先ほど私は、AAからこれまでのμ'sとは異なる印象を感じた、と言いました。しかし、「明日じゃない 大事なときは 今なんだと気がついて」という歌詞からは、これまでのμ'sらしさも確かに感じることが出来ました。

成熟からμ'sらしい歌詞へと変わる曲の展開。それは、成熟を迎えるμ'sが、最後の最後で"今"の大切さに気がついて踏みとどまることが出来た、とも読み取れます。劇中でも「学校の帰り道みたい」「この街は、もうすぐ最後だということを不思議と忘れさせてくれる」という台詞がありましたが、最後を前にして、みんなと一緒にいられる今の時間を大切にしていたい、という彼女たちの思いが伝わって来ました。

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そして、ライブの映像では、「ここをステージに出来たらいいかも」と絵里が言っていた、公園の芝生で踊るμ'sの姿もありました。(ちなみに、ビルの屋上で「この景色をライブで使えたらいいかも」という台詞もあり、闇雲に歌う場所を決めていた訳ではないことが分かります。)

太陽が照らす中で、青々と茂った芝生の上で踊るμ's。それを見て、かつての『僕らのLIVE 君とのLIFE』が思い出されました。これまで、自分たちらしいパフォーマンスが出来る場所を探していた彼女たち。この場所が音ノ木坂のグラウンドに似ていたことも、ライブの舞台に決めた理由の一つだと思いました。

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